君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 三話(※BL風味)

2014-01-20 01:23:19 | 『君がいる幸せ』 limitato etemita編
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
  <人物>
ジョミー ノア副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 限りある永遠(limitato etemita)編 三話

  二日前
 ジョミーの許(端末)にセドルから通信が入る。
 人類の戦艦の中という状況下の為、個人の通信は制限されており画像は無く、音声のみだった。
「ジョミー。会いたかったのに本当に残念だ。ジョミーもだろう?」
「僕も、と言わないのは知ってるくせに」と笑う。
「何を照れてる?そんなに抱かれたいなら俺がいつでも行ってやるのに」
「どうしてそうなるんだか…。君はいつもそう言うけど、僕の事など興味もないくせに」
「いやいや。もうすごく興味があるさ。あんなに良い女なら俺はいつでも、どこでも飛んでゆくぜ」
「僕は男ですけど?」
「ま、なんでもいいさ。でも、もしまた使うなら俺にしろよ。俺は知っている。あの時、良い思いをしたのはお互いだったんだからな」
「いいや。残念だが、それは無い。あれは危険だ。ノアに持ち込む気なら…僕が動くよ」
「了解。ソルジャー・シン」
「それ、ミュウじゃない君に言われても、ありがたみを感じないね」
 と、二人の通信は終わる。
 確かに、あの時、思念体の僕は彼の思いのままに女性の体になった。
 後で思えばあれは薬の所為だったのだが、その時は何故そうなったのかわからなかった。
 女としては心が男だから不完全なんだけれど、僕はその状態に興味が湧いた。
 自分がどう感じるのかが知りたくなった。
 快感だけでない感情からのセックスとは、どういうものかが知りたくなった。
 それは自分が自分ではないどこか狂っているあの時でしか味わえない感覚だった。
 セドルが言った「良い思いをした」のは間違いではない。
 けれど…。
 セドル。君の本当は何処にあるんだ。
「キース。僕たちの闇はどこまで深いのだろう…」

  現在 惑星スメール 
「ジョミー?セドルの事を思い出しているのですか?」
「ああ、ごめん。シドが来る前に知らせがあってね」
「何を話したのです?」
「普通にただの報告をしてきただけだよ」
「何か言ったでしょ?薬は…」
 シドの脳裏に不意にセドルの言葉が浮かんだ。
「薬の所為だって言えばなんだって許されるさ」
「お前、追っても手に入らないものを追ってるだろ」
 長い間、ジョミーを好きだった。言葉に出して言いもした。でもジョミーの答えはいつもNOだ。
 彼の力になりたいだけなのに…。彼の一番側で助けたい。
 自分だけを頼って欲しい。
 俺を好きになって欲しい。
 一度だけでもいい振り向いて欲しかった。
「薬?ここの研究員に渡したのだろう」
「あ、ええ…はい」
 確かに二個は渡した。
 一つ残っている。どうして全部渡さなかったのだろうとシドは思った。
 思考力が落ちている気がする。疲れている所為か…。
 どうしてしまったのだろう。
 シドは重くなってきた頭で、何とか話題変えようと考えていた。
「そう言えば、ジョミー。ここでのブルーのキス事件を覚えていますか?」
「何をいきなり言い出すんだ?」
「僕はあまりここには来ないし、ここがスメールなのでちょっと思い出しただけですよ。あなたの記憶にはありますか?」
「記憶はあるよ。だけど、後付けだと思うが…」
 記憶の後付けこの言葉にシドは思い当たるふしがあった。
「そういえば、前に記憶の事をブルーが言っていたけれど、自分は記憶があやふやになっている部分が多くあるからどうも僕の記憶は後付けみたいだって、彼はとても悩んでいました」
「記憶の後付け。それは覚えさせられたって事?」
「そうらしいですね」
「彼でさえそうなのか?」
「彼でさえ?」
「ああ、いや。その話を知らなかったから驚いたんだ」
「あなたの記憶はどうなっているのですか?あの事件は後付けなんですか?」
「キスの事は…あれは、ここに住んでいて、まだミュウの力で生かされていた頃、倒れる前…。概要はわかる。ミュウの能力で記録は残っている。だから…」
「覚えてはいるけど、その時の感情までは覚えていない?」
「ああ、そうなるのかな。前後の記録を見てこう思っていただろうとは推測は出来るから心配はいらないよ」
「それなら、何故、彼にキスを教えたのかをはっきりと覚えていないと?」
「多分、予想はつくが…」
「教えてあげましょうか?」
「…シド?」
 何を言おうとしているのだろう?
 僕たちが何者でもかまわないと、ただジョミーの傍に居られればと、諦めたはずだった…のに。
 そんなに簡単に諦めて、想いきれるものだったら、こんなに何年も悩まない。
 こんなに苦しいのに…。
 どうして…こんなに悲しいんだろう…。
 微妙な違和感がシドから発せられている。
 それは、現実はこうして目の前に居るのに、自分から急速に遠ざかってゆくシドを感じた。
 行かせてはいけない。そう思えた。
「シド。まって」
 ジョミーはシドが話すのを止めようとしたが、その手を払いシドは続けた。
「あなたはクローンだとわかっていても、彼への気持ちを抑えられなかっただけです。だから、キスをした。でも、それで気が付いてしまったんでしょ。彼は所詮クローンだと」
「シド。僕はわかっているよ。言われなくても知っている。僕はソルジャー・ブルーが好きだ。そんな事は僕が一番わかっている。僕が彼にクローンのブルーにした事は罪だった。それもわかっている」
「ジョミー。その遂げられない思いをクローンにぶつけて楽になりましたか?」
「遂げられない思いをって…シド」
「楽になったのですか?」
「…それは…」
「記憶が無いから覚えていないと言うのですか?」
「違う。それは違う…答えられないだけで…覚えていない訳じゃない…」
「それじゃ、キースはどうなんです」
「キース?ちょっとまって、シド」
 ジョミーは何故ここでキースが出てくるんだ?と思った。やはりシドの様子がおかしい。
「僕は気が付いてしまったんです」
「何に…」
 さっきからずっとシドから感じる違和感と不協和音で、背中に悪寒が走る。僕を見るシドの目が不気味な光りを帯びていた。
「あなたはメサイアで、彼に抱かれたでしょう?」
 冷たく抑揚の無い声で言い放つ。
「…シド?」
「ですよね?」
 シドはじっとジョミーを見つめている。妖しい色を持ったままだったが、その瞳は真剣だった。
 有無を言わさぬものがあった。ジョミーは小さく息をついて、ゆっくりとした口調で答えた。
「ああ、やはり気が付いていたんだね。認める…よ」
「僕があなたにこんな気持ちを抱くようになったのはあの時から…あの日、ジョミーはとても幸せそうで。僕は凄く悔しかった。あの笑顔をどうして僕らは与えてあげられなかったのかと、とてもとても悔しかった」
「ごめん」
「そして、憎かった。何故、キースなんですか?どこが、何が良いというのです!」
 シドの目には涙が浮かんでいた。
 ジョミーはシドのまっすぐな視線を見つめ返し答えた。



  続く





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