私の勤務している先には、「発達障害系?」「ボーダーちゃん?」
と思われるお子さんが、毎年複数名在籍しています。
診断の付いているお子さんもいれば、そういうのは全然受けていないお子さんもいますが、実感としては、
「この子、すこぉし何かあるなぁ・・」
と感じるお子さんが、クラスに2,3人から4,5人在籍しています。
学習に問題があるだけのお子さんは、私の方で引き受けますが、
態度とか、感情処理が苦手なお子さんは、担任の先生が四苦八苦しながら
働きかけの方法を探しています。
今年2年目になる若手の先生のクラスには、「我慢」とか「状況をみる」
ということがとっても苦手なお子さんが複数名いますが、そのうち一人の男の子の行動が、
いろいろとトラブルを巻き起こしています。
例えば先日の掃除の時間。
ゴミ箱の中のごみを捨てる係に当たっていた女の子が、ゴミ箱を持ってゴミ捨て場に行こうとするのを、彼はそのゴミ箱を力づくで抑えて阻止してました。
「駄目!!!」
と言いながら、かなり乱暴に。
幸い、女の子の方が体格がよかったので、振り回されてけがをするようなことはなかったのですが、心配になるくらいのしつこさでした。
この状況を見た担任の先生は、掃除の手を止め、彼の言い分を聞くために少し離れた所へ連れて行きます。
聞いてみれば、ただの乱暴ではないことはわかります。
彼は、
「ごみ箱がいっぱいにならなければゴミを捨てに行ってはいけない!」
というルールを自分で決めていて、そのルールを他の子にも守らせたかったんですね。
以前は、担任の先生は「話を聞く」よりも「諭す」あるいは「叱る」という対応をしていました。他にもかなりのやんちゃ坊主がいましたので、そういう子たちと同じように、
「叱ったり諭したりする」ことで、「人を傷つけない」「言葉で伝える」ことを教えようとしていたのだと思います。
ところが、伝え続けて半年たっても彼の行動は変わらない。
むしろ、ストレスを近くの子供たちにぶつけるような行動も増えました。
他のやんちゃ坊主たちが徐々に落ち着いてくる中、彼は非常に目立つようになっていっ
たのです。
そうなって、担任の先生も対応法を考えようと思い始めました。
ベテラン先生のアドバイスなどもあって、彼が落ち着いていけるように、
まずは彼の言い分を聞き、理由の一つずつに対応策を示してほぐしていく。
そんな方法をとっています。
彼の話をよく聞いてみると、やはり「自分の側」からのものの見方が強く、
「悪くないのに怒られた」と思いこんでしまいやすいようです。
自分が悪くないから、相手のお子さんがどんな怪我を負っても平気。
自分の気持ちがおさまるまで、相手を攻撃してしまったりします。
自分は悪くないのですから、
「諭され、叱られ」ても、心の奥底に届く指導はできません。
彼にとっては、的外れの指導になっているわけです。
ですので、その指導が、こうして「話を聞く」指導に変わったことは
素直に良かったなと思うのです。
ただ、それだけですべてがうまくいくかというと、そう簡単にも行きません。
例えばクールダウン。
教室の外から帰ってきた後も、教室のオルガンの下にうずくまっていたり、
教室の後ろの方でウロウロしたり。
授業内のこういう行動を見て、真似したがる子も出てきます。
「我が家の3兄弟は、全員椅子に座っていられません」
とお母さんがいい切るN家次男坊のT君は、どうも彼に対抗意識を持っているようで
、彼がたてば、自分もと動きだします。
もっと幼い感じのするA君もつられたがりの一人です。実にうれしそうな顔をして
あちこちウロウロしては先生に追い返されています。
一番前に座っているR君も席を離れて先生のところまで行くのが好き。
Sさんは、周囲関係なく、自分が何か気になったら、いいに行かずには済みません。
彼の動きが気になりだすと、それを報告するために、授業中お話し中でもお構いなしになっちゃうんです。
ということで、彼一人の自由度が増えると、周囲の子も自由度を増していき、クラス運営としてはかなり厳しいものになっていくのでした。
ただ、これは先生の工夫と根気で何とかできる範囲のように見えます。
問題は、やっぱり彼。
ストレスがかかるとキレやすい彼が、他の子を傷つける。
そうすればきつく叱らないわけにはいかず、それがストレスとなってまたキレる。
結構頭の良い子なので、隠れて他の子の持ち物に落書きしたり、
他の子のものを隠したりというようなこともします。
避けるためには、彼のストレスを軽減してあげればいいのですが、
彼自身がいうには、「皆と一緒に行動しなければならないことが嫌」
「自分がしたいことを止められるのが嫌」
なのだそうで・・・これは学校という場所ではなかなか軽減しにくいストレスですからね。
今、彼は授業中殆ど参加していません。
算数も国語も、机に座っているときは自分で勝手にいろんな作品を作っています。
材料が欲しい時には勝手に立ってその辺に取りに行きます。
体育の時間、この間は皆がかけっこをしている時、砂場で砂遊びをしてました。
私が行って集団の中に追い込みましたが(牧羊犬みたいですわね)、
やっぱり先生の横で好きなように動いていたのち、勝手に見学者の中に入ってまったりしてました。
このような動きに、以前ならこまかく注意をして集団の中に入れようとしていた先生は、
今はあまり構いません。
自分や他人を傷つけるような行為をしていない限りは、好きなようにさせています。
授業に関しては、「それをやったら、プリントをしようね。」とか
「何分になったら、始めようね。」
とか、いろいろ働きかけてはいるのですけど、無理強いはしないでいるといった状況です。
彼に構わなくなったことで、彼と競うように動いていた他の子たちはずいぶんと落ち着き、
クラス全体としてはいい状態になったように思えます。
でも、その先生と私、時々考えちゃうんです。
「彼」にとって、本当にこれでいいのかなぁ・・・って。
彼、頭の悪い子ではありません。何度かサポートに入って感じましたが、飲込みはむしろ他のお子さんより早いです。
20分休みに、他のお子さんとスピード(トランプゲーム)をやっているのを見ましたが、
負けて切れるわけでもなく、先を読み、両手も使った良いゲームをしていました。
その賢さがそうさせるのかもしれませんが、自由度が上がったことでどんどん、
「自分はやらなくていい」が増えているような気がします。
気が向いて手を挙げたのに指されないと、自分の机をひっくり返したり蹴飛ばしたりします。それが周囲の子へのやつあたりになることもあります。
周囲への暴力という形で表れる彼のストレス。そのストレスを軽減させるために彼に自由度を認め、
その結果確かに彼にストレスは減ったでしょうが、ストレス耐性は上がるわけではなく・・・
どうしても受け止めては上げられないこと(これは学校生活では結構あります。)で制止を受けた時には以前より遠慮なく暴れるようになった風にも見えます。
「前よりひどくなった気がするんですけど、私の対応が悪かったんですよね。」
と、担任の先生。
確かに、彼に関しては『わがまま』の度合いがひどくなり、学校という場で身につけたい集団行動の基本から離れていくばかりに見えます。
私自身、どう関わるか悩むところもあります。
でも、
「先生がよく話を聞くようにしたから、彼がなんでそんな行動をとるのかが分かったじゃないですか。以前はただの「わがまま」「乱暴」だったことが、彼なりに理由があり、いやなことをなかなか忘れられないために、相手が忘れたころいじわるや暴力になって返ってくるということもわかったじゃないですか。それをどう生かすか、これからまたいろいろ試していけばいいんじゃないですか。」
と話しました。
だってねぇ、この子たちを育てるのに「特効薬」だの「近道」だのってないですもん。それは身にしみてます。
結果を焦って形だけ何とかしても仕方ない。でも、諦めてしまうのも違う。
彼の特性をわかった上で、彼がこの後社会で生きていくために必要なものを身につけていくための手助けとして何が出来るのか、ひとつずつ潰していくしかないですもん。
この手がだめならあの手で。彼一人だけを見るのではなく、クラスの子供たちの中で彼が受け取っていくもののことも考えて・・。
先生が自信をなくしている暇なんかないんですよね。止まっている暇なんかない。
だからこそね、2年目の子の若い先生が必要以上に落ち込まないようにしてあげたいなと思っています。
と思われるお子さんが、毎年複数名在籍しています。
診断の付いているお子さんもいれば、そういうのは全然受けていないお子さんもいますが、実感としては、
「この子、すこぉし何かあるなぁ・・」
と感じるお子さんが、クラスに2,3人から4,5人在籍しています。
学習に問題があるだけのお子さんは、私の方で引き受けますが、
態度とか、感情処理が苦手なお子さんは、担任の先生が四苦八苦しながら
働きかけの方法を探しています。
今年2年目になる若手の先生のクラスには、「我慢」とか「状況をみる」
ということがとっても苦手なお子さんが複数名いますが、そのうち一人の男の子の行動が、
いろいろとトラブルを巻き起こしています。
例えば先日の掃除の時間。
ゴミ箱の中のごみを捨てる係に当たっていた女の子が、ゴミ箱を持ってゴミ捨て場に行こうとするのを、彼はそのゴミ箱を力づくで抑えて阻止してました。
「駄目!!!」
と言いながら、かなり乱暴に。
幸い、女の子の方が体格がよかったので、振り回されてけがをするようなことはなかったのですが、心配になるくらいのしつこさでした。
この状況を見た担任の先生は、掃除の手を止め、彼の言い分を聞くために少し離れた所へ連れて行きます。
聞いてみれば、ただの乱暴ではないことはわかります。
彼は、
「ごみ箱がいっぱいにならなければゴミを捨てに行ってはいけない!」
というルールを自分で決めていて、そのルールを他の子にも守らせたかったんですね。
以前は、担任の先生は「話を聞く」よりも「諭す」あるいは「叱る」という対応をしていました。他にもかなりのやんちゃ坊主がいましたので、そういう子たちと同じように、
「叱ったり諭したりする」ことで、「人を傷つけない」「言葉で伝える」ことを教えようとしていたのだと思います。
ところが、伝え続けて半年たっても彼の行動は変わらない。
むしろ、ストレスを近くの子供たちにぶつけるような行動も増えました。
他のやんちゃ坊主たちが徐々に落ち着いてくる中、彼は非常に目立つようになっていっ
たのです。
そうなって、担任の先生も対応法を考えようと思い始めました。
ベテラン先生のアドバイスなどもあって、彼が落ち着いていけるように、
まずは彼の言い分を聞き、理由の一つずつに対応策を示してほぐしていく。
そんな方法をとっています。
彼の話をよく聞いてみると、やはり「自分の側」からのものの見方が強く、
「悪くないのに怒られた」と思いこんでしまいやすいようです。
自分が悪くないから、相手のお子さんがどんな怪我を負っても平気。
自分の気持ちがおさまるまで、相手を攻撃してしまったりします。
自分は悪くないのですから、
「諭され、叱られ」ても、心の奥底に届く指導はできません。
彼にとっては、的外れの指導になっているわけです。
ですので、その指導が、こうして「話を聞く」指導に変わったことは
素直に良かったなと思うのです。
ただ、それだけですべてがうまくいくかというと、そう簡単にも行きません。
例えばクールダウン。
教室の外から帰ってきた後も、教室のオルガンの下にうずくまっていたり、
教室の後ろの方でウロウロしたり。
授業内のこういう行動を見て、真似したがる子も出てきます。
「我が家の3兄弟は、全員椅子に座っていられません」
とお母さんがいい切るN家次男坊のT君は、どうも彼に対抗意識を持っているようで
、彼がたてば、自分もと動きだします。
もっと幼い感じのするA君もつられたがりの一人です。実にうれしそうな顔をして
あちこちウロウロしては先生に追い返されています。
一番前に座っているR君も席を離れて先生のところまで行くのが好き。
Sさんは、周囲関係なく、自分が何か気になったら、いいに行かずには済みません。
彼の動きが気になりだすと、それを報告するために、授業中お話し中でもお構いなしになっちゃうんです。
ということで、彼一人の自由度が増えると、周囲の子も自由度を増していき、クラス運営としてはかなり厳しいものになっていくのでした。
ただ、これは先生の工夫と根気で何とかできる範囲のように見えます。
問題は、やっぱり彼。
ストレスがかかるとキレやすい彼が、他の子を傷つける。
そうすればきつく叱らないわけにはいかず、それがストレスとなってまたキレる。
結構頭の良い子なので、隠れて他の子の持ち物に落書きしたり、
他の子のものを隠したりというようなこともします。
避けるためには、彼のストレスを軽減してあげればいいのですが、
彼自身がいうには、「皆と一緒に行動しなければならないことが嫌」
「自分がしたいことを止められるのが嫌」
なのだそうで・・・これは学校という場所ではなかなか軽減しにくいストレスですからね。
今、彼は授業中殆ど参加していません。
算数も国語も、机に座っているときは自分で勝手にいろんな作品を作っています。
材料が欲しい時には勝手に立ってその辺に取りに行きます。
体育の時間、この間は皆がかけっこをしている時、砂場で砂遊びをしてました。
私が行って集団の中に追い込みましたが(牧羊犬みたいですわね)、
やっぱり先生の横で好きなように動いていたのち、勝手に見学者の中に入ってまったりしてました。
このような動きに、以前ならこまかく注意をして集団の中に入れようとしていた先生は、
今はあまり構いません。
自分や他人を傷つけるような行為をしていない限りは、好きなようにさせています。
授業に関しては、「それをやったら、プリントをしようね。」とか
「何分になったら、始めようね。」
とか、いろいろ働きかけてはいるのですけど、無理強いはしないでいるといった状況です。
彼に構わなくなったことで、彼と競うように動いていた他の子たちはずいぶんと落ち着き、
クラス全体としてはいい状態になったように思えます。
でも、その先生と私、時々考えちゃうんです。
「彼」にとって、本当にこれでいいのかなぁ・・・って。
彼、頭の悪い子ではありません。何度かサポートに入って感じましたが、飲込みはむしろ他のお子さんより早いです。
20分休みに、他のお子さんとスピード(トランプゲーム)をやっているのを見ましたが、
負けて切れるわけでもなく、先を読み、両手も使った良いゲームをしていました。
その賢さがそうさせるのかもしれませんが、自由度が上がったことでどんどん、
「自分はやらなくていい」が増えているような気がします。
気が向いて手を挙げたのに指されないと、自分の机をひっくり返したり蹴飛ばしたりします。それが周囲の子へのやつあたりになることもあります。
周囲への暴力という形で表れる彼のストレス。そのストレスを軽減させるために彼に自由度を認め、
その結果確かに彼にストレスは減ったでしょうが、ストレス耐性は上がるわけではなく・・・
どうしても受け止めては上げられないこと(これは学校生活では結構あります。)で制止を受けた時には以前より遠慮なく暴れるようになった風にも見えます。
「前よりひどくなった気がするんですけど、私の対応が悪かったんですよね。」
と、担任の先生。
確かに、彼に関しては『わがまま』の度合いがひどくなり、学校という場で身につけたい集団行動の基本から離れていくばかりに見えます。
私自身、どう関わるか悩むところもあります。
でも、
「先生がよく話を聞くようにしたから、彼がなんでそんな行動をとるのかが分かったじゃないですか。以前はただの「わがまま」「乱暴」だったことが、彼なりに理由があり、いやなことをなかなか忘れられないために、相手が忘れたころいじわるや暴力になって返ってくるということもわかったじゃないですか。それをどう生かすか、これからまたいろいろ試していけばいいんじゃないですか。」
と話しました。
だってねぇ、この子たちを育てるのに「特効薬」だの「近道」だのってないですもん。それは身にしみてます。
結果を焦って形だけ何とかしても仕方ない。でも、諦めてしまうのも違う。
彼の特性をわかった上で、彼がこの後社会で生きていくために必要なものを身につけていくための手助けとして何が出来るのか、ひとつずつ潰していくしかないですもん。
この手がだめならあの手で。彼一人だけを見るのではなく、クラスの子供たちの中で彼が受け取っていくもののことも考えて・・。
先生が自信をなくしている暇なんかないんですよね。止まっている暇なんかない。
だからこそね、2年目の子の若い先生が必要以上に落ち込まないようにしてあげたいなと思っています。