Rainy or Shiny 横濱ラジオ亭日乗

モダンジャズ、ボーカルを流しています。営業日水木金土祝の13時〜19時
横浜市中区麦田町1-5

益子的

2011-08-22 13:25:51 | 旅行
いちばん手前の唐辛子が顔をだしている茶色のお猪口が愛知県の常滑焼。猪飼真吾作の真焼という常滑独自スタイルになる細かい窯変の塵模様のような即興的肌合いに見所がある。背後の大ぶりな湯呑茶碗の3点は、購入した時が数年ごとにずれた自分で「益子的」と評しているお気に入りのふだん使いだ。

左のグレーに化粧掛けした茶碗は山口陶器店で昔買ったもの。絵柄がなく素地に潜んでいる無骨な土の粗さ、腰の張った高台への稜線は益子の風土が育てた気脈を感じる。このようなさりげない力量を醸す陶器が1000円台で売っていないことと、探し出すことが至難になってしまったのも益子の退廃と退嬰があるのかもしれない。真ん中は灰釉の肌にざっくりとした鉄絵をラフに流し掛けた湯呑、これは「つかもと」の一般販売品で見つけたなかなかの逸品だと思う。

右も数年前に「つかもと」で見つけた黄瀬戸風に薄く化粧した粗い地肌へ一筆で鉄絵を刷きおろしした模様が気にいったもの。こちらは外貌の風流に反してでこぼこの地肌が、異物感を与えて使用感はよくない。どちらも煎茶用に使っている。柿釉という茶色を彩色した伝統益子作品も最近の一般品で風流や格調に富んだ無名の良品に出会うことは、稀になってしまった。

酷暑の益子旅で生活に彩りを添えるスタンダードな陶器類に5割の視線を注ぐ!後の5割は青空に行き交うオニヤンマ、揚羽蝶、睡蓮鉢を泳ぐメダカ、これらの小さな生物の祝祭と町を覆う溢れかえる緑を吸い込めば、益子行きの目的はそれなりに達成されてしまうことに気がついた。