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阿部首相は誰のために、何を反省するのか?

2015年05月01日 | 三千里コラム

ワシントンの議事堂前で日本政府の謝罪を求める元日本軍「慰安婦」イ・ヨンスさん(4.28)


4月30日(現地時間29日)、阿部首相は米議会で演説した。日本の首相としては初めての上下院合同演説であり、敗戦後70年のメッセージでもあることから、内外で大きな注目と期待を集めていた。内容はしかし、本コラムで予測したように失望と憤りを呼び起こすものだった。

首相は言葉の上では、かつての大戦への深い反省を述べたが、アジアの民衆が期待した心からの謝罪はなく、真摯に負の歴史に向き合おうとする姿勢も見られなかった。日本の侵略戦争や植民地支配によって苦痛を受けたアジア諸国との和解には、ほど遠い内容だったと言わざるを得ない。

ただ、米議会では概ね肯定的な評価を得たようだ。と言うのも、首相は言葉と心を尽くして、日本との戦争で被害を受けた米国市民に痛切な反省と謝罪を述べたからだ。やはり彼にとっては、「米国の政界が自身をどのように評価するのか」が、最大の課題なのだろう。

思い起こせば第1次安部政権の時、米国を訪問(2007年4月)した彼は当時のブッシュ大統領にも謝罪している。他でもない、日本軍「慰安婦」に関してだった。当事者の女性たちではなく、米国大統領に謝罪する阿部氏のメンタリティーは、やはり健在なのだろう。

一体、彼は日本の首相として、誰に、何のために、何を反省し謝罪するのだろうか。 いかに米議会での演説とはいえ、アジアの民衆(良心的な日本国民を含め)が受けた傷跡に塩をすり込むような阿部首相の言動は、必ずや歴史の厳しい審判を受けるだろう。現地で取材した『ハンギョレ新聞』ワシントン特派員のレポート(4月30日付)を紹介する。(JHK)


“戦後の日本は、先の大戦に対する痛切な反省を胸に、歩みを刻みました。自らの行いが、アジア諸国民に苦しみを与えた事実から目をそむけてはならない。これらの点についての思いは、歴代総理と全く変わるものではありません。”

29日(現地時間)、日本の首相としては初めてアメリカ議会で上・下院合同演説をした安倍晋三氏が、過去の歴史に対して発した発言はここまでだった。過去の侵略と植民地支配に対する明確な反省はなかった。「慰安婦」問題に対する謝罪は言うまでもなく、「慰安婦」という単語さえ口にしなかった。

反面、安倍首相はこの日の演説で、アメリカとの緊密な関係や戦後日本がアジア諸国を助けたという内容を強調した。彼は70年前に廃墟となった日本が、アメリカの支援とアメリカが構築した世界経済体制によって大きな恩恵を受けたこと、そして“1980年代以降、韓国が、台湾が、ASEAN(東南アジア諸国連合)諸国が、やがて中国が勃興します。今度は日本も、資本と、技術を献身的に注ぎ、彼らの成長を支えました。”と強調した。

彼はまた、ハワイ真珠湾とフィリピンのバターンなどで日本との戦争で亡くなったアメリカ人に対しては“日本国と、日本国民を代表し、先の戦争にたおれた米国の人々の魂に、深い一礼をささげます。とこしえの、哀悼をささげます。”と述べ、これ以上はない哀悼の言葉ささげた。

そして安倍首相は今回の訪米期間に、日本軍「慰安婦」を‘人身売買の犠牲者’と描写して、日本政府と軍の介入を事実上否認する既存の態度を固守した。オバマ政府は安倍氏のこうした傲慢な対応を黙認しており、今回の訪米が韓日間の歴史認識をめぐる葛藤を緩和させるどころか、かえって増幅させる契機になるのではと憂慮されている。

28日、米日首脳会談の記者会見では、『AFP通信』の記者が“安倍首相は日本帝国主義の軍隊によって奴隷になった約20万人の女性たちを含め、第2次世界大戦中の日本の行動に対しては十分に謝罪を表明しなかった。今日この場で、謝罪する意思はあるのか”と極めて率直に尋ねた。安倍首相は謝罪せず、前日にハーバード大学で行った発言をほとんどそのまま繰り返した。彼は“人身売買の受難者であり筆舌に尽くしがたい苦痛を味わった慰安婦の人たちを思うと、深い苦痛を感じる。河野談話を継承するし、修正する意図はない”と語った。

記者会見では特に、“日本は慰安婦の苦痛を現実的に軽減する方案を提供しようと、多様な努力を重ねてきた”と強調した。これは以前、日本市民の寄付などで作った『アジア女性基金』を通じて、「慰安婦」被害者に慰労金を支給したことを意味すると見られる。しかし日本政府は昨年、河野談話を‘検証’するとして、談話の意義を根本から損傷した。また、『アジア女性基金』も、「日本政府による公式謝罪と賠償」という被害者の要求とは、あまりにもかけ離れたものだ。安倍首相はさらに、“20世紀の歴史で、戦争中に女性の尊厳と人権がたびたび侵害された”と述べ、「日本だけが戦時下に女性の人権を侵害したのではない」との持論を再び展開した。

韓国はもちろん、アメリカの主な報道機関と一部の下院議員の間では、‘真摯な謝罪’を求める声が高かった。それにも拘らず安倍首相が何らの変化も見せなかったのは、こうした要求を無視しても自身の議題を貫徹させるのに支障がないという自信があったからだろう。実際に首相は今回の訪問で、自衛隊の米軍支援範囲を全世界に拡大した『米日防衛協力指針(ガイドライン)』の改正と『環太平洋経済パートナー協定(TPP)』交渉の進展を通じて、オバマ大統領から大きな歓待を受けている。これは阿部首相に対し、安保と経済の両側面で浮上する中国を牽制しようとするオバマ大統領が、‘アジア再均衡’政策を展開する上で決定的な援軍になると評価しているからだ。

オバマ政府は歴史問題で「日本の前向きな態度を引き出すために水面下で説得している」と言われてきたが、今回の首脳会談を契機に日本側への傾斜を本格化させるようだ。オバマ大統領は28日の記者会見で、前日に安倍総理をリンカーン記念館に自ら案内したことを紹介し、“リンカーン大統領は、大規模な衝突の後には和解が必要だとの信念を抱いていた”と述べている。

また、ホワイトハウスでアジア政策を総括するエバン・メデイロス補佐官は27日、安倍総理が行った今年の諸発言に対して“極めて重要で建設的だ。私たちは常に「歴史問題における建設的で未来指向的な接近法」を友好国に促している。私たちが強調したかったのはまさに、阿部首相が述べたことに他ならない”と語っている。これは事実上、アメリカ政府が阿部首相に軍配を挙げたことを意味する。アメリカ政府のこのような対応は今後、中国を牽制するためには日本の支援を必要とする現状況で、「韓日間の歴史認識をめぐる葛藤は、アメリカ政府にとって副次的な問題に過ぎない」という認識を広めることになるだろう。ワシントン/パク・ヒョン特派員





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2 コメント

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187人の学者の声明 (pcflily)
2015-05-06 22:02:57
この米・日の話し合いの結果に対しては悔しくて落ち込んでいましたが、
世界的な著名な日本学、歴史学の学者187人が、
安倍に対して、
「旧日本軍慰安婦問題とこれに関した歴史的事実」を捻じ曲げることなく、そのまま認めるように
求める声明を発表したとのニュースを呼んで少しだけ、ホッとしました。

李容洙さんの努力と活躍には、頭が下がります。
写真を見て、初対面の日に、略奪された文化財を取り戻す運動「チェジャリ探し」をしている慧門さんは、私の一番尊敬している人であると話した時に、電話をかけて直接、慧門さんと会話をさせて下さったことを思いだしました。
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問われているもの (sangtae)
2015-05-07 19:31:04
阿倍の狙いは明確。
日本の金と自衛隊員の命を差し出して、とめどない従属。
明治以降、日本の所業の正当性を主張し続ける。
低劣なヘイトスピーチを容認している姿で一目瞭然だが、時代錯誤のナショナリズムが、まずもって在日韓国・朝鮮人をターゲットにしてくるであろう。
われわれは、その準備が百分の一でも出来ているだろうか。それが真に問われている。
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