わにの日々-中西部編

在米30年大阪産の普通のおばさんが、アメリカ中西部の街に暮らす日記

ロボット革命が解放される時:最低賃金 時給1,680円 リマッチ

2016-05-26 | アメリカのニュース
 先月4月8日の最低賃金に関する記事のフォローアップです。

 シカゴ郊外のマクドナルド本社前で、ファーストフード業界の最低賃金、時給15ドルへの引き上げを求めるデモが行われました。株主総会の前日に、このデモが行われるのも今年で3年目です。雨の中、何百人もの抗議者が、賃金引き上げと組合化を求めて行進し、株主総会前日から本社ビルが閉鎖されるのも3年目で、恒例行事と化しています。この要求に対して、マクドナルド社の元CEO、エド・レンシ氏は、会社は賃金を上げるよりかは、更なる自動化を推進するであろうし、その結果、雇用が失われると警告したそうです。つまり、マクドナルド本社前でデモしている人々は、自分達の解雇、失業を求めているのだ、と。

 従業員の賃金が上がるイコール生産コストが上がるのだけど、マクドナルドのように、顧客がとても値上げに敏感で、1ドルメニューが人気を博するようなフランチャイズにとって、生産費用増額を商品の値上げで賄うオプションはない。更に、時給15ドル払って効率の悪い従業員にポテトフライを袋詰させるよか、3万5千ドルのロボット買って詰めさせたほうが、会社にとってはお得、というのがレンシ氏の意見です。勿論、ロボットを買って自動化しても、メンテも必要だし、故障したときのバックアップも必要、もちろん電気代だって掛かる。製造業の会社で働いてるので、そこんとこは身にしみてるけど、お客としては、自分のポテトが人間が揚げてようが、ロボットが揚げてようが気にしない…より、むしろ、ロボットのほうが正確に揚げてくれるし、袋詰めの量も毎回一定してて信用できそうって思っちゃう。

 実際、ファーストフード店では飲み物はカップだけもらって自分で入れるのが普通になっているし、マクドナルドはマクカフェのコーヒーも、キオスク形式でお客が自分で好みに合わせてコーヒーを淹れることの出来る自販機をテスト導入中だそうです。日本でもセブンイレブンでお馴染み、人件費の高い欧州では定番になっているシステム。個人的には、マクドのコーヒーはスタバより安くて美味しいから好きなんだけど、淹れてくれる人によって激甘だったりするし、いちいちホイップクリーム無しで、シロップも少なめで~とかって注文するのも面倒だし、キオスクになってくれたほうが嬉しい…

 元マクド(←私は関西出身)CEOのレンシ氏の発言を紹介する元の記事は、Forbus誌のHPから

 でも、記事を書いた人による、アメリカは豊かな国で、フルタイムで雇用されてて、健康保険も一部カバーされ、時給15ドルも稼げば地球レベルでは上位1%(だから満足してろっていうのかな?)ってのは同意できません。
I’ve made my basic view about this known already. The U.S. is a rich country and yes, poverty is a relative matter in the manner that humans actually live their lives. Clearly we’re going to make sure that the poor of America live better than many people elsewhere simply because America is a rich country.
However, making $15-an-hour and working full-time (and add in the occasional free meal and some healthcare) puts you into the top 1% of all income owners globally. And I am deeply unconvinced that flipping burgers means you should be in that global 1% as of right.(
原文は上記のサイトよりそのまま)

 貧困が比較論の問題であるのは当然ですが、ここで問題視されるのは、国内での格差であり、途上国と収入を比較するのは全く意味を成してないと思うの。アメリカの「貧困層」は、他の国に比べると、随分といい暮らしをしていると思います。一般にアメリカの貧困家庭とやらの生活環境は、貧困層向けアパートでも蛇口ひねればお湯が出るし、日本の平均から見れば広い。そして、バーガーをひっくり返す仕事は、底辺職業の代名詞になっているくらいです。そのくせ、地球的規模で見たら上位1%ってのは納得出来ないという上記の主張には、こーゆー考えが抜けないから、トランプが大統領候補になるし、格差は広がる一方なんだ…と、ため息ついちゃいました。

 でも一方で、マクドの仕事って、高校生のバイト向けじゃないの?とも思うのです。そんな仕事で、一家を養っている従業員の存在。そっちが一番の問題じゃないかと。貧困を緩和するのは、目先の最低賃金持ち上げじゃない。負のスパイラルを絶ち、下を持ち上げるのが必須。かつて、一億総中流を目指した日本は、教員優遇、数学理科教育の徹底、国が支える郵便貯金による富の積み上げ、国民皆健康保険、義務教育制度等によって人的開発を成し遂げ、国を成長させました。日本でも格差問題が叫ばれている今、もう一度、アジアの奇跡と呼ばれた時代を築いたのは何かを見直すべき。アメリカで、バーニー・サンダーズが若者に支持されるのも正にそれで、誰も均等な機会を得るチャンスが有るところが、自分達の将来に不安を感じている若年層を惹きつけているのだと思う。日本もアメリカも、目先のニンジンに食らいつかない我慢が必要な時もあると思うんだ。

 で、最低賃金引き上げには、時をかけてゆっくりと実施すべきであり、派手なデモ等は反発を呼ぶ可能性もあリ、急激な賃上げは、現状においては経済的には良いことよか混乱を招く可能性のほうが高そう。トランスジェンダーのトイレも、最低賃金いきなり2倍も、急がば回れがいいと思うの、というのが私の意見です。

写真がなくて寂しいから関係ないけど入れてみた。
裏庭に咲いてるワイルドフラワーをタコベルのカップに活ける。コスパ最高