つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

要注意

2012-02-12 19:00:56 | ファンタジー(異世界)
さて、この人も久しぶりだなぁの第983回は、

タイトル:暁の天使たちシリーズ(全6巻、外伝2巻)
出版社:中央公論新社(初版:’02~)
著者:茅田砂胡

であります。

茅田さんといえば、何も考えずに単純におもしろいという作品を書いてくれる作家さんではあるけれど、さて、これはどうかなぁ?

ともあれ、ストーリーは、

『8歳になるデイジー・ローズは、お気に入りの薔薇園にある天使像の前で、銀色の天使と出会った。
驚きのあまり、声も出せないデイジー・ローズに今度は金色の天使が声をかけてくる。

金色の天使の名はリィ。デイジー・ローズの一番上の兄であったが、容姿はまったく似ていなかった。
突然の出来事に、逃げるように家に戻ったデイジー・ローズは、リィが銀色の天使を伴って訪れたことを家族に伝える。
ちょうどお茶の時間でもあった家では、リィとともに訪れた銀色の天使……シェラ・ファロットとともにお茶の時間を楽しむことにする。

さておき、あまり家に寄り付かないリィがなぜシェラを伴って訪れたのか。
それは「失われた惑星(ロスト・プラネット)」から来たというシェラの後見人に、リィの血の繋がった父であるヴァレンタイン卿になってもらいたいというためだった。
それはシェラがリィとともにティラ・ボーン……通称連邦大学の中等部に入学するためだった。

ヴァレンタイン卿はそのことを快諾し、ふたりはリィの相棒であるルーファス・ラヴィーとともに連邦大学へ無事入学することができた。
だが、穏やかな学校生活を望むふたりとは裏腹にリィの身体に異変が起きる……』

まず、断っておきますが、「デルフィニア戦記シリーズ」や「スカーレット・ウィザードシリーズ」が好きで、すでにこれらの作品が完結したものとして考えている人にはこのシリーズはお薦めできません。
あとがきにも同様の趣旨のことで苦情が来たことが書いてあります。

で、あらすじにも書いた3人、リィ、シェラ、ルーファスは「デルフィニア戦記シリーズ」に出てきたリィ、シェラ、ルウのあの3人です。
「デルフィニア戦記シリーズ」では19歳になっていたリィと、同い年のシェラですが、この世界(「スカーレット・ウィザードシリーズの世界」)では、10日しか経っていないため、ふたりともに13歳に戻って連邦大学に入学することになります。

また、3巻の「海賊王の帰還」では「スカーレット・ウィザードシリーズ」のケリー、4巻の「二人の眠り姫」では同じくジャスミンが復活します。

実はこの作品、出版された当時、買ってはみたのですが、使い慣れたキャラと世界観をくっつけて別の話を書いているだけ、ということであまりに安易なやり方に読むのを断念したことがあったのですが、いやはや人間年をとると丸くなると言うかなんというか……(笑)
いまでは違和感なく、それなりに楽しく読めました(笑)

で、肝心のストーリーはというと、一応6巻で完結しています。
リィとシェラの学校生活やケリーとジャスミンの復活劇、過去にリィに起きた出来事に端を発するルウの暴走とそれを止めるために動き出すリィとシェラ(とその他(笑))といった流れで6巻は進みます。
この6冊だけ見れば、相変わらず何も考えずに楽しく読める作品には違いないのですが、外伝と銘打たれた2冊が曲者。
外伝とは名ばかりの続きといっていいくらいの短中編集で、この後のシリーズ「クラッシュ・ブレイズ」への繋ぎといっても過言ではないでしょう。
さすがにこれには呆れました。

まぁ、そういうことやキャラと世界観の安易な使い回しを気にしなければ、単純に楽しめる作品ではあるので、そういう人にはお薦めできるシリーズではありましょう。
逆に気にする人にはまったく向かないシリーズとは言えます。

おもしろさでいえば茅田さんらしいキャラとストーリーで楽しめるのですが、読み手を選ぶという意味では手放しでお薦めできる作品ではありません。
個人的には「スカーレット・ウィザードシリーズ」のケリーとジャスミンの非常識夫婦が活躍するところが楽しくて好きなのですが、万人向けでないとことでさすがに良品とまでは言えません。

というわけで、総評としては及第。
特に前作品群を読んでいる方はよくよく考えて手に取ることをお薦めします。



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