君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

2012-12-30 03:00:17 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー ノアの副首相に就任 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」十六話「心つないで」最終話

「タイプブルーの力を封印?」
 思わずキースが聞き返した。
「うん。封印すると言っても、それは僕だけの事で、タイプブルーの力を使える状態で温存させるだけなんだけどね。タイプブルーはクローンブルーがいる。人類からミュウにさせられた彼がいる。そして、新しいタイプの僕。僕はジョミー・マーキス・シンは、やっと僕になったんだ。もう誰かの所為になんてしないで生きる。だから、僕は人類とミュウに影響を与え続ける「楔」になる。人が戦いに向かうのなら僕らはいつでも力を行使する。理不尽に思えるような事もする。トォニィはミュウの為に生きるだろう。キース、君は人類の為に生きるのだろう?僕は二人の間に、あの二人を連れて立つ」
 それは、ジョミーの本当の状態を知らない軍部が三人を架け橋ではなくて、人々の間に穿つ楔にしようとした時期があった。
 それをそのまま利用して、人もミュウに対しても影響を与えてゆくという事なのだろう。
「あの二人は了解済みなんだな」
「うん。前に話してある。この戦いが終わったらと決めていた」

「ミュウのお前の言葉を信じて人は戦争を止めに来た。それには十四年かかった。それはお前も同じだったんだな。自分の生き方を見つけろと、俺はお前にずっとそう言い続けていたとが、俺ではお前にそれを与えてやれなかったのか?」
「きっとね。心の何処かで君の言葉も届いていたと思うんだ。だけど、僕は素直にそれに従えなかった…」
「そうなのか…やはり…それは俺がブルーを殺しているからか」
「違うと思う」
「…違う?」
「それは…きっと…僕が君を好きになったから…君に従うのが面白くなかったんだろうな」
「…好きになったなら相手の言う事を聞いて従うのもあるんじゃないか?」
「僕が君の前で泣けなかったように…僕はものすごく意地っ張りなんだよ…。そして、とても甘えたがりなんだ。一つ君の言う事を聞いたら…それこそ全部君に任せてしまいそうで…あの動く事すらままならなかった時には、君を好きだと思う事すら考えたくなかった。本当に何もかも…君に投げて逃げ込んでしまいそうだったんだ。それこそ…地球再生の前に君の身体に溺れた時以上になるような気がして…怖かったんだ」
「俺は…」
 俺は甘えて欲しかった。子供の身体になってしまい、何も出来なくなったお前を介抱するのが嬉しかったんだ。
 俺は、お前が俺しか頼れないようにしようとしていた。
 甘え頼りきる事が出来ずに悩んでいる事も気がついていた。
 それでも、俺は…俺のエゴだと知っていても、それでも。
「俺は甘えて欲しかった」
「僕は…君が怖かったんだ…。だから、僕は君を愛した僕を否定した。僕の行為には打算しかなくて愛など存在しなかったのでは?とね。認めるのが怖かったんだ。僕は避けていた。僕には君との思い出がある。あれをすべて嘘だったと思う事は出来なかった…愛しているのは事実なんだ」
「ジョミー」
「しかし、まさかね、こんなに君を好きになるなんて…思いもしなかったよ…。君無しでは居られないとは言わない。だけど、君を殺せるのが僕なら、僕を殺せるのも君だ。君が居なくなったら僕も居ない」
「なら、絶対に俺が死ぬまで生きろよ」
「…僕はそう長くは生きられないんだよ…」
「クローンには生殖能力が無く、子孫を残せないままいつか細胞崩壊が起きてしまう事は知っている。だが俺は、あのブルーもお前もクローン検査の結果通りではないと俺は思っている。お前たちはミュウ最強のタイプブルーなんだろう。今まで、人間の結果など、ただの紙くずにしてきたじゃないか?お前は大きすぎる力を持ってしまった時、体機能を全て力で動かしていた。いつかその壊れたDNA配列も変えるんじゃないか?」
「人ですらなくなってしまったような言い方だな、それ」
「基より、ミュウだろう」
「ミュウだけど…それに何がいいたいの?」
「いいさ。俺だって実験体だ。クローンとそう変わりはない。マザーも俺がこんなに長く生きるなんて予想していなかっただろうな」
「うん。そうかもね」
「だから…僕たちは…」
「もうどうしようもない…」
「その言い方には望みが無いな」
「んー、どうにでもしてゆける?」
「何処にでも行ける」
「何処にも行けないのに?」
「行けるさ」
 二人はメティスの星空を見上げた。

「でも、キース。ペセトラは良いのか?こんな辺境の視察、後回しに出来たんじゃないか?」
「俺の意思は議会に通してある。副総裁のお前のと同じだ」
「そうか…来てくれて良かったよ。僕はここからペセトラに行く足が無かった」
「そう言えば、ドッグに船が無かったな」
「ゼルはフィシスを送っていったんだ」
「人類の戦艦で良いなら乗ってゆくがいい」
「充分だ」
 僕はここビルレストで暮らした二年間がとても大切だったと思っている。
 お互いをまだ良く知らず、探り合うような日々だったけど、忙しくて会えない日も多かった。
 けれど、僕たちはなるべく会うように決めていた。
 あれはどちらからともなく決めた事柄だった。
 他愛無い日々の業務を話すそんな時間でも必要だったんだ。
 あの二年間が無かったら、今、ここに居なかっただろう。
 そう、きっと僕は全てを諦めて消えていただろう。
「ジョミー。手を出して俺と同調してくれないか」
「…?」
「俺が心からお前を傍に置きたいと思ったのは、地球再生の時だ。目の前から居なくなった時だ。いつもお前は俺の傍に居ると落ち着くと、安らげると良く言っていたな。俺はお前が傍にいると緊張した。何も動じないように生きてきた俺がだ。最初はお前が敵だからだと思っていた。俺とお前が関係を持つようになってもお前はどこか心を許していなかった。俺もそうだった。そう言葉では何でも嘘でも言える。だから、手を合わせよう…俺を視ててくれ」
 そう言って手を出したキースの手にジョミーも手を出し合わせた。
 ゆっくりと同調が始る。
「怖くはない?」
 どこからともなくジョミーの声が聴こえてきた。
「大丈夫だ」
「僕は怖いかな…」
 そう言ってジョミーはキースを見て照れたように笑った。
「俺は…俺はそうやってお前が見ていてくれるのが好きだったんだ。お前がずっと俺を見ていてくれるならどこまででも人の為に生きよう。それだけで生きていけると思った。俺の横でずっと二人で前を見て進めたら…と思っていた。今もそれは変わらない。それを言葉にしたら「愛している」となるのならそうなんだろうな。これが本心だ。楔になると言うならそれも良いだろう。だけど、こうしてやっと捕まえたお前を俺は手離しはしないぞ。ずっとこの手を掴んでいる。もう逃がさない。覚悟しろ。それが、俺の希望だ」

 彼の本心が流れ込んでくる。
 熱い決意。
 熱い思い。
 焼けてしまいそうだ。
 この男の前だとどうして僕はこんなに小さいのだろう…。
 そして、どうしてこんなに嬉しいのだろう…。
 泣ける程に…どうして嬉しいのだろう…。
 心が泣いている。
 愛していると…。
「俺を見てさらけだせ。全てを…ジョミー」
「キース…好きです。僕も君が好きです。この身が朽ちても好きでいられる自信がある。死んでも絶対にこの思いを守る。誰にも君を渡さない。僕だけのモノでいて下さい…」
 溢れ出し止らない思い…。
 ダメだよ…。
 僕はわがままなんだ…。
 もう、だめだ…。
「もっと…だ。もっと言ってくれ」
「…誰よりも…何よりも傍に居て欲しい…。僕は「未来」は望まない。「今」が次の瞬間に過去になり、未来が「今」になるのなら、僕は「今」をずっと望む。ずっとこの「今」であったらと…望む。僕は今、君を愛しているんだ…きっと、何よりも誰よりも、さっきの僕よりも今の僕は君が好きだ」
 もう、言葉が次げない…思いだけで潰れてしまいそうだ。
「…ジョミー」
「…言葉なんて意味は無いよ…もう…僕たちには…言葉は必要ない…」
「俺はもっと聞きたい…」
「どう…して…僕たちは同じ場所で出会わなかったのだろう…そうしたら…こんなに時間をかけなくても見つけられたのに…」
「マザーが俺たちを殺しあうように配置したんだ。だけど…この出会いでなかったら、本当に殺しあうだけだったのかもしれない」
「そうかもしれないね…ああ、殺したいほど愛しているよ。キース」
「ならば、俺は殺されたいほどに愛している」
 過去の憎しみや悲しみなど消し飛んでしまえばいいのに…。
 そうさ、未来は変えてゆけるんだ。
 そう、望めば、何にでも変えてゆける。
 だって未来はまだ訪れていないのだから…。

 僕たちは思いっきり「今」を愛そう。
 「今」を大切にして懸命に生きるんだ。
 そうすれば、いつか未来は願う方向へと向かってゆくだろう。




「お前は、今、幸せか?」
「今?幸せだよ…」










        終






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