つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

ちょっと一息

2004-12-21 13:27:11 | 時代劇・歴史物
さて、栄光(そうか?)の第21回は

タイトル:御宿かわせみ
著者:平岩弓枝
文庫名:文春文庫

昔、沢口靖子がゴジラに出てたの知ってますか?

いきなり脱線しました、戻します。

本作は小さな旅籠〈かわせみ〉をプラットホームに、江戸で起こる事件を描いた捕物帖です。
ただし、チャンバラシーンはほとんどありません。

捕物帖として読むより、主要人物達の日常絵巻として読んだ方がよいです。

主役の二人(神林東吾+るい)はどちらも普通の人です。なにがし流の免許皆伝で滅法強いってわけでもないし、実はさる名家の娘ってわけでもありません。

はっきりと、限界は示されています。

にも関わらず、かわせみを訪れる人々が持ち込むもめ事はどれも難儀なものばかり。
二人は、せめてできる限りのことはしてやろうと悪戦苦闘します。

江戸を舞台にしたヒューマンドラマに興味がある方は、どうぞ。

追伸
ちなみに、ドラマ版は村上弘明+沢口靖子の奴しか認めない(偏見)。

純国産ファンタジー

2004-12-20 22:18:54 | ファンタジー(異世界)
さて、今回は純国産ファンタジーであります。

タイトル:三剣物語
著者:ひかわ玲子
出版社:角川スニーカー文庫

であります。

極めてノーマルなファンタジーで、炎、水、地の三本の剣で悪を撃つ……なんか時代劇っぽいな。

でも、基本的な線はこんな感じ。

純国産ファンタジーというのは、ロードス島戦記とかがダンジョンズ&ドラゴンズのパクリだったりとか、そういうのではない、と言うこと。

まぁ、もっとも、完全なオリジナルはないとは思うけど。

もともとひかわさんはファンタジー黎明期に、純ファンタジーでデビューしたひとだし、パクリとは書いたけど、ロードス島戦記とかと同様、いまのファンタジーブームの先駆けとなったひと。

だから、と言うわけではないけど、比較的初期の作品には、いわゆる中世ヨーロッパを基盤にした剣と魔法の世界の話が多く、いまどきの「なんでもありがファンタジー」ではない、らしいファンタジーが読めます。

好き嫌いはあるとは思うけど、らしいファンタジーを読みたい、というなら薦めるかな。

実力のあるひとなので、ストーリーや設定に破綻はないので安心して読めるよ。

くびかりぞくAがあらわれた!

2004-12-19 03:34:33 | ミステリ
さて、今日の説教部屋行きはぁ(じゃなくて第19回は)、

タイトル:クビキリサイクル
著者:西尾維新
文庫名:講談社ノベルズ

であります。

これはミステリ風のおとぎ話です。

あ、終わっちゃった。

単純に筋を話すと、あるお金持ちの女性が自分の島に〈天才と呼ばれる人々〉を招待します。主人公はその中の一人――の友人。んで、殺人事件が起こります。主人公はその謎を解き明かそうとしますが……それ以上は言っちゃ駄目でしょうね。

ミステリとしては劣悪です。納得いかないどころか、燃やしたくなります。

おとぎ話として読んで下さい。奇妙な面子の一風変わった会話が楽しめます。

実際のとこ、話の流れとかシチュエーションとか抜きにして、会話で読ませる話だと思います。キャラ同士が口喧嘩するシーンは裁判物を思わせますし、主人公と各キャラが一対一で話すシーンは小説の中の会話というより対談に近いものがあります。

かなり人を選ぶ作品だと思うので、手を出す場合は慎重に。

それと最後に一言――

作者本人が主人公やってんじゃねぇよいーちゃん

今度は日本の古典

2004-12-18 20:48:47 | 古典
さて、今度は日本の古典の最高峰(だと思っている)の、

タイトル:枕草子 全訳注(上)(中)(下)
著者:清少納言(訳者 上坂信男 神作光一 湯本なぎさ 鈴木美弥)
出版社:講談社学術文庫

であります。

清少納言、最高!!

ではなくて……

「春は曙」という書き出しで有名な、随筆と言うジャンルの先駆けとなった作品で、清少納言が好きなもの、気に入っているもの、嫌いなもの、興ざめなことなどなどを、自らの視点で描いています。

また、中宮彰子に仕えた女房としての宮廷生活を鮮やかに描いた珠玉の作品でもあります。

つか、中宮さま、LOVE!!なところが笑えてよし!

清少納言のほうが年上にも関わらず、中宮彰子はほとんどお姉さん。
とにかく、「中宮さまはなんて素晴らしいの!?」と言う雰囲気がかなり……と言うか、出まくり。

「香炉峰の雪」の段(中宮彰子が雪の朝、「香炉峰はいかならん」とおっしゃって、清少納言だけが意を汲んで簾を上げて、内裏の雪景色をお見せ申し上げた、と言う話)雪景色をは有名だけど、こういうところにも「中宮さま!」と言うのが出ている。

この本は、原文、語釈、現代語訳、余説の構成で、古典アレルギーの人には向かないとは思う。

訳文オンリーのものは読んでないので知らないけどね。

ちなみにまたこの本のこと、書いたりして(爆)

東京発千夜一夜

2004-12-17 17:37:54 | 小説全般
さて、何を記念していいか解らない、第17回は、

タイトル:東京発 千夜一夜
著者:森瑤子
文庫名:新潮文庫

であります。

新聞読んでますか? 私は読んでません。(うががが)

本作は、90年代初頭(曖昧で失礼)に朝日新聞に掲載されたショート・ストーリーです。
上下巻に各百編、計200編を収録。

メロドラマあり、与太話あり、サスペンスあり、ホラーあり、SFありと非常にバラエティに富んだ内容で、一編の長さも2ページちょっとと短いため、時間の合間に読むのに最適です。

情念、冷酷さ、優しさ、願望等々……女性の感情のピースがそこかしこに溢れており、夢見がちな純情少年(そんな奴がいるのか?)に読ませれば少しは現実を教えてあげられます。(笑)

ショート・ショートといえば星新一ですが、個人的にはこっちの方が好き。

暗い、暗すぎるぞ!

2004-12-16 21:25:28 | SF(国内)
さて、もういい加減定型文に飽きても第16回は、

タイトル:ザンヤルマの剣士
著者:麻生俊平
出版社:富士見ファンタジア文庫

であります。

主人公の矢神遼はどこにでもいるような取り柄のない少年で、たまたま旧世界の遺産である「ザンヤルマの剣」を受け取ったことからいろんな事件に巻き込まれる、と言う最初はどこにでもあるような話。

とにかく、暗い、重い。

いや、好きだけど(笑)

遼の性格が暗いから、暗くなるのだが、時事ネタを取り込みつつ、それでもそれなりにストーリーはしっかりしている。

幼馴染みのマーちゃんとの関係が微妙ではあるけど、この辺りもいいアクセントになっている。

ただ、ハッピーエンドが好きな人には向かないかな。
事件を解決しても傷つく遼。
よくわけのわからないハッピーエンドでごまかすより、こっちのほうが物書きとしてはけっこうきついと思う。

ハッピーエンドのほうが楽だし、読者受けはいいしね。

でも、そのおかげでこの人、バカ売れするほどではないんだろうなぁ、とは思うけど。

ン・パカ☆ ン・パカ☆

2004-12-15 01:55:46 | ファンタジー(異世界)
さて、記念しないけどキリのいい、第15回は、

タイトル:クレヨン王国 シルバー王妃花の旅
著者:福永令三
文庫名:講談社青い鳥文庫

であります。

『夢のクレヨン王国』というアニメをご存じだろうか?

97年~99年の間、日曜朝八時半に放送されていた児童向けファンタジー。
クレヨン王国のシルバー王女(確か十歳ぐらい)がニワトリのアラエッサとブタのストンストンをお供に死神退治の旅に出かける――大まかに言うとそんな話。

こいつぁスゲェ!

初めて見た時の感想である。

これでもかというぐらいアイディアをぶち込んだ世界観。
その中をいきいきと動き回る、ビジュアル任せではないキャラクター達。
それらに依存せず、マクロな話とミクロな話をきちんと同時進行させていくストーリー。

とりあえずアニメにしてみましたっつー量産型とは次元が違うわ、こりゃ。
と、嘆息したものである。

前置きが長くなったが、本書はその原作、『クレヨン王国シリーズ』の中の一冊。
それも、『夢のクレヨン王国』のマクロな話(死神退治)のベースになった作品である。

主人公はシルバー王妃。アニメでは子供になっていたが、こちらは大人の女性。(十二の悪い癖は『クレヨン王国の十二か月』で直ったらしい)
アラエッサとストンストンは健在。ただし野菜の精達は出てこない。(『クレヨン王国新十二か月の旅』に登場しているそうな)
と、アニメから入った者としては少し戸惑ったところもあったのだが……上手い!

舞台がよくできてて、キャラが立ってて、構成もしっかりしている。嗚呼、三冠王。

三人の旅は楽しいことがいっぱい、危険も少し、嫌なことも少し、変なことも少し。(笑)
びっくり箱のように不思議の詰まったクレヨン王国をあっちへ行ったりこっちへ行ったり。
そして、ローマの休日を彷彿とさせる、すこーし寂しさの混じるラストを迎える。

是非とも大人に読んで頂きたい、良質のファンタジーである。絶対のオススメ。
シリーズものなのにちゃんと独立した話として書かれているので、単独で読めるぞ。

襲逆のアンドリュー

2004-12-14 15:30:57 | ファンタジー(異世界)
さて、誰も記念しない、第14回は、

タイトル:ワードナの逆襲
著者:手塚一郎
出版社:JICC

であります。

とっても有名なダンジョンRPG『ウィザードリィ』の第四作『リターン・オブ・ワードナ』のノベライズ。
第一作で冒険者達に倒された悪の魔術師ワードナが復活し、奪われた魔除けを求めて地上を目指すというストーリー。

原作ゲームは未プレイなのですが、噂によると無茶苦茶難しいとか。

ワードナ様が主人公なのに、お話にならないぐらい弱い。
ゲームシステムがI~IIIと全然違う、あれはウィズではない。

一応、そういう話は聞いたことがあります。

しかし、本書のワードナ様は違います。
強いなんてもんじゃありません、はっきり言って無敵。
(恐らく)ゲームでは強い敵もここではザコ同然になぶり殺しにされてます。

ホラー小説の体裁を取ってますが、苦手な私が読んでも怖くなかったので、恐怖物としてはイマイチってとこでしょうか。

ただ、視点が殺される側主体で書かれているので、異世界を舞台にした人間ドラマとしてみればそれなりかも。(段落がやたら多いのはちょっと気になりますが)

叫べ基次郎!

2004-12-13 21:47:01 | 文学
さて、しない記念の第13回は、

タイトル:檸檬
著者:梶井基次郎
出版社:新潮文庫

であります。

いや、別にどうでもいいのだ、他のは。

この短編集の中にある「桜の樹の下には」だけがよいのであります。

この短編が出てから世の中に「桜の樹の下に屍体が埋まっている」というのを題材にした小説が出るわ出るわ。

……いや、私も使いましたが(爆)

そういうわけで、かなり偏見街道まっしぐらですが、梶井基次郎と言えば、「桜の樹の下には」なのであります。

吠えよ漱石

2004-12-13 00:39:22 | 文学
さて、もはや記念する必要もない、第12回は、

タイトル:夢十夜
著者:夏目漱石
出版社:不明(すいません、読んだのが十五年ぐらい前なので……)

であります。

夏目漱石と聞いただけでカラスと喧嘩してる猫を思い浮かべてしまう奴はいねかぁ~。
もしくは課題図書ってことで無理矢理読まされた『こゝろ』を思い出す奴はいねかぁ~。

はっきり言うと、私は漱石嫌いです――つまんないから。(完結)

でもこの作品に限って大好きだったりする。なぜなら……

畜生、なんでお前らそんなに馬鹿なんだよっ!

そんな言葉が聞こえてくるのですよ。(多分、私も馬鹿の一人)

キレてます、漱石。
もう他人の理解なんか求めてません。
皮肉なことにそれがこの作品を凄まじく面白いものにしてます。

一言で言えば夢の話を並べた連作短編。
十編すべて読み終わる頃には頭のどっかの部分に、「コンナユメヲミタ」というフレーズが焼き付くこと請け合い。ついでにフシギ時空にも行けます。

文学なんて嫌いだという方、是非是非、一度読んで騙されてみて下さいね。(笑)