つれづれ読書日記

SENとLINN、二人で更新中の書評ブログです。小説、漫画、新書などの感想を独断と偏見でつれづれと書いていきます。

これは一発ネタだと思うのだが……

2008-03-02 23:59:31 | ファンタジー(現世界)
さて、予告通りガガガ文庫な第951回は、

タイトル:学園カゲキ!
著者:山川 進
出版社:小学館 ガガガ文庫(初版:'07)

であります。

さー、やって参りました。
ラインナップ見ただけで、「やべぇ! 地雷原だ!」と叫びたくなるガガガ文庫です。
看板作品の『人類は衰退しました』はかなり面白かったのですが、果たしてこれは……?



放送の多極化と、極端なチャンネル数の増大により、テレビ局は深刻な人材不足に陥っていた。
事態を憂慮した放送事業者は、未来の人材を育成するための一大計画『KAGEKIプロジェクト』を立案する。
それは、歌劇学園と呼ばれるタレント養成校を中心に、許可を得ずとも撮影が出来る放送芸術特区『歌劇市』を造るという凄まじいものだった。

何の知識も持たずに入学した会澤拓海にとって、歌劇学園はまさに異空間だった。
昼の食事は全国中継されて視聴者のチェックが入るため気が抜けず、かと言って、放課後は至る所で撮影が行われるため現実と非現実の区別が付けづらい、では教室は安心かと言うと、何の前触れもなく始まるアドリブタイムによって演技力を問われる。
おまけに、クラスがそれぞれ一番組を受け持ち、出演・制作を行う学園ドラマ『学園カゲキ!』の存在があり、いきなり主役に抜擢されて早くも他の生徒とは別格の扱いを受ける者もいるなど、ひたすらテレビ番組制作を優先した仕様に、拓海はただ驚くばかりだった。

入学当初から『学園カゲキ!』の主役に抜擢されて注目を集めている橘九月、歌劇学園の内情に詳しく、着実にエリート街道を進んでいく加賀雅弥、上昇志向が強いがやることなすことすべて裏目に出る愛すべき自爆男・唐木亘、といった個性的すぎるクラスメイトに囲まれて、拓海は次第に歌劇学園に順応していくが――。



例によって、感想を一言で言うと――
引っかかるところは多々あるけど、一応面白かったです。
おお! 珍しく褒め言葉だ! え……褒めてない?

何と言っても目を引くのは、物語の舞台となる歌劇学園でしょう。
一つのことに特化した学校というネタは少なくありませんが、限られたページ内で結構凝った設定を披露してくれてます。
矛盾や突っ込み所も多いですが、上手く利用すれば色んなタイプの話を書けそうで、割と好み。

何も知らない拓海を主人公にすることで、奇妙な空間である歌劇学園の紹介と、エリートコースまっしぐらの九月との身分違い(?)の恋を両立させる、と、ストーリーラインは基本に忠実。
これに、クールに見えて実は熱くて照れ屋でエロス全開な雅弥の活躍、天然自爆男・唐木亘の失敗、プロ意識が強すぎる故に、普通に後輩として接してくれる拓海に惹かれていく二年生・姫儀千里の話、等の枝話で色付けをしています。
王道まっしぐらのキャラ小説、と言えますが、充分楽しませて頂いたので問題なし。

で、お待ちかねの引っかかる点。(待ってない?)

本作は、放送業界の毒に染まっていない主人公に、他のキャラ達が惹かれていくという体裁を取っているのですが……当の拓海のキャラがイマイチ定まってません。
ずばっと言ってしまうと、読んでいて、拓海をイイ子ちゃんにしたいという作者の願望しか伝わって来ないのです。だから、場面によって性格がズレるし、台詞もイマイチしっくりこない。
仮に作者を監督、拓海を主役とすると――演技指導がなってないと言えます。

あと、ストーリーについて。
本作には重要な隠し要素があり、そのため拓海は一度奈落の底に叩き落とされるのですが……某映画を視ていた場合、速攻でネタが割れます。(つーか、パクリと言い切っちゃっていいと思う、正直な話)
仮に映画を知らない方でも結構早い段階で気付き、終盤の真相明かしで脱力されるのはないかと。私は映画視てた方なので何とも言えませんが。

ただ、一応フォローしとくと、ネタは割れてもどう始末を付けるのかが気になって最後まで読めることは読めます。
オチそのものに関しては賛否両論でしょうが、当の拓海が納得してるんで、まぁいいか……ってとこでしょうか。
ちなみに、私なら学園を訴えるけどね。つーか、明らかに犯罪だろ。

色々と微妙なのでオススメは付けません。
主役以外のキャラは良くできてるので、キャラ物が好きな方は手に取ってみてもいいかも。
ただ、本作で大がかりなネタを使っちゃってるので、二作目は……あははははは。(爆)



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