君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十一話「追憶の破片」

2012-03-12 21:53:13 | 『君がいる幸せ』本編五章「時の在り処」
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
 <用語>
惑星ノア 大戦時ミュウが陥落させた人類の首都星 今は人類に返還している
軍事基地ペセトラ 人類の軍事拠点 戦後十二人の代表で議会制になる 
惑星メサイア ミュウが移住した惑星
育英都市スメール フィシスとカナリア達が住む都市
ジュピター キース警護時のジョミーのコードネーム(シャトル所有)

   『君がいる幸せ』 五章「時の在り処」 十一話「追憶の破片」

  Shangri-La
 トォニィは展望室を出て「天体の間」に向かった。
 部屋の前にはセルジュが待っていた。
「トォニィ。顔色が悪い。一度、部屋に戻った方がいいんじゃないのか?」
「月に着くまでに出来るだけ集めたいんだ」
「…今、お前まで倒れたら…」
「僕はまだ大丈夫」
「そうは見えないけど…」
「僕はさ、今まで長としてちゃんとやって来ていると思っていたけど、それはミュウの間だけで、人類の事は全部ジョミーにやってもらっていた。僕には同じようには出来ない…」
「トォニィ、俺たちは最初はいがみ合ってばかりだったよな」
「ん?ああ」
「人類とミュウの繋ぎをする前は、俺がジョミーが気に入らないと言って、お前は大佐が嫌いだと言って、全然かみ合ってなかった。それでも、こうして話せるようになった」
「……」
「だから、お前はお前でやってゆけると思う。いつもの自信満々はどこにいった?」
「わかった。少し部屋に行くよ。ソルジャーズの事を頼む」
「了解。子供の顔でも見て元気出せよ」
「うん。そうだ、セルジュ。結婚の年齢を上げるのと一緒にメンバーズエリートの婚姻も許されるようになったんだったよな?」
「ああ、でも何か条件があった…はずだが…」
「興味ないのか?」
「無いな…。若い者達は喜んでるんじゃないかな。俺はもう今更だよ」
「ふーん」
「ま、まさか俺をミュウと結婚させようなんて思ってないよな?」
「少しだけ考えた」
「俺は無理だ。俺は君たちの同胞を沢山殺しているし、それに俺は一つの所に長く居られないから、俺みたいなのと結婚したら相手にとても寂しい思いをさせてしまうよ」
「それなりには、考えてはいるようだね…。ねぇ、セルジュ。前に言ってた一緒に長く居られる事が幸せなら、その次は何だと思う?」
「それは…わからないな…」
 トォニィが彼の部屋へ向かうのを見送りながら、問いの答えの一つを、ジョミーなら答えられたような気がするセルジュだった。

  数時間後
「ブルーの意識を解析する?」
 俺がかつてかけられたあの機械にブルーが座っているを見てキースが言った。
「普通に彼の記憶を見るだけではダメなのか?」
「多分、彼はクローンだから普通の記憶には無いと思うから、もっと遡ってDNAまで行ってみる」
「そんな事が出来るのか?」
「僕らだけじゃ出来ないからこうして機械を頼るんだよ」
 とトォニィ。
「キース、ここが終わったら、あんたにはまだ聞きたい事がある。僕達は協力してジョミーを追うべきだ」
「…承諾しよう」
 やがてブルーの意識を探るように彼に力が加えられる。
 しばらくは何も起きなかったが部屋の隅に居たジョミーが突然駆け寄った。
「止め…て!」
 彼の全身から青い稲妻が走りうなっていた機械が止まる。
「ジョミー?」
 トォニィが押さえつけようとする。
「止めるんだ」
 と、トォニィを見据えるジョミー。
 それは、彼であって彼ではなかった。
「トォニィ。ソルジャーズを探っても何も出てはこない。彼らは僕と同じではないんだ」
「ジョミー?」
 ブルーが言った。
「何で?どこにいるの?」
 トォニィが聞く。
「彼らの中には居ない。これは自動書記だ。彼らを解析しようとしたら発現するようにしておいた。この子達を無駄に苦しめないで欲しい」
「戻ってきて。ジョミー!」
 トォニィがジョミーの腕を掴んで叫ぶ。
「トォニィ、すまない…」
 そう言うとジョミーは優しくトォニィを抱きしめる。
 その彼の背後で青い光と共に機械がショートし煙が上がった。
 ジョミーは電池が切れたようにそこで止まり、今の自分の状態が飲み込めないでいた。
 この事で、消耗してしまったソルジャーズを医療班に任せてトォニィは壊れた装置を見つめていた。
「僕は間違ったのかな…」
「ただソルジャーズが苦しむのを見たくなかっただけじゃないかな?」
 セルジュが答えた。

「もう、月しかないのか?」
 キースの部屋を訪れたトォニィは独り言のように言った。
「さっき、俺は協力する事を了承した」
「……」
「何が知りたい?」
「今は、月を教えて。ジョミーと行ったという事だったよね」
「月はブルーの遺体が安置してあるだけで、他には何も無い。ジョミーは何故マザーは、月(ここ)にしたのかと気にしていたが、その答えは不明なままだ。ブルーの体が月にあった事と、ジョミーが人類の医療船で治療された事で、あのクローン達が生まれた」
「僕らも、ジョミーのクローンは理解できたけど、何百年も前のゲノムでブルーが作られたって事には疑問だった」
 キースは四年前のペセトラでのジョミーとマザーの件を話した。
「答えはブルーの記憶にあるの?」
「ペセトラのマザーはもう何も出来ない。それにクローンのブルーの記憶を辿るのは薦めない…」
「部分だけなら…フィシスがいるし、大丈夫だと思う。でも、無理にでも…」
「そうか…。そこに何があるのか俺にはわからないが、半年前にジョミーが俺に言ったのは、自分の生まれる前のミュウの遺伝子が遺伝子レベルで自分達を守るために救世主を作ろうとしていた話とそれに関係していたブルーの事だ。、それで、その最終目的だが、ジョミーが出した答えはこうだった」
「……」

 キースの回想(半年前のジョミーとの会話)
「キース。グランド・マザーを作ったのは人間だ。全ては人類の未来の為に動いてゆくのは当たり前の事だ。ミュウは人から作られた。それを、人類の未来に組み込んで利用してゆこうとするのも当然だ。人々が忌み嫌い排除し、そうして、化け物は作られる。ミュウの力、その力が自分(マザー)を壊す程に成長したら…その大き過ぎる力は、人類の未来に使われるべきだと…」
「それで、お前をイグドラシルへ降ろした?」
「あの時点で、僕とグランド・マザーは対面する必要は無かった。キース、代理の君に言わせれば済んだ事だ。だが、そうしなかった」
「……」
「目的は、僕に自分(マザー)が倒せれるかどうかを見極める為と、僕を殺す事だった。力さえあれば、力さえ手に入れれば、僕の意思は邪魔でしかないからね。君が僕を殺していたらマザーも何もしなくて楽だったろうね」
「ミュウの力で何を…」
「そこでそのまま、僕を捕らえて地球再生へと計画が進んでゆく予定だった」
「地球再生?」
「人々は宇宙で生まれ育ち、もう地球に固執する事はただのスローガンみたいになっていただろう?後また、何百年かしたらそれも無くなるかもしれない状態で、マザーは地球を再生をしなくてはならなかった。そこに人類以上の力を持つ者が生まれたならその力を利用して…人間の力だけでは地球は再生出来ないとマザーは答えを出していたのだろうね」
「お前の人智を超えた力で地球再生を促進させる?」
「利用されて当然なんだ。僕の力は人としては無意味な程に大きくなった。この力で何が出来る?悪魔のように人々を虐殺して都市を焼き滅ぼしてどうする?星を一つ壊して何になる?そんな事をして何が出来る?ここまでの大きな力は、もう人として全く必要ないんだ」
「お前の力は破壊だけではない。地球再生は人類の悲願だ。お前だけでどうしようと言うんだ」
「キース、脅すつもりはないけれど…僕がいつまで普通で…いられると思う?」
 そう言って俺を見たジョミー。
 俺は「月」で感じた狂気を思い出した。
「ね。わかるよね。だからさ、僕の力は、もう必要ないんだよ。人にはね。でも、地球には必要なんだ」
 と笑う。
「地球の自転軸をずらすとマントルの対流が狂う。そして動き出す。荒療治だが、多分そこからが始まりで、火山活動を活発化させて大気を浄化して海を再生する。きれいな大気を作り治すんだ。そして新しい地球が生まれるんだ。地球は青く蘇る」
「それをするにはお前の力はどのくらい必要なんだ」
「全部かな?もしかしたらそれは完成させれないかもしれないし…」
「…それをしたらどうなる?」
「さぁ、消えるか、霧散か。わからない」
「……」
「とにかくさ…。僕が死んでも発動する計画だったのだから、僕には…イグドラシルの後は、ミュウと人類のその後が見れて楽しかったよ。人生のオマケのような時間は意外と濃密だった。まだ生きたいと願う程にね」


 話を聞いたトォニィは、戦艦アルビオンでのジョミーが浮かんでいた。あの時、生き延びてしまった自分と言っていた。
「ジョミー…」
 トォニィは何も言えなかった。


  続く





 


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