さて、この人の絵も変わらないなぁ、な第860回は、
タイトル:もうひとつの神話
著者:清水玲子
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'86)
であります。
『輝夜姫』『月の子』などで知られるSF漫画家・清水玲子の短編集。
この方は長編よりも、こういった短編の方に秀作が多い……と思う。
例によって一つずつ紹介していきます。
『もうひとつの神話』……その宇宙船には、アダム、イヴ、カイン、アベル、セツ、リベカの計六人が乗っていた。人間はイヴ一人だけだが、彼女は他の五人がロボットであることを知らない。だが、ある日信じられないことが起こった。イヴが妊娠したのだ。形だけとは言え、彼女の夫であるアダムは大いに悩み――。
いわゆる、アダムとイヴ計画もの。たった一人の人間の人間・イヴのために尽くすロボット達の姿が美しい。清水玲子スターの一人・カイがゲスト出演しており、結構重要な役を担ってたりもする。あてどもなく宇宙をさまよっているように見せかけて実は……という展開は秀逸。
『ナポレオン・ソロ』……時は二十三世紀。女のヒモとして生き延びているセクサロイド・カイは、卵型のロボット・ナポレオンに喧嘩をふっかけた。彼が、主人と自分は恋人だ、などというふざけた自慢話をしていたからだ。ウデタマゴと馬鹿にされたナポレオンは決闘を申し込み、カイはそれを受けるが――。
ある意味、先週読んだ『われはロボット』の「ロビイ」、の続編とも言える話。主人が成長した時、子守ロボットはどうなるか? を、厳しすぎず甘すぎないタッチで描いている。主人が五歳の時にした約束にこだわり続けるナポレオンと、女を取っ替え引っ替えして生きる自分に嫌気がさしているカイ、二人の掛け合い漫才は非常に面白い。
『お伽話のユダ』……五年前、南米エクアドルの奥地で発見された空飛ぶ人間〈華族〉は、檻に入れられて人間の見せ物になっていた。母親と引き離され、イギリスに送られた華族の少女・タナーは、憧れの人物〈キル〉に会うために脱走を図る――。
今回のカイは何と女性として登場(何とまぁ芸達者な役者さんだこと)! 主役のタナーを食う活躍で、見事に最後まで女性役を演じきっている。ただ、ストーリーはイマイチ印象が薄い。
『100万ポンドの愛』……プレイボーイのカイは、ある日突然、ミズ・リーズナーなる人物の屋敷に招待された。余命約半年の彼女は、是否カイに会って話したいことがあるのだという。薄幸の美少女を想像したカイだったが、何と相手は80歳の老婆だった――!
古典映画を思わせるオシャレな作品。100万ポンドの保険金でカイを釣り、若い子顔負けの愛を振りまき、最後に見事なオチを付けて去っていくミズ・リーズナーに手放しの賛辞を送りたい。しかし本作のカイ君、本書の中で一番の道化役なのに、一番幸せそうに見えるのは気のせいですか?(笑)
なかなかに粒の揃った短編集です、オススメ。
これ以外で勧めるとしたら、『ノアの宇宙船』かなぁ……ま、それについてはまたの機会に。
――【つれづれナビ!】――
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タイトル:もうひとつの神話
著者:清水玲子
出版社:白泉社 花とゆめコミックス(初版:'86)
であります。
『輝夜姫』『月の子』などで知られるSF漫画家・清水玲子の短編集。
この方は長編よりも、こういった短編の方に秀作が多い……と思う。
例によって一つずつ紹介していきます。
『もうひとつの神話』……その宇宙船には、アダム、イヴ、カイン、アベル、セツ、リベカの計六人が乗っていた。人間はイヴ一人だけだが、彼女は他の五人がロボットであることを知らない。だが、ある日信じられないことが起こった。イヴが妊娠したのだ。形だけとは言え、彼女の夫であるアダムは大いに悩み――。
いわゆる、アダムとイヴ計画もの。たった一人の人間の人間・イヴのために尽くすロボット達の姿が美しい。清水玲子スターの一人・カイがゲスト出演しており、結構重要な役を担ってたりもする。あてどもなく宇宙をさまよっているように見せかけて実は……という展開は秀逸。
『ナポレオン・ソロ』……時は二十三世紀。女のヒモとして生き延びているセクサロイド・カイは、卵型のロボット・ナポレオンに喧嘩をふっかけた。彼が、主人と自分は恋人だ、などというふざけた自慢話をしていたからだ。ウデタマゴと馬鹿にされたナポレオンは決闘を申し込み、カイはそれを受けるが――。
ある意味、先週読んだ『われはロボット』の「ロビイ」、の続編とも言える話。主人が成長した時、子守ロボットはどうなるか? を、厳しすぎず甘すぎないタッチで描いている。主人が五歳の時にした約束にこだわり続けるナポレオンと、女を取っ替え引っ替えして生きる自分に嫌気がさしているカイ、二人の掛け合い漫才は非常に面白い。
『お伽話のユダ』……五年前、南米エクアドルの奥地で発見された空飛ぶ人間〈華族〉は、檻に入れられて人間の見せ物になっていた。母親と引き離され、イギリスに送られた華族の少女・タナーは、憧れの人物〈キル〉に会うために脱走を図る――。
今回のカイは何と女性として登場(何とまぁ芸達者な役者さんだこと)! 主役のタナーを食う活躍で、見事に最後まで女性役を演じきっている。ただ、ストーリーはイマイチ印象が薄い。
『100万ポンドの愛』……プレイボーイのカイは、ある日突然、ミズ・リーズナーなる人物の屋敷に招待された。余命約半年の彼女は、是否カイに会って話したいことがあるのだという。薄幸の美少女を想像したカイだったが、何と相手は80歳の老婆だった――!
古典映画を思わせるオシャレな作品。100万ポンドの保険金でカイを釣り、若い子顔負けの愛を振りまき、最後に見事なオチを付けて去っていくミズ・リーズナーに手放しの賛辞を送りたい。しかし本作のカイ君、本書の中で一番の道化役なのに、一番幸せそうに見えるのは気のせいですか?(笑)
なかなかに粒の揃った短編集です、オススメ。
これ以外で勧めるとしたら、『ノアの宇宙船』かなぁ……ま、それについてはまたの機会に。
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