思春期の時代に、健康であることに嫌悪感を感じていたのは私だけではないでしょう。
加山雄三のように白い歯を輝かせて明るく笑う、という明るく悩みのない姿に拒否感を覚え、NHKを観ることは恥だと思っていました。(本当は若大将シリーズも観たいのに、観たいと思うことが負けだと思っていました)。
品行方正であることは敵でした。
太宰などを読んで共感しようとしたり、自分にも何か誰にも言えない家族の秘密がないかと探したりします。
結核になって女の子に心配されることにあこがれ、注射を打つ病気になったりすると、できるだけ大きな注射であることを望みました。その大きさを見てワクワクしていました。
年齢ですね。
近頃は民放よりもNHKが落ち着きます。母親が朝から晩までNHKをつけている気持ちが分かります。(まだ若干抵抗はありますが)
今更、不幸なふりをすることに喜びを感じません。
難しい顔をするよりも、些細なことで笑う方が気持ちがいいと、素直に思えます。
もちろん、注射はどんな小さなものでも緊張して目をそらせてしまいます。
そう考えると、思春期とはいったい何だったのでしょうか。
あのひねくれた時代。自分以外の人間にあこがれる感触。不幸と不健康をカッコイイと思う感覚。
今ようやく、自分と乖離した自分が少しずつ自分に近づいてくる、そういう年頃になってきたのかもしれません。