Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

壱・新年ジャズ詣 弐・湯の旅伊豆半島完全一周

2014-01-02 20:37:34 | JAZZ

1月2日は神社・仏閣への習慣的な初詣が成らずジャズ詣が先行することになってしまった。バイト先からすぐ近くの富ヶ谷には代々木八幡神社があって、その先の参宮橋には明治神宮の裏参道がある。小田急線のホームや車内では破魔矢を手にした家族連れを見かけるところが正月の二日ならではの風景だ。それらを尻目に新宿乗換えのJR荻窪駅へと急ぐ。年末に約束をしたジャズ的阿吽の共鳴第一人者ドクター櫻井氏のJBLパラゴンが相当に煮詰まってきたという話に真実を感じたからだ。手土産は荻窪駅ビルで売っていたベーグルパンの福袋セットを持参する。奥さんに鶏肉入り雑煮を一椀振舞われ、雑談もそこそこに地下室で二時間強の集中ヒアリングを行う。KEFの小型スピーカーLSー50が最新譜CD、パラゴンはモノラル音源のLPレコードだけという目配りも気配りも万全である。聴取者が主人以外の一人というのも気が疲れない。久しぶりに対面するLSー50は常日頃のマメな追い込みが効を奏したのだろう。現代ジャズソースが絶好調になっている。ちっぽけな小型の躯体をフルに鳴らしきる快感ここにありという豪快且つセンシティブな音だ。地下室最高!非スタジオ的遮音室最高!を感じる場面である。

女性ボーカルの新譜はダイアナ・パントン、サーシャ、等櫻井氏お薦めCDに従う。コンボ系はドイツのドラマー、ミカエル・ケウルのスコット・ハミルトンとの共演CD、ワイルドなテナー奏者ノエル・ジェークスがレスター・ヤングに敬意を表した「チェイシン・ザ・プレス」、オールドタイマーなピアニスト、マイク・ジョーンズがジェフ・ハミルトンの快速ドラムに鼓舞されて元気溌剌なスタンダード曲を弾くピアノトリオ新譜がいずれも耳に残った。ダイアナ・パントンはボサノバを歌って北アメリカの冷涼感が和らいだ暖色の境地を迎えているみたいだ。「ザッツ・オール」などのリラックスした歌が心地よい。サックスのノエル・ジェークスが倍音の飛沫を四方八方に飛び散らせる「ラバーマン」は自分好みのトラックで大感激する。共演している現代ファンキーピアノの手本のようなベニー・グリーンも韻律の自在なるデフォルメはいつもながらに健在だ。こういう骨格の太いジャズアルバムが湧いてくるアメリカは大きく深いとため息をつく。

KEF LS-50の小さな巨人ぶりを楽しんだあとはJBLパラゴンでLPを聴くという本題らしい新年のセレモニーが始まった。トーレンスの124プレーヤーにアメリカレコカット社のアームを着けて針はGEのモノラル専用バリレラ、アンプが櫻井氏が数十年に亘って調整を重ねてきたボンジョルノ作のプリとパワーだ。これにアメリカの西海岸スピーカーJBLパラゴンというオールアメリカン路線を強調する櫻井氏のジャズ鑑賞姿勢には見栄もハッタリも不在だ。LPソースの選び方もすでに達人域に来ている。見栄っ張りの偏差値オーディオ趣味人が遠ざけるようなディスクユニオンだったら千円未満の後発モノラルLPを好んでかける。ドリス・デイのレス・ブラウン楽団時代のラジオ放送LP、その後釜シンガーとして迎えられたルーシー・アン・ポークが参加している1949年のレス・ブラウン楽団のLP等である。私的には横浜在住時代にシュアーだオルトフォンだと騒いで鳴らしても、ただの金きり音でしか鳴らなかった一連のソース達である。

こうした半世紀以上前の音源がレトロなフレームに収まらないで目の前の現在の音といういでたちで現れてくれば、これは参りました、降参ですという心境にならざるを得ない。レス・ブラウン楽団の達人奏者をバックに歌うルーシー・アン・ポークの「セプテンバーソング」ワイドというより凝縮された音調のパラゴンが素晴らしい。ルーシー・アン・ポークの口腔内部の未分化な發語まで視界に入ってくる面持ちである。小さなLS-50にも現代のリアリズムを感じるが、パラゴンの再生音像には無窮性がある。デジタルに乗り越えられたアナログという感が深いオーディオ分野だが、真の趣味人だけが達成する音の至福というものを正月二日目の櫻井氏宅パラゴンに感じた次第である。


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