君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 五話「追憶の破片」

2012-02-08 02:16:17 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 五話「追憶の破片」

「けれど」
 セルジュが言う。
「それがジョミーの幸せだと?」
 セルジュがまた話を戻してくる。
 君は…とちょっと呆れるジョミー。
「無理に話を逸らそうとしてたじゃないか…」
「僕の幸せねぇ…。ミュウが人を繋ぐ絆になるのは僕の希望であって、僕の幸せではない。とセルジュは言いたいのだろう?」
「それは、そうなる事で君は幸せを感じるとは思うけれど、君個人の幸せは?」
「僕の幸せは…。もうどこにも無いな…」
「あるはずです」
 とセルジュ。
「がむしゃらに生きてきて、大きすぎる望みが叶った時、全てが弾け飛んでしまった。気がついたら僕には何も残っていなかった。そこからずっと探す日々だった」
「幸せを?」
 トォニィが聞く。
「いや、生きる意味を」
「……」
「…君たちが言うように僕はまだ何かを成そうとしている。それは僕の使命みたいな物で、生きる意味になるの物では無かった。でも、僕はそれを選んだ。だから…命の始まりを探り、死の意味を探り、生き残ってしまった自分を恥じながら、それでもまだ死ねないと生き足掻いてきた」
 ジョミーは淡々と語った。
「生き残ってしまった自分…」
 と思うトォニィ。
「僕は地球であなたの声を聞いて、助けに…」
 セルジュが言う。
「僕は僕を助けてとは言わなかっただろう…」
「……」
 セルジュは何も言えなくなってしまった。
 ジョミーはそんなセルジュを見て優しく言葉を続けた。
「セルジュ…助けてくれなくてもよかったなんて…言わないから安心して。そうじゃないんだ…。あの時、僕は、長い間のミュウの望みを叶えられた事が、とても、満足だった。その後なんか…何も考えてなかったと言ってもいいぐらいに…。やり遂げた満足感だけで何も無かった。だから…前に言ったとおりに、キースだけでも助けたかった。本当にそれだけだったんだ」
「……」
「それで答えは見つかった?」
「難しいね。自分の為に生きればいいとキースは言うけれど、僕にはそれすらままならない。でも、最近、少しずつ解ってきた。こうしたいこうなったらいいと思いながら日々を過ごすだけでも少しは望む未来に近づいているのだという事が…。思う事すらしないで最初から諦めていたら、何も起きはしないのだと、そして、その願いは一人では成しえないものなのだという事に気がついたんだ」
 と、にっこりと笑った。
「それは何?何を望むの?」とトォニィは聞きたかったが、今は聞きたくても聞けなかった事をジョミーが言った事が大事だった。
 そのチャンスを逃す手はなかった。
「ジョミーの使命とは何?」
「それは僕にもよくわかっていない…わかったら君には伝えたいと思っている」
「だけど、ジョミー。僕は、それを聞いていてもジョミーを止める。止めないと後悔するから」
「……後悔か…」
「わからないけど、ジョミーがどこかに行ってしまうのはわかる。メサイアで言ったあの言葉で確信して…僕は、こうして出てきた」
「…きっと誰にも止められない…。それを後悔してくれるなら…自分勝手だけど、きっと、僕は嬉しい…」
 と、ネジが切れてしまったかのように。だんだんと眠そうになるジョミー。
「ごめん。眠くなってきた…」
 セルジュがジョミーを連れて奥の部屋へと消える。

 横になったのを見て部屋から出ようしたセルジュは引き止められる。
「セルジュ。さっきの…幸せの定義。あれを僕はキースの傍で見つけた。彼と居ると、何故こんなに安心して居られるのだろうと思っていた。不思議だったけど、僕はそれを見つけられて、それがわかっただけで人として幸せなんだね…」
 ジョミーは微笑んだ。
 それを聞いてセルジュは
「人の幸せはそれだけでは無いです…」
 と言った。
 その幸福がずっと続くと保障されてこそなのだ。
 あなたとキースのような…。
「お二人は心で繋がっているのですね…」
 彼が人類の為に何かをしようとしているのなら、俺がこんな事を思っちゃいけないのだろうな…と思いつつもセルジュは、ジョミーが眠ったのを確認してから、こう言った。

「そう思うなら、この先に何があったとしても、あなたは彼を置いて行ってはいけないのです。使命ってそんな物は捨ててしまって下さい。あなたが幸せになろうとしてないじゃないですか。僕は…そこが気に入らない」
 そんな二人の様子を隣の部屋からトォニィが見つめる。
「トォニィ…」
 セルジュが泣きそうな目で寝室から出て来る。
 トォニィはこの優しい友人の存在に何度助けられただろうと思った。
「止められない事と…どこかに行ってしまうのは認めたね」
 とトォニィが言う。
「マザーが仕掛けた罠とブルーが残した謎か…僕たちには見ている事しか出来ないのか?」
 とセルジュが言った。
「諦めたくない。ギリギリまで探す。諦めたらそこで終わる。後悔なんかしてやるもんか。そうなった時はもう遅いんだ」


 戦艦アルビオンは警戒態勢のまま進んでいた。
 ジョミーが眠って1時間程が過ぎた頃
「セルジュ。艦橋に!」
 ジョミーの声が艦内に聞こえると同時にジョミーが艦橋に跳んでくる。
「コード・ジュピター!」
 ジョミーの声にアルビオンのコンピューターが反応し、ジョミーのブレスが白く光る。
 モニターにコード認証クリアの文字が流れる。
「ジュピターだ。僕の指示に従ってくれ。急速右旋回40度。船体傾度同じく。ミュウ部隊左舷に衝撃防御を!」
 アルビオンクルーたちは急な事に驚いていたが、コードネームジュピターは絶対命令に近い事を知っていた。
 すぐに船が傾度を作り動き出す。
 近くにワープアウトしてくる物体ありとのオペレーターの声がする中、艦橋に「ジョミー」とセルジュと一緒にトォニィが跳んでくる
「ワープは?」
 とトォニィ。
「出現距離が近い。やり過ごしてから跳ぶしかない」
「総員、衝撃に備え!」
 セルジュが叫ぶと同時に左舷にワープアウトをしてきたのは
「シャングリラ!」
 出現と同時のシャングリラの主砲での攻撃がアルビオンの傾けた船体の上をかすめる。 防御壁のおかげで船体の破損も無かった。
「船の水平を。出来次第ワープ!」
 セルジュの指示が飛ぶ
「質量の大きいシャングリラなのに…こちらに気付かれないぎりぎりでのアウトといい、いきなりの主砲といい、シドの腕はやはり凄いな」
 トォニィがうなる。
 旋回し全速で逃げるアルビオンの上を衝突しかねない速度で大型のシャングリラがかすめてゆく
「トォニィ、彼が来る!」
 ジョミーの声と同時に二人の姿が消える。
 ワープ準備に入っている船に跳ぶなどという無茶をしたのはブルーだった。
 ジョミーとトォニィが外に飛び出し、二人でバリアを貼り彼を捕獲にかかる。
 そうしないと彼の身が危ないのだ。
 捕まえたブルーを船内に収容するとアルビオンはワープをした。
「これでしばらくは安心だ」
 セルジュが言う。
 ワープを終えたばかりの大型船のシャングリラには次のワープはすぐには出来ない。
 ワープに巻き込まれかけたブルーは気絶していた。
「全く…無茶な事を」
「ジョミーが心配だったんだよ。でも、力で何でも出来ると思っている証拠だね」
 トォニィが言った。
「この力で出来ない事は山ほどあるのに…」
 さっきまでジョミーがいたセルジュの部屋に運ばれるブルー。
 念のためにブルーには対ミュウ用の手錠がはめられていた。
「ジョミー、ソルジャーズはどうするの?」
 ブルーを見ながらトォニィが聞く。
「まだ手放すには早いな。今回の事が聞くいいきっかけになりそうだよ」
「彼らに何を?」
「あの子達が人や僕らをどう思っているのか知りたいんだ」


  続く





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