つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

平成仮面ライダーと言えば、これっ!

2007-03-21 23:51:11 | 映像関連
さて、龍騎以降全然視てないなぁ……な第841回は、

タイトル:仮面ライダークウガ『写真集』『デザイン画集』『シナリオ集』
出版社:小学館

であります。

平成仮面ライダーのトップバッター『クウガ』の資料集です。
三冊セットで○○○円で落ちていたので、拾ってきました。(爆)

速攻で『戻る』ボタンをクリックせずにこの記事を読んでいる方には不要かも知れませんが、一応、クウガについてちょっとだけ触れておきます。

歩く好奇心とも言える青年・五代雄介が、現生人類の先祖(と思われる)リント族の戦士・クウガとなって、謎の古代種族・グロンギと戦う特撮アクションです。
RX終了から数えて実に十一年ぶりの新作と言うことで、制作側もかなり気合いが入っており、クウガとなって戦うことに悩む五代、彼と苦しみを分かち合う刑事・一条、謎の言動を繰り返すグロンギ達といったキャラクターを中心に高年齢層を意識したドラマを展開し、まったく新しい仮面ライダーの名に恥じぬ傑作に仕上げていました。
ゲゲルと呼ばれる殺人ゲームを繰り返すグロンギと戦う内に、五代自身も次第に人間離れしてゆき、石ノ森版『仮面ライダーBLACK』を彷彿とさせる頂上対決へと雪崩れ込んでいく展開は秀逸で、毎週目を皿のようにして視ていた……のは私だけじゃない筈。

と、原作への思い入れはそれぐらいにして……。
そんなクウガの魅力を余すところなく伝える設定資料集です。
これ三冊で、大体クウガは理解出来ます。

素直にDVD買えばいいじゃんってツッコミは入れない方向で。(爆)

以下、各書についてさらっと解説します。

『写真集』……そのまんまです。主役の五代雄介と超イケメン(重要)刑事・一条のカットがメインで、以下、人間側サブキャラクターが1~4ページずつ、クウガの戦闘シーンが大量、で、敵怪人達がちらほらといったところ。
主人公二人以外で目立つのは、本作最大の謎にして敵の首魁『バラのタトゥーの女』で、人間側サブキャラクターが結構ページ削られているのに対し、一人で4ページも取ってやがります。(さすがと言おうか)
しかし……視てた時から思ってましたが、本作の敵怪人達は非常にオシャレですね。変身前のファッションが非常に個性的な上、多くの男性が群青色のルージュ引いてて、しかもそれが似合ってるのが良い。個人的には、松田勇作カットで初代変身ポーズを決めるゴ・バダー・バ(まんまバッタ怪人)がお気に入り。

『デザイン画集』……クウガ、及び、敵怪人の設定画集。
当然と言えば当然だが、クウガのデザインはかなり難航したようで、数多くの準備稿が存在します。従来のメカニカルなイメージに始まり、実際に放映された決定稿に至るまでの過程を見るのはなかなか楽しい。黒のボディに金色のパーツを重ね、マントまで付けたいかにも悪のボスっぽいデザインもあり、個人的にはこれも作って欲しかったところ。
独特の衣装やアクセサリを身に付け、異種族らしさを全面に押し出していた怪人のデザインも、初期設定から決定稿まで載っています。この手の設定資料見るたびに思うけど、共同作業とは言え、一番組のために異常な数の絵を描いてますねぇ……。(しかもやたら細かい)

『シナリオ集』……シナリオの決定稿です。文字が小さくてちと読み辛いのですが、全話のストーリーを一気に追うことが出来るのはやはり嬉しい。
最大の特徴は、作中で使用されているグロンギ語の訳が載っていることで、あのシーンのあの台詞は何だったんだ? という疑問を一気に解消してくれます。
ちなみに、最終回直前の一条さんとバラのタトゥーの女の対決で、海に落ちる直前に彼女が言った台詞は――

「ビビギ・ダダ。ゴラゲド・パラダ・ガギダ・ギロボザ。
(気に入った。お前とはまた会いたいものだ)」


でした! つーか……やっぱりお前ら、いずれまた復活するんかいっ……!

以上、なかなかに美味しい設定資料集です。ファンにはオススメ。
個人的には、写真集の分量がもうちょっと欲しいところですが……。

見よ、彼女達はかくも美しい……

2007-03-20 23:55:11 | マンガ(少年漫画)
さて、奇しくもちょうど一年ぶりの紹介な第840回は、

タイトル:妖女伝説(全二巻)
著者:星野之宣
出版社:集英社 集英社文庫(文庫版初版:H8)

であります。

『ヤマタイカ』『2001夜物語』等、SF漫画の第一人者として知られる星野之宣のオムニバス短編集。
タイトルにある通り、どの短編も女性がキーキャラクターとなっているのが特徴。
漫画では珍しいパターンですが、気に入った作品をかいつまんで紹介します。

『砂漠の女王』……キーパーソンはエジプトの女王クレオパトラ。と言っても、物語はエジプトがローマに敗北するアクティウムの海戦から始まっており、その後、バア転生の秘法により復活する彼女の姿を追っていく。最初は自分を売ったヘロデ王の孫サロメとして、その次は、パルミラの女王ゼノビアとして転生したクレオパトラの行き着く先は……? サロメ対イエスの問答、ゼノビアと哲学者ロンギノスの奇妙な友情など、見所多数。ゼノビアのエピソードはサロメの話の八年後に描かれた続編だが、驚く程上手くつながっている。

『蜃気楼―ファタ・モルガーナ―』……キーパーソンは謎の美女モルガン。1928年の飛行船イタリア号遭難事件にアーサー王伝説の妖女モルガン・ル・フェを絡ませた意欲作で、北極の海を舞台に、見えども掴めない幻を追い続ける男達の姿を描いている。現れては消える謎の島と、どこにも存在しない理想の女性、二つが重なっていく展開は見事。ゲストとして、南極点に初めて到達したことで知られる探検家アムンゼンが登場するのも面白い。

『歴史は夜つくられる』……キーパーソンは秘密(笑)。1912年をキーワードに、ある豪華客船(これまた秘密)に歴史の有名人を集めてみました~、という作品。普通なら空中分解しそうなものだが、世界中が注目する秘密文書(これも秘密……)を核にすることで、かなり面白い話に仕上げてくれている。謎の登場人物達の正体が、物語の最後で一気に明かされるラストは圧巻。

『ボルジア家の毒薬』……キーパーソンはルクレツィア・ボルジア。イタリア全土征服の野望を抱くチェーザレ・ボルジアの軌跡を追いつつ、彼の妹ルクレツィアの奥に潜むドス黒い感情、それを知ったレオナルド・ダ・ヴィンチの苦悩を描く豪華な一品。本当に醜いのはルクレツィアか、それともこの世のすべてか? 謎の毒薬カンタレラの真実が明かされるシーンの迫力は凄まじい。

非常に豪華な短編集です。三重丸のオススメ。
歴史物に秀作が多いのですが、作者の真骨頂であるSF話もあったりします。

息抜きにどうぞ

2007-03-19 23:30:51 | ファンタジー(現世界)
さて、素直に笑いましょうの第839回は、

タイトル:9S <ないんえす?> SS
著者:葉山透
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H18)

であります。

由宇と闘真のほほえましい漫才がありつつも、シリアス路線で突っ走る本編の続き……というわけではなく、電撃hpと言う雑誌に掲載された短編を収録した短編集。
掲載分3本に、書き下ろし2本を加え、さらに「CHARACTER PROFILE」を加えた番外編となっている。
ストーリー紹介は、こちら。

「闇に葬られるものがある。これから語られる物語は、誰も口を固くつぐみ決して語ろうとしない類いのものだ――。
峰島勇次郎の「遺産」の最高傑作――由宇。少女は天才的な頭脳をフル回転して悩んでいた。女らしさとは何か?かくして凄絶な花嫁修行が始まった! ほか、「電撃hp」で掲載され好評を博した三編を収録。実はかわいらしく、けなげかもしれない(?)由宇の女の子の悩みが、いま明らかに!
さらに、あきらVSアリシア、由宇VS麻耶の激しくもちょっと馬鹿らしい女の戦い二編も特別書き下ろし! ある意味極秘扱いの『9S』事件簿、登場。」

ついでに各話のストーリーはこちら。
「1話 峰島由宇、ただいま花嫁修行中!」
時期は2巻以後、孤石島での遺産事件の最中、闘真が言った一言「いったいどこが女らしいの?」……それは由宇の心に影を落としていた。
女らしさとはいかに? 由宇の天才的な頭脳は女らしさを会得するための方法として選び出したもの……それは料理、そして裁縫だった……!

「2話 峰島由宇、ただいま乙女の修行中!」
時期は5巻、横田家の滞在中。闘真と言う健康な青少年がいるにも関わらず、脱衣所の脱衣籠に無造作に放り投げられていた下着を巡り、羞恥心のなさと女のコらしさを由宇に求める闘真。
またもや由宇は「女らしさとはなんぞや?」との解けない問題を突きつけられる。
どうすれば……由宇の抱える難題に、ひとつのヒントが舞い降りた。「乙女のジョーシキ☆ヒジョーシキ☆」のタイトルを冠した少女マンガだった。

「3話 男の生き方、プライスレス」
人間離れした危機察知能力。ふつうの人間から見れば不気味なこの能力故に、SATを退職し、警備会社に勤めていた萩原誠。そんな萩原のもとをADEM司令である伊達の秘書官である八代一が訪れる。
その危機察知能力を買われてADEMにスカウトするために。
最初は断る萩原は、八代の生き方に共感し、ついにはADEMに入ることを決意するが実は……。

「4話 Lady Steady Go!?」
時期は5巻、アメリカ国防諜報局からフリーダムの奪還もしくは破壊のために日本を訪れたアリシア。その監視役に任じられたLC部隊の環あきら。
出会いからして一悶着起こしたふたりは、ひょんなことから一緒に入った喫茶店での口論をきっかけに、再び女と女の戦いを繰り広げる!

「5話 由宇と麻耶、二人で花嫁修行中!」
時期は4巻、【天国の門】を手に入れるための作戦があと1時間と迫っていたとき。
麻耶とともに紅茶を堪能していた由宇は、真剣な面持ちで麻耶に問いかける。
「……麻耶、君は料理というものができるか?」……ここに至ってもまだ女らしさに答えの出せない由宇の問いかけ。
だが真目家のお嬢さまである麻耶はいままで一度たりともキッチンに立ったことはない。……にも関わらず、出来ないと見抜いた由宇の挑発に、「できますわっ」と豪語してしまう。
かくして、ヒロインふたりの料理対決は始まった……!


1話、2話、5話は、闘真の「女らしく」という言葉からの由宇の苦悩を描いたコメディだが、何というか、まぁ、とにかくかわいいね、由宇は(笑)
天才であり、その鋭い観察眼でまじめに考えてはいるが、まじめすぎて笑いを誘う、と言う典型的なコメディで、実際、けっこう笑える。
1話では、本編の扱いがいまいちだった岸田博士もメインで登場し、ひとり健気に由宇の応対をする姿など、哀愁があるのだがまたそれが笑えたり……。

2話、5話なんかは、本編では本来シリアスな状況だったりするところで、実はこんなエピソードが……、と言った感じで、本編を知っていると余計に滑稽なところがおもしろい。
特に2話は、ノートパソコンに入っている風間の一人称なので、客観的で冷静な語り口が、闘真と由宇のやりとりなどを逆におもしろく見せている、と言う典型であろう。
この役目、5話では怜が担っていたりする。

3話はちょっといい話……のはずなのだが、八代がメインキャラではオチは知れたもの。
……なのだが、それでもやっぱりオチはそれなりに「いい話」にまとめている。

4話はアリシアとあきらの交流と奇妙な友情を芽生えさせるお話で、これもちょっと「いい話」のはずなんだろうが……完全にドタバタコメディ。
これを読んでいれば7巻のLC部隊VS海星のときのエピソードに深みが出る、かも。
ただ、これはもともと本編に入れる予定だったとのことであり、どちらかと言うと本編のほうで読みたかったのが本音かな。
深みが出る、と言うより、7巻のアリシアのセリフとか、説得力が増しそうだし。

しかしまぁ、笑わせてもらいました(笑)
特に由宇のお話はお約束のネタではあるけれど、お約束だからこそのおもしろさというのも相俟って、長くてシリアスな本編の息抜きには最適。
このシリーズをおもしろく読んでいるひとにはオススメ。
……あ、でもシリアスな本編が好きで、こんなコメディでイメージをぶち壊してくれるな、と言うひとは手を出さないほうがいいかな。



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読むべきか読まざるべきか……

2007-03-18 00:47:31 | ファンタジー(異世界)
さて、Amazonのレビューの評価がすごいねの第838回は、

タイトル:空ノ鐘の響く惑星で
著者:渡瀬草一郎
出版社:メディアワークス 電撃文庫(初版:H15)

であります。

全12巻で完結しているらしいシリーズの第1巻。
なんか、相棒はいい作品を書く作家さん、と言う評価を聞いていたらしいのだが、私はまったく知りませんでした(笑)
とは言え、そういうことを聞いていればやっぱりどんなもんかと期待してしまうもので。
さて、期待通りに行ったのか……ストーリーは次のとおり。

『アルセイフ王国第四王子のフェリオは、第四という遠さや出自から王位に最も遠い王子だった。
そのためもあって、閑職でもあるフォルナム神殿の親善特使として神殿に住んでいた。
暇だが、息苦しい王宮よりも居心地のいい神殿暮らし……そこに神殿の象徴でもある御柱ピラーに人影が映る、と言う噂を聞く。

その真相を確かめようと御柱が安置されている祭殿に世話役の神官エリオットとともに赴いたフェリオは、そこからひとりの少女が現れる場面に遭遇する。
怪我をしているらしい少女を救出したフェリオだったが、少女は意識を取り戻すと人間とは思えない身体能力を発揮して逃亡。

それを追ったフェリオは、少女を助けるための一悶着を起こしながら少女……リセリナを通じて、彼女がこの世界とは異なる世界から数百年に一度程度の頻度で訪れる訪問者ビジターであることを知る。
そしてリセリナの出現によって、フェリオの人生は大きく変わろうとしていた』

全12巻と言うことを知らずに、新刊としてこれを手にしていれば、またプロローグに1巻費やしたか、と思って放り投げていた可能性大。
続き物だろうと何だろうと、いちおうのオチ、と言うものをつけてほしい、ってのがあるので、やっぱりこういうのはねぇ……。

ただ、そういう見方や好みのことを別にすれば、これはとてもまじめなSFファンタジーと言えるだろう。
ストーリーは完全にプロローグの段階で、しかもオチなしなので、評しにくいところではあるのだが、神殿にまつわる謀略や、降って湧いた王位への可能性、御柱が産出する輝石セレナイトの謎、リセリナを中心とする別世界との関係などなど、今後の物語を期待させる要素は多く、こうした様々な伏線やネタを、どのように処理し、完結させてくれるのか、気になるところではある。
そう言う意味では、導入編としての魅力は十分に備わっていると言えよう。

キャラは、フェリオが自らの目的を決めかねているところがあるので仕方がない部分はあるのだが、ややキャラとしてしっかりと立っていないところが見受けられる。
ヒロインのリセリナや、もうひとりのヒロインである幼馴染みのウルク、フェリオの剣の師匠でもあるウィスタルなど、他のメインキャラ、脇キャラがしっかりしているので、余計にフェリオのふらつきが目についてしまう。
だが、キャラの難点と言えばそれくらいだし、ライトノベルにしてはキャラ設定のあざとさが感じられず、この辺りでもまじめにストーリーで読ませようとするところが見受けられて印象はよい。

文章は、上記フェリオのキャラがふらついている関係で、違和感があるところがあるが、わかりにくい表現も少なく、SFテイストが感じられる作品ながら文章は比較的平易なほうなので読みやすさもある。
やや変わった言い回しや単語を使ったりしているところが見受けられるが、これはさして気にするほどのものではないだろう。
分量も適度で、軽くなりすぎず、重くなりすぎずと言ったところ。

客観的に見れば、キャラとかそういう別の意味で物語が保っている傾向が強いライトノベルにあって、きちんとストーリーで読ませてくれる、と言う期待をさせてくれる作品で、確かに高い評価を得ているのも納得できる。
ただ、まじめすぎて勢いに欠ける部分が感じられるので、すぐに続きが読みたい! と言うところまでいかないのは残念。

続き、どうしようかなぁ。
Amazonとかの評価はいいし、まじめな話になりそうだし、それに何より全12巻で完結しているところが、いつまで続くんだ? ってことを気にしなくていいから手にしやすかったりするしなぁ。
まぁでも、悪い……どころか、いいほうだし、とりあえずお初のひとはなるべく2冊以上読んで評価を決めようとしているから、読んでみるかな。

あぁ、そうだ、総評書いてない。
好みもあるけど、いろいろと評価できる面が多いし、ラノベ点も入れて、さらに今後の期待も込めて、総評、良品。



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いたりする……んだろうなぁ

2007-03-17 15:03:10 | 小説全般
さて、ここは実は鬼門だったんだけどなぁの第837回は、

タイトル:エステマニア
著者:横森理香
出版社:幻冬舎 幻冬舎文庫(初版:H10)

であります。

幻冬舎の文庫、特に小説だとあんまりいい印象がないんだよねぇ。
買ったり借りたりしても、たいていハズレだったりするし。
とわかっていながらも、手に取ってみた本書。
ストーリーは次のとおり。


私……木村典子……は、幼いころはずっとかわいい子で通っていた。
しかし、それは小学5年生のとき、初潮を迎えてから変わった。

太り始めたのだ。
痩せようとしても、かったるくて長続きしない性格な私は、中学時代から親の目を盗んで、通販でダイエット食品や器具類を買っては試していたが痩せられない。
愛人宅に入り浸って帰ってこない父親への憎しみをぶつけてくる母親のいる実家から逃れた大学時代も似たようなものだった。

しかし、そのとき女子大生パブで出会った金持ちのチビに嵌まり、チビに恥をかかせたくないためにエステに通い、痩せるための努力を始め、それが成功したはずの私だったが、そこに残されていたのは、エステに通うことが目的化し、それだけが生活のすべてになってしまった私だけだった。


ストーリーは、太り始めた少女時代からチビと称される男との同棲、その後の自然な自分と「女」でありたいがために男に振り回される「私」こと典子の人生を描いたもの。
けっこうラストのほうまで、このまま行けばまるっきり救いもなく終わってしまうじゃないだろうかと、けっこう心配になったけど、さすがにそれもなくてホッとしたりして(笑)

しかし、いかにも女性が書いた話、って感じで、しかもけっこうえぐい。
エステに通って痩せて、恋やら何やらに成功する……みたいな話を期待してはいけない。
10代、20代、30代とエステとともに自らの女性性や、それと相反する自らの自然なスタイルというものに振り回される姿がまっすぐに描かれていて、けっこうおもしろく読めた。

展開も二転三転し、ようやく自らの自然な姿を得たはずなのに、また泥沼に落ち込んだりと最後まで勢いも落ちず、一気に読ませるだけのパワーがある。
著者あとがきには、未熟だったと言うような言葉もあり、確かに文章的にはやや不満の残る部分もあるが、物語としてはおもしろいし、そこまで気になるものでもない。
キャラも、ある程度はデフォルメされたものではあろうが、エステ通いの部分などは実際にこういうひともいたりするんだろうなぁ、と思えるくらい、生々しいところがあり、リアリティも十分感じられる。

鬼門のはずの幻冬舎、久々におもしろく読める作品ではあったが……。
やっぱり、これも女性が読む本だよなぁ。(ほぼ定型文(笑))
男にとっては、典子が感じる女性性の部分などは、なかなか理解しがたいだろうし、逆に女性にとっては共感できる部分が多分にあると思われる。
共感できれば、またさらにおもしろく読めるとも思うし。

個人的にはオススメをあげたいところだけど、どちらかと言うと女性限定のオススメ、って感じだから、やっぱり及第かなぁ。
……しかし、マジで「女性が読む」本だとか、「男は読めない」本だとか、多い気がするな、私の読む本……(笑)

続編……出ませんね

2007-03-16 23:04:48 | ゲームブック
さて、そう言えばこれも持ってたんだ、な第836回は、

タイトル:スーパー・ブラックオニキス
著者:鈴木直人
出版社:東京創元社 創元推理文庫(初版:S62)

であります。

初の国産RPG『ザ・ブラックオニキス』のゲームブックです。
著者は、『ドルアーガ三部作』で知られる鈴木直人
どこか寂しい雰囲気の漂う街・ウツロを基点に、四人の冒険者達が地下迷宮に挑みます。

主人公は、ギルガメス(笑)のような英雄になることを夢見る若者テンペスト。
彼がウツロの街に辿り着き、秘宝「ブラックオニキス」の噂を聞いたところから物語は始まります。
最初はテンペスト一人ですが、途中から気のいい盗賊バムブーラが加わり、以後、ゲームの進行と共に魔術師シモン、女戦士タラミスと、仲間が増えていくのは嬉しいところ。

システム面では、今回もドルアーガの塔と同じ双方向式ダンジョンを採用。
あちらが一巻二十階だったのに対し、こちらは全七層と少なめですが、その分――
1フロアが無茶苦茶広い
ので、さらにディープな冒険を楽しめます。
マップもきっちり書ける仕様になっており、病的迷宮愛好家(ラビリンス・マニア)にはたまらない作品と言えるでしょう。

お得意のギャグも健在。
緊張の合間に、「悪の十字架!(開くの十時か!)」なんてベタベタなネタをやってくれるのはさすがです。
街も迷宮も暗い雰囲気な上、絵がかなり濃いので、これがないとちょっとキツイという噂もあるけど。(苦笑)

とまぁ、これだけなら他の作品と同じと言えば同じなのですが……。
自ら、飽きっぽい性格と言ってしまう作者だけあって、本作でも新しい試みがなされています。

それに当たるのが、四人パーティの管理システム。
主人公だけが戦い、他のメンバーは緊急時のアイテム扱いされるシステムや、主人公さえ生きていれば、仲間が何人死のうと関係ないシステムと違い、本作は全員に体力と戦力(魔術師のみ魔力)が存在し、四人中誰でも一人生き残れば迷宮から生還出来るというユニークなシステムを採用しています。
コンピュータ・ゲームでは常識なれど、ゲームブックという媒体でやるのはかなり難しいシステムですが、本作はこれを、『迷宮中で体力がなくなっても死なず、街へ戻る際に死亡チェックする』という方法でクリアしています。お見事。

ちょっとラスボスのキャラが薄かった気がするけど、それをさっ引いても充分に面白い傑作です。オススメ。
最後に、有名な話ですが本書は非常にバグが多いです。
運良く手に入れた場合、こちら→『鈴木直人伝説、内、SBO正誤表』を参照し、修正を行ってからプレイして下さい。

男の夢……?

2007-03-15 20:38:32 | 木曜漫画劇場(白組)
さて、帰ってきてた二宮な第835回は、

タイトル:ハネムーンサラダ(全5巻)
著者:二宮ひかる
出版社:白泉社 ジェッツ・コミックス(1巻初版:H12)

であります。

扇:最近、フリーソフトの格ゲーを漁っているSENでーす。

鈴:リメイクされたテイルズ・オブ・デスティニーをえんえんやってるLINNで~す。

扇:いや~、2D格闘ツクール2ndって結構凄いわ。
実際ゲーム作った人に言わせると、死ぬ程使い辛いソフトらしいけど。

鈴:死ぬほど使いづらい……じゃぁ、3rdは出てんのか?

扇:出てない。(笑)
つまり、皆さん使い辛いと思ってても、仕方なく使ってる状態なんだろうねぇ。
業務用顔負けのグラフィック起こしてる人とか沢山いるので、裏の苦労を考えると素直に、凄ぇなぁ……と思ってしまう。

鈴:ほぅ……。
ツクール系のゲームをやったことがないから、どんなもんかはわからんが……創作系をやってると何となく想像がつくな。

扇:何ならやってみるか?
「2D格闘ツクール フリー」でググると簡単に引っかかるぞ。
軽くて50メガ、重くて100メガぐらいだ。
(※圧縮ファイルでこの大きさです。解凍すると五倍ぐらいになります)

鈴:でかっ!!
さすがにそこまで重いのをダウンロードするのは骨が折れるな……。
……って、そこまででかいのをよく作るのぅ……。

扇:いや、マジでよーやるわと思う。
もっとも、データの重さとゲーム性は必ずしもイコールじゃないので、見極めは難しいがね。
まー、タダで遊ばせてもらってるので、文句は言えないけどさ。

鈴:まぁ確かに。
これで金取られてたら、金返せ!になるのが目に見えているだろう。

扇:そういう作品も……あるわな。
グラフィックに懲りすぎてジャンプがもっさりしてたり、変に技が派手過ぎてキャラバランス悪すぎたり、コレって二昔前のゲームじゃん! みたいなのだったり、まー色々だ。
最大の難点は、やってると自分で作りたくなる点かも知れんがな。
そして――出来ることと出来ないことのギャップに苦しむ、と。(笑)

鈴:……物書き的に、その自分で作りたくなるってのは、わかりすぎるほどわかる気がする……。
つーか、RPGツクールのパソコン版はマジで買うか買うまいか、悩んだことがある(笑)

扇:俺は、プレステ版のRPGツクール3で作ってたが、メモカのデータが吹っ飛んで萎えた。
あの時代はまだ専用キーボードなくて、十字キーでいちいち文字選択してテキスト打ってたから、いずれ挫折した可能性が高いがな。
パソコン版は……言われると欲しくなってくるなぁ……。

鈴:……十字キーでテキスト打ち……考えたくねぇなぁ……。
ブラインドタッチが基本の人間にとって、これほどストレスが溜まることもあるまいなぁ。
だが……、パソコン版買うと地獄を見るぞ、きっと。

扇:見るだろうなぁ……。
だから、強引に知らなかったフリをするのが賢明だろう。
で、主役はオーソドックスに三人でいいかね?(爆)

鈴:だから泥沼へ誘うんじゃねぇっ!
ただでさえ読むのに時間がいるってのに、これ以上(これ?)、時間のかかることはできんぞ。

扇:LINNよ、ゲー人墓場は良い所だぁ~。お前も共に来いぃぃぃ~……。

鈴:誰が行くかぁっ!!
……引きずられる前に、本題に戻って呪いを断ち切っておこう。
では、ストーリー紹介だが、よくわからんまんま、押しかけ女房と、引っかけた女性と三角関係に悩むラブコメであります。

扇:全然違うだろ。
年上の元カノ&年下の今カノと同棲することになった二十代後半の男が、ちょっと奇妙で幸せな家庭を築いていくホームコメディです。

鈴:……なんか、これだけですむストーリー紹介って……。
ま、まぁ、さておき、CM行っとくか。


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扇:では、主人公の夏川実(みのり)。通称、実ちゃん。(笑)
ちょっと怒りっぽくて、なにげに心配性で、微妙に無気力な典型的二宮男。(ん? このフレーズ前にも使ったか?)
ただし、中学時代に肌を合わせた斉藤陽子のことが忘れられず、その後女っ気なしで通してきたという設定があり、そのおかげで少しだけ某タサキさんとは違うキャラになっている。
第一話でいきなり一花に暴漢呼ばわりされ、同日に件の陽子と十年ぶりに再会するというジェットコースターなデビューを果たし、数奇な縁で三人同居生活を送るようになってからは、一花と寝まくって、陽子と喧嘩しまくるという凄い生活を送ることになる。
最終話ギリギリまで、一花を選ぶのか陽子を選ぶのか判然としない格好だったが、最後は――ってここまで言っては興醒めか。(笑)

鈴:前にも使ったつーか、このひとのマンガはその「二宮男」ばっかりな気がするが……。
では、ヒロインのひとり、斉藤一花。実ちゃんに初手から駅で因縁をつける、と言うとんでもない出会いを果たすものの、いつのまにか知り合いなんだか、恋人なんだか、よくわからない関係に突入。
その後、もうひとりのヒロインとともに実ちゃんと同居しつつ、微妙な三角関係を続ける。
基本的に内向的で、自分の自信のないキャラとして描かれているが、イタチの最後っ屁のような爆弾を放り投げ、実ちゃんを困らせること多数。

扇:つーか、実の会社の社長が、「あの女(一花)はやめとけ」と言ったのは至言だと思う。
地獄の果てまで一緒に行く覚悟がないと付き合ってられないし、覚悟を決めたら決めたで、その瞬間に目の前から消えようとする女だからな……手に負えないとはこのことだ。
では、もう一人のヒロイン、斉藤陽子。一花と名字が同じだが、血縁とかは一切ない。
歳は実の一コ上で、中学時代に彼に籠絡され、御子様には言えない関係となった。
が、世界に実しかいない孤独な自分と、自分以外にも沢山の友人を持つ実、そのギャップに苦しみ、高校入学と同時に関係を断つ。
第一話で予告も前フリもなしに登場し、実の心を騒がせるが、追い詰められて昔の恋人に甘えに来たのか、十年経って食べ頃になった男を食いに来たのか、どっちとも取れる態度を取っていた。
ちなみに、自分を振った美人の彼女が、もう一度戻ってくるというシチュエーションは男のロマンの一つであろうが、現実にそれを期待するのはやめた方がいいだろう。(笑)

鈴:手に負えない……まぁ、ラストの結婚式をサボタージュするのが最たるもんだろうな、一花は。
やめたほういい、って、そういうことを考える時点で終わってる気がしないでもないぞ。

扇:だからオチを言うなと何度言えば解るっ!
いや、ネタとしては定番だぞ。ただし、熟女物とか、演歌のだがな。(笑)

鈴:あ……。
う~む、何気にまたオチを言ってしまったか……。
まぁ、よいではないか、よいではないか(どっかの時代のどっかのお大尽風)
……しかし、熟女とか演歌とか、わからんでもないが、そういう単語が出ると、なんかやらしいな(笑)

扇:良くねぇんだが、まぁ……いつものことと諦めよう。
やらしいって、これ、エ×漫画じゃなかったのか?
二話に一度はきっちり寝てるぞ、実ちゃん。(笑)

鈴:まぁ、途中で瑤子に邪魔されたりしたときもあったがな(笑)
でも、相変わらずというか、このひとのそういうシーンって、ぜんぜんいやらしくないんだよなぁ。
純情(?)な高校生以下くらいなら、どうかはわからんが。

扇:そうさな、描き方は結構綺麗な方だ。
てなわけで、三人で住んでて片一方に隠れてもう一方とピーしまくるとか、そのピーしまくってる相手が主人公に昔の女とヨリ戻すことを勧めるとか、三人同時に(以下略)とか、ありえね~~~と叫んでしまいそうなネタがてんこ盛りの作品だけどオススメです。
個人的には、実ちゃんより達観してて、自分になびかないと解った上で陽子にちょっかい出す『実の会社の社長』が面白すぎるので、それだけで満足かも。
では、詳しい内容がまったく不明のレビューですが、今回はこの辺で、さ・よ・な・ら~

鈴:満足って……社長、おまえ、女性斉藤ふたりの関係で言えば、何のために出てきたな? って気はしないでもないが(笑)
ともあれ、実際、二宮らしい話で、あり得ない度は高いけど読んでておもしろい話ではあります。
……この話を読んで、本気で「羨ましい……」と思ったヤツがいるんだろうなぁ、と思うとちとげんなりしないでもないが……(笑)
と言うわけで、今回の木劇はこの辺でお開きっ、と言うわけで、さよ~なら~



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ゴスロリホームズ登場

2007-03-14 23:50:13 | ミステリ+ホラー
さて、絵って偉大だと思う第834回は、

タイトル:GOSICK ―ゴシック―
著者:桜庭一樹
出版社:富士見書房 富士見ミステリー文庫(初版:H15)

であります。

長い沈黙期間を経て、再登場! な方です。
第821回で、富士見ミステリー文庫思いっきりけなしてるやん、というツッコミはない方向で。(爆)
同作者の『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』が結構当たりだったし、これも割と人気がある作品みたいなので、手に取ってみました。



時は一九一四年。
答えを求める『彼ら』に老婆ロクサーヌは、巨大な箱を水面に浮かべるよう命じた。
雷鳴轟く中、しわがれた声が箱を用意した後の行動を指示する――野兎を走らせろ!

それから十年後、場所はヨーロッパの小国、ソヴュール王国にある聖マルグリット学園。
東洋の島国からの留学生・九城一弥は、クラスメートのアブリルに怪談話を聞かされていた。
すべての乗員を消し去った後、海の底に沈んだ豪華客船『Queen Berry号』……それは今でも、嵐の夜に突如としてその巨体を現すのだという。

怪談話も終わり、一弥はいつものように聖マルグリット大図書館の階段を上っていた。
一番上の秘密の部屋にいるエメラルド・グリーンの瞳の陶人形に、授業のプリントを渡すために。
陶人形の名はヴィクトリカ――常に、退屈を紛らわせてくれる混沌(カオス)を求めている少女である。

一弥が先生から聞いた『占い師ロクサーヌ殺人事件』は、果たしてヴィクトリカの退屈を紛らわせてくれるのか――?



シャーロック・ホームズの劣化コピーである少女・ヴィクトリカと真面目で純情な少年・一弥が、十年前に沈んだ筈の船『Queen Berry号』で怪事件に巻き込まれるミステリです。
シリーズ物の初巻ということで、序盤はキャラ紹介がメインかな? と思っていたのですが、学園の近くで起こった殺人事件をヴィクトリカが解決し、その絡みで二人は旅行に出発、気付いたら謎の招待状を手にしていたというかなり強引な展開で、あっという間に舞台は『Queen Berry号』に移ります。
さらに、食事に眠り薬を盛られ、目覚めてみると船には二人を含めて十二人の乗客しか残っていない……そんな、『キューブ』や『そして扉が閉ざされた』を彷彿とさせる美味しい展開が続き、私としてはかなーり期待したのですが……。

密室脱出物としては二級

――でした。

そもそも、目覚めてすぐに十二人の内七人を切り捨てちゃう時点で無茶苦茶です。
これが、読者も知らない人間が五人ならドラマになるのですが、五人中二人が主人公な時点で、推理も緊張感もありません。
しかも、主人公達の物語と並行して十年前の出来事を描く章『モノローグ』があるため、あっさりとネタは割れます。(をい)

奇妙な展開に混乱する人々に、偉そうに講釈する探偵役・ヴィクトリカのキャラもイマイチ。
『頭でっかちなガキンチョ』という表現がぴったりはまる彼女は、「湧き出る『知恵の泉』が教えてくれた」とかいう決まり文句をのたまいつつ、いくつかの謎を解くのですが……誰でも解ることを大げさに言ってるだけです。
いわゆる、他がおバカだから相対的に賢く見えるキャラの典型で、作者がホームズごっこをやりたいから出した、という印象しかありませんでした。どうにかしてくれ。

まぁそれでも、謎の老婆ロクサーヌが十年前にやらせた『野兎狩り』とか、『モノローグ』でのバトルロワイヤル的展開など、面白いと思える部分がないではありません。
しかし、それを考慮しても致命的な点が一つ。

この方、三人称の地の文が物凄く下手……。

一弥の一人称の文章を無理矢理三人称にして、時折別の視点を混ぜてあるのですが、上手くいってません。
神の視点か個人の視点か曖昧だったり、一弥の視点の筈なのに別の視点が混入してたり、もうボロボロ。
『モノローグ』の方は某人物の一人称で書かれており、そっちがかなり上手いだけに、主人公サイドの地の文の粗さがやけに目立ちました。

面白いネタを扱っているのに、それを生かし切れていません。合掌。
キャラ物、ミステリー、ホラー、色々な要素を入れていますが、どれも決定打になっていない、中途半端な作品です。



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多いぞっ!

2007-03-13 23:18:01 | 小説全般
さて、メインのブラウザ変えたのでカテゴリ探すのに手間取ったの第833回は、

タイトル:ブランドエナジー 元気系ショートストーリー集
著者:日置千弓
出版社:小学館 小学館文庫

であります。

Internet Explorerだとたいていカテゴリのコンボボックスはほとんど表示されるんだけど、Firefoxだと表示されなかったので、マジで一瞬カテゴリ探してしまった……(爆)

さて、本書はファッションジャーナリストの肩書きを持つ著者が描いた働く女性の姿を、ブランドの一品を通じて描く短編集であります。
8編の短編+「ブランドヒストリー」と銘打った、各話で登場するブランドの短い紹介が収録されている。
では、各話ごとに。

「ブルガリのリング」
佐良草子は、あるデパートのバッグのフロアで、ただの販売員から企画なども任されるようになったとき、興味のない宝飾品のフロアに異動させられてしまっていた。
その人事に腐っていた草子は、フロアのコーディネートを任された式場英子と出会い、話していくうちに次第に宝飾の魅力を知ることとなる。

元気系ショートストーリーと銘打たれた本書の最初に持ってくるのにふさわしい小品。
出会いや出来事などで前向きに取り組もうとするストーリーや、タイトルともなっているブルガリのリングの使い方など定番だが、すっきりとした後味のある良品。

「ヴェルサーチのドレス」
学生時代にデビューした女優の倫子は、独立してから下降気味の仕事や痛烈な批評から逃げるようにしてミラノに住む友人、桂子に会いに来ていた。
そこで久しぶりの再会を果たした桂子や、ボーイフレンドのジーノの姿と言葉に接するうち、ドン底だった気持ちを持ち直していく。

これもブルガリの話と同種の話で、ほぼリングとヴェルサーチのドレスに置き換えただけ。
ただ、同種なので、読後感は良好。

「ルイ・ヴィトンのトランク」
瑠加は、ベビー用の銀のティー・スプーンから着想し、マリエとともに店を持つ予定だったが、彼氏についてイギリスに行ってしまったマリエの住むイギリスを訪れていた。
結婚すると言うマリエに、たったひとりで商売をする自信がない瑠加は、キングス・ロードのアンティークマーケットで小振りなルイ・ヴィトンのトランクを見つけ、購入する。その夜、瑠加の夢でトランクはひとりの英国女性の手に、いくつものひとり旅の伴として握られていた。

アンティークとそこから瑠加が見る夢をきっかけに、前向きな気持ちを持つようになる話だが、アンティークと夢というのが安直すぎていまいち。

「エルメスのコート」
スタイリストとして独り立ちした私だったが、そこには神山リュウジと言う昔から憧れていたカメラマンの存在があった。
験を担いでおなじエルメスのコートを毎年買い、洗わずにいると言うジンクスを持つ神山との出会いでトントン拍子で成功していた。
おなじようにエルメスのコートを買っていた私は、神山の結婚の報せを聞き、そのコートを洗う決心をする。

恋愛テイストの入った作品で、静かに決意するラストの「私」の姿が印象的でよい。

「グッチのサングラス」
企業の広報・PR活動を担う小さな会社エミ・プランニングに勤める輪子は、社員旅行で香港に来ていた。
豪華な中華料理にブランドショップでのショッピングなど、楽しい社員旅行は、社長の江見ナル子の離婚のことや自らが手がけた記事での小さなミスから、楽しいだけのものではなくなっていた。

作品の雰囲気としてはエルメスと同様だが、下降気味の輪子の気持ちを宥めるサングラスの使い方は、これも定番だが、定番のよさが光る小品。

「フェラガモの展覧会」
芽衣子は、いつもアクティブな従姉妹の光子こうこのようには生きられなかった。
だが、その光子は仕事で訪れたヨーロッパで、列車事故に巻き込まれ事故死。その原因が自分にあることで罪悪感を持ち続けていた芽衣子だったが、光子とともにヨーロッパを旅行したときに見たフェラガモの靴などが展示されている展覧会を訪れたことをきっかけに、ようやく芽衣子のことを思ってくれていた光子のためでもある、自分のやりたいことを見つける。

これはブルガリ、ヴェルサーチ群とエルメス、グッチ群を足して2で割ったような雰囲気で、低調なストーリー展開のラストに小さく見えた光を見ることが出来る作品。

「コーチのバッグ」
私と若葉は、OL生活に終止符を打ち、アロマテラピーなどを扱うサロンを開いて成功していた。
お互い結婚もし、子供も出来て……そんな若葉の出産見舞いにコーチのベビーバッグを買いに出かけていた。

フェラガモとはうって変わってテンション高めの作品。
しかし、ただ成功した経緯を説明しただけの話で、テンションが高めの雰囲気もあってブランド品(ベビーバッグ)がただのキャラの持つ小物にしかなっていない。

「プラダのパンツ」
服飾カレッジを卒業し、小さな編集会社で働いている「みん」は、カレッジ時代の友人のジミョンの住む韓国へ旅行に来ていた。
小さな会社で忙しい日々……だが、2泊3日で過ごす韓国でのジミョンとの語らいの中、ジミョンやその妹の持つ夢や分析に、みんは自分が持つ雑誌にかける情熱を取り戻す。

これもブランド品の扱いがストーリーに埋もれて、小道具にすらなっていない。
やや長めのストーリーで展開も従前のストーリーに見られた定番のものなので、重要なファクターとなるはずのブランド品が小道具以下では、路傍の石並に転がっている多数の短編の中に埋もれてしまう程度の話。

……やはり、8編ストーリー紹介して、寸評書いてくと長いなぁ……(爆)

さて、全体的な印象としては、あっさりとした毒のない女性たちの成長物語で、軽く読むにはいい短編集と言える。
ブランドものは、どうも名前だけで売れたりとか、あんまりいいイメージはないし、さして興味はないほうなのだが、そうしたマイナスイメージを感じさせるようなことはなく、自然にストーリーの中で使われているところは好感が持てる。

元気系という副題にもふさわしい小品もあり、ちょっと気落ちした感じのときに、好きなブランドの、または好きなストーリーを手軽に読むのに適していよう。
ストーリーも定番なので、安心して読める作品ばかりでもあるし。

ただ、最後の2編がいまいちなのが響いて、良品と言うには厳しいが、それでも評価の高い及第、と言ったところか。

ゲーム業界って……

2007-03-12 23:15:09 | マンガ(少年漫画)
さて、本当は少女漫画家になりたかった……らしい第832回は、

タイトル:ジャングル少年ジャン番外編 ドッキンばぐばぐアニマル(全三巻)
著者:柴田亜美
出版社:アスペクト アスペクトコミックス(初版:H10)

であります。

週刊ファミ通に連載されていた、ゲーム業界四方山話漫画。
格闘ゲーム大好きでホラーゲーム大嫌いな作者が、担当のオザワ君と共に、あちこちのゲーム会社を荒らして回ります。(笑)
ジャングル少年ジャンの番外編、ってことになってますが、本編とはまったく無関係です。(をい)

一言で言うと――
変です。
何がって? いや、何もかもが。(笑)

基本的な内容は、「アポなしでゲーム会社を訪れ、暴れる」か「行く暇がなかったので作者の日常を描いて穴埋めする」のどちらか。
日常編も笑えるのですが、本作の目玉はやはり、作者の暴走が凄まじい取材編でしょう。

取材先の仮眠室で寝る!(をい)
受付に座って電話を取る!(こら)
案内役の目を盗んで金庫を調べる!(犯罪)
開発室のキーボードに日本刀をぶっ刺す!(危険)
肉じゃが作って、鍋ごと差し入れに行く!(微妙にいい人だ)
ちなみに全部証拠写真付き。(これが一番笑えるかも)

無論、作者が暴走するだけではお話にならないので、迎え撃つゲーム会社の方々も変な人が揃ってます。
接待ゲームで本気を出す大人げない人、仕事サボってワールドカップ見に行く人、発売日の二日前に手に入れたゲームを見せびらかす人……ゲーム業界ってこんな人ばっかりかい、ってな方々がズラリ。
特に、ほぼレギュラーと化しているセガ、SNK、カプコンの方々はキャラが立ちまくっており、「ギャグめかしてるけど実話だろ?」とツッコミ入れたくなるヤバイ話をさんざんして下さいます。

ルポ漫画だけあって会話が非常に多く、その殆どが掛け合い漫才になっているのも特徴。
どちらかと言うと大ゴマの印象が強い方ですが、本作は小さなコマを多用し、可能な限り台詞を詰め込んでます。一話四ページだけど、情報量はかなりのもの。
殆ど創作なのでは? と思われるかも知れませんが、時々、妙に現実臭い台詞が混じっており、侮れません。
(柴田亜美の電話番号とFAX番号を間違えた時、電子手帳を確認して、「つまりこの事件の犯人は最初からいなかったということですね!」とにこやかに言い放った中×光一とか、かなりガチっぽい)

どこまでデフォルメで、どこまで現実なのか考えずに読むのが吉。
しかし……失敗作とか、ポシャったネタの話は冗談抜きでヤバイよなぁ……。