Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

琵琶湖付近の旅

2013-08-02 08:34:46 | 旅行
一泊二日という駆け足みたいな旅行に出かけた。天気予報どおり新幹線が米原へ近づくにしたがって雨脚が強まってきた。いつもなら遠望できるあの清々しい伊吹山麓はボーっと霞んでしまっている。京都駅の八条口で新型トヨタビッツを借りる。銀閣寺のある北白川付近から山中越の旧道を経由して比叡山へ向かう。比叡山は大雨のせいでまさしく五里霧中という在り様だ。気の早いラグジュアリーカーで先を急ぐ背後のクルマを一瞬だけ路肩でやりすごして、そのクルマの尾灯を頼りに追従する狡猾安全走法を選ぶ。霧深き、北軽井沢、箱根峠など夏の山越えに霧はつきものだが、奥比叡の横川(よかわ)近辺は視界悪化であきらめることにした。比叡山は夏休みに入っているのに、この悪天のせいで人影はまばらだ。

メインの根本中堂とその周りの厳かな原生林が吐き出すアルファ波をたっぷりと吸い込む。それにしても比叡の法難を乗り越えて今日の礎石を築いたお偉い諸僧を讃えた参詣路の絵看板はいただけない。絵画の中の力みが北朝鮮や旧ソ連のスターリン主義的なプロガバンダアートと同じ効用性重視に直結する拙劣を感じてならない。この絵をみれば比叡が天台宗の本山だけでなく諸派宗教の母山だということが分かるが、もっと東山魁夷風の山容図でもガラスに嵌めて芸術の為の芸術然としていれば山を汚さないのにと思う。

奥比叡を諦めた時間を山裾の湖畔にある坂本の町で過ごす。比叡の守り神が全国から参集したという噂の日吉大社も訪問する。周りに散在する比叡の里坊(隠居僧の住まい)も眺める。穴太衆(あのうしゅう)という伝統石積み集団の立派な仕事は、この付近の河畔、寺社の石垣、至るところでその素晴らしさにめぐり会える。

比叡の山裾に位置する日吉大社の杜は日本の健やかな夏が健在だった。蝉時雨の圧倒音量の凄いこと。幾つかの拝殿や斎宮を蝉時雨に打たれて巡回していると古代人にタイムスリップしたようだ。


浜大津の宿泊が明けた二日目は米原付近から長浜、湖北を訪ねることにした。旧中山道の醒ヶ井宿、丹生川上流にある滋賀県醒ヶ井養鱒場、長浜市街、高月町、渡岸寺(どうがんじ)宝物の十一面観音像、大日如来などの見物がお目当てだ。晴れ渡って夏日が戻った京都への帰路は木之元付近から湖西バイパスというルートを選んで琵琶湖の沿岸景色が堪能できた。蝉の声を聞いたり、野鳥が遊ぶ小景は都会に隣接する自宅周辺でも慣れ親しむことができるが、醒ヶ井の地蔵川周辺の人里には我々が遺失してきた夏が大きく転がっていて、懐かしい昭和30年代風情緒にも浸ることができた。




味覚の方ではかねてからの琵琶湖特産「二ゴロ鮒」による鮒ずしの冷やし茶漬けと長浜の某料理店にて対面、「名物に美味いものなし」との感想を思い出すことになる。自分で作った渋めの煎茶に紅鮭でもほぐした茶漬けに高菜の刻んだものでも乗せて食べる方が優っていると思った。なにか上品という方向の捉えどころを失った味という印象である。