つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

いたりする……んだろうなぁ

2007-03-17 15:03:10 | 小説全般
さて、ここは実は鬼門だったんだけどなぁの第837回は、

タイトル:エステマニア
著者:横森理香
出版社:幻冬舎 幻冬舎文庫(初版:H10)

であります。

幻冬舎の文庫、特に小説だとあんまりいい印象がないんだよねぇ。
買ったり借りたりしても、たいていハズレだったりするし。
とわかっていながらも、手に取ってみた本書。
ストーリーは次のとおり。


私……木村典子……は、幼いころはずっとかわいい子で通っていた。
しかし、それは小学5年生のとき、初潮を迎えてから変わった。

太り始めたのだ。
痩せようとしても、かったるくて長続きしない性格な私は、中学時代から親の目を盗んで、通販でダイエット食品や器具類を買っては試していたが痩せられない。
愛人宅に入り浸って帰ってこない父親への憎しみをぶつけてくる母親のいる実家から逃れた大学時代も似たようなものだった。

しかし、そのとき女子大生パブで出会った金持ちのチビに嵌まり、チビに恥をかかせたくないためにエステに通い、痩せるための努力を始め、それが成功したはずの私だったが、そこに残されていたのは、エステに通うことが目的化し、それだけが生活のすべてになってしまった私だけだった。


ストーリーは、太り始めた少女時代からチビと称される男との同棲、その後の自然な自分と「女」でありたいがために男に振り回される「私」こと典子の人生を描いたもの。
けっこうラストのほうまで、このまま行けばまるっきり救いもなく終わってしまうじゃないだろうかと、けっこう心配になったけど、さすがにそれもなくてホッとしたりして(笑)

しかし、いかにも女性が書いた話、って感じで、しかもけっこうえぐい。
エステに通って痩せて、恋やら何やらに成功する……みたいな話を期待してはいけない。
10代、20代、30代とエステとともに自らの女性性や、それと相反する自らの自然なスタイルというものに振り回される姿がまっすぐに描かれていて、けっこうおもしろく読めた。

展開も二転三転し、ようやく自らの自然な姿を得たはずなのに、また泥沼に落ち込んだりと最後まで勢いも落ちず、一気に読ませるだけのパワーがある。
著者あとがきには、未熟だったと言うような言葉もあり、確かに文章的にはやや不満の残る部分もあるが、物語としてはおもしろいし、そこまで気になるものでもない。
キャラも、ある程度はデフォルメされたものではあろうが、エステ通いの部分などは実際にこういうひともいたりするんだろうなぁ、と思えるくらい、生々しいところがあり、リアリティも十分感じられる。

鬼門のはずの幻冬舎、久々におもしろく読める作品ではあったが……。
やっぱり、これも女性が読む本だよなぁ。(ほぼ定型文(笑))
男にとっては、典子が感じる女性性の部分などは、なかなか理解しがたいだろうし、逆に女性にとっては共感できる部分が多分にあると思われる。
共感できれば、またさらにおもしろく読めるとも思うし。

個人的にはオススメをあげたいところだけど、どちらかと言うと女性限定のオススメ、って感じだから、やっぱり及第かなぁ。
……しかし、マジで「女性が読む」本だとか、「男は読めない」本だとか、多い気がするな、私の読む本……(笑)