黙阿弥先生は、江戸末期から明治にかけて活躍した歌舞伎狂言の作者です。彼の特徴は軽妙
な台詞回しで、三人吉三「月もおぼろに白魚の、篝もかすむ春の空・・・こいつぁ春から縁起
がいいわぇ」、弁天小僧「知らざあ言って聞かせやしょう」、白浪五人男「問われて名乗るも
おこがましいが」など、七五調を基調とした台詞が歌舞伎を面白く引き立てました。
彼は1816年に日本橋の質商に生まれました。天保の改革によって歌舞伎江戸三座が猿若
町へと移転するに伴い、浅草寺境内の正知院地内に居を構えてから約40年間創作活動をしま
した。つまり創作活動の殆どが浅草で、生涯360遍にも上る作品を残しました。