Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

三鬼の句 雨の宵闇 珈琲啜り 

2020-03-08 06:03:32 | ラジオ亭便り
コロナウイルスの蔓延騒動の余波を喰らって、しがないアルバイトも一時的に失職する。このような時期は人生の水位が低い方で肝が据わっている本に囲まれてゴロッとしているに限る。先日、たまに来てくれる近所に住む映画マニアで独居老人の安否確認アルバイト等もしているTさんが置いていった琉球が産んだ大正期の詩人、山之口漠の詩集。伊勢佐木町の古本屋で350円で買った昭和初期から戦後にかけて活躍する西東三鬼の存在論的モダニズム俳句本の中の面白い貧乏詩や斬新俳句を拾い読みしながら、三月七日の終日曇天日を過ごす。

最近、自分が推してやはり近所に住む仲良しのSさんが購入後に預けていった、独テレフンケン製の小型スピーカーがとてもよく鳴っている。左右幅が20数センチという長円形の躯体。メッシュのグリルに囲まれたチーク合板材の堅牢ボディは、ドイツの戦後復興がようやく安定期に入った時期を物語っている。Sさん宅にはもう少しレトロに美しいイソフォンのモノラルスピーカーもある。自分用のダイナコSCA- 35の真空管プリメインアンプを繋いでここ十日ほど聞き込んでいる。


例の小さくてキャパが少ない楕円形アルニコスピーカーなので清澄に浸透する歌声が一番の相性だが、ピアノも中々深みのある美しい倍音を響かせてくれる。この前に四谷にある「喫茶茶会記」で微量に流れていたキースジャレットが1997年に録音して妻へのクリスマスプレゼントとして捧げた「ザ メロディ アットナイト ウイズ ユー」こういうCDがまさしくこのスピーカーの本領を発揮してしまうことに気付く。

週末なのでカフェをオープンするが客は三人。その中の一人がキースジャレットが好きなスタンダード曲を「徒然草」風に訥々と慈しむように弾く4曲目の「マイ ワイルド アイリッシュ ローズ」を流していたら「音が違いますね!」と褒め言葉らしきを呟く。これは嬉しい一言だ。レイオフも大変だけど、こういうささやかな人生の共鳴時間も大切にしたいと思って、今日のブログのタイトルは俳句風に。

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