Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

ルーシー アン ポークのラジオ放送CDを聴く

2013-08-20 15:16:29 | JAZZ
愛しのボーカリストのCDがシナトラソサエティオブジャパンという良心的マイナー会社から発売になった。炎暑のさなかに町田へ受け取りに行ってさっそく聴くことにする。ドクター桜井さんとの毎日一回の雑談電話便でその発売を知ってから、心待ちしていたものだ。

タイトルは「イマジネイション」。1957年に発売された西海岸のモードレコードからでたLP、そのステレオバージョンとして復刻した1959年のインタールード盤、デイブ・ペルオクテットをバックに歌っているフレアースカート姿の1954年のトレンド盤、あとはこれらの再発CDとして発売されたVSOP盤などが、自分が持っている彼女のLPやCDの全てである。主宰する三具保夫さんの解説によれば、彼女は50年代の後期にジャズシーンから消えたが、2010年までLAで暮らしていたらしい。享年82歳である。1928年の生まれなのでまあまあの長寿を全うしたのかもしれない。彼女もベツレヘムレコードなどで1~2枚LPを発表して家庭に入ってしまった味わい深いシンガー達(例、ポーラ・キャッスル、テリー・モレル)と同じ部類で年を経ると、こういうシンガーへの愛着はますます高まってきてしまう。

彼女が所属していた50年代前半のレス・ブラウン楽団等のEPレコードなどが、どこかレコード店の餌箱で売っていると、一曲くらい歌っているものがないかと執念深くジャケットの記載曲を確かめてしまうのもレコードマニアの習い性というものである。ラジオ放送のモノラル音源ということを危惧していたが、愛用のバイタボックス12インチスピーカーから流れる彼女の歌声は、あのモードレコード盤に劣ることもない美味しいボーカル帯域を楽しめるものだった。

三具さんの弁では、50年代前期から数年を経た彼女の歌は「歌の角が丸く」なって技巧的にも飛躍したと評されているが、まったく同感だ。このCDの後半のデイブ・ペルやマーティー・ペイチバンド等が随伴した曲はどれも50年代が香ってきて素晴らしい。モード盤で耳にタコができるくらい聴いてきた「イージー・リビング」「メンフィス・イン・ジューン」みたいな大好きな曲のラジオ放送バージョンを聴けるなんて夢みたいな話である。あの「メンフィス・イン・ジューン」ではライブ収録らしく、しっとりと歌い上げたエンディングに拍手が沸き起こる。つられてこちらも手を叩いてしまった。しかし最大の期待曲「イマジネイション」は少し肩すかしの感がする。彼女の太い声のリアルに陶然とするが、テンポが速い、曲が短すぎる等と真空管アンプからの余熱にうなされながら、贅沢な不満も噴出してくる。その分、前期のレス・ブラウンの絶妙なアンサンブルに包まれた「ホエアー・ユー」などのエレガンスなバラードを味わえるのだから贅沢は言えないものだと思ってコーヒーを啜っている。