君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十話「ジュピターのシャトル・ベルーガ」

2012-12-05 01:50:04 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆やっと再開出来ました。よろしくお願いします。
でも、書き溜めていないので大変です^^;

☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十話「ジュピターのシャトル・ベルーガ」

 キースが将軍の船に向かった事で、両軍は停戦状態になった。
 公開処刑をするという事は人類軍のほんの一部しか知られていなかった。
 キースは自分の前に立ち、こちらを静かに見つめてくるジョミーを見返した。
 ジョミーの腕には白いブレスが淡く光っている。
 それは、彼が本物である証。
 ゆっくりと振り上げられた細く青い剣。
 そう言えば、俺はこの剣で傷つけられた事は無かった。
 ミュウの力で押さえつけられたり、弾き飛ばされたりはしたが、それは、どういう意味なのだろうか…。
 ソルジャー・シンの後方にクローンのジョミーが見える。
 彼ら、二人はこんなに似ていただろうか?
 本体のジョミーがクローンの後追いをするように成長していたここ数年。
 ああ、そうか。
 俺は最近二人が一緒にいる所を見ていないんだな。
「……」
 拘束されていないキースは、ソルジャー・シンとの間に慎重に間合いを取っていた。
 それを上から面白そうに見ていたトラヴィス将軍がキースに向かって声をかけた。
「飼い犬に咬まれる気分はどうだ?」
「彼は俺の飼い犬なんかじゃない」
 キースは将軍にそう答えると、ソルジャー・シンに向かって言った。
「ジョミー。お前は俺と将軍が会えるようにすると言ったな。それを反古するのか?」
 目の前のジョミーは答えなかったが、気がそがれたような感じで腕を降ろした。
 彼の手から、音も無く青い剣が消えていった。
 キースの問いには、クローンのジョミーが答えた。
「将軍。どうされますか?彼と話されますか?」
 ジョミーは将軍を見上げた。
「いいだろう話そう。その前にジョミー。お前はここに上がって来るんだ」
「…はい。わかりました」
 ジョミーはテレポートで将軍のいる所まで跳んだ。
 上には将軍の直属の部下が二人、彼の後ろに控えていた。
「……」
「キース・アニアン。何か言いたい事はあるか?」
「ええ、将軍。あなたはこの後をどうするつもりでいるのか聞きたい」
 言いながらキースは将軍を見上げた。
「お前には、これからこの東部宙域から軍を引いてもらう。東部は中央から独立する」
「それだけで、この戦いが終わると思うのか?」
「今はそれでいい」
「俺をソルジャー・シンがその意思なく殺したとなれば、この戦いにミュウが参戦してくる事になる。そうなれば、先の大戦どころではない。未曾有の戦いになるだろう。それでいいのか?」
「それが、お前の命乞いか?」
「この先に戦争を起こさないのならば、俺が死ぬのはそう問題ではない。人類同士の戦いは回避が可能だろう。問題は、そこで彼を、ミュウを使うなと言いたいんだ。余興のつもりならなおさらだ。あなたは彼らの本当を知らない」
「クローンに操られているのにか?」
 その言葉にゆっくりとソルジャー・シンが将軍を見返した。
 腕のブレスは淡く光り続けている。
 何をしている?
 キースは用心深く将軍とソルジャー・シンを見ていた。
「将軍。ミュウを甘く見ない方がいい…」
「自分がこいつの所為で敗れたからそう言うのか?」
「ああ。彼らは力だけの粗暴な人種ではない。そして、今、受け入れられてから、皆が思っているような従順な人種でもない。俺たちと同じ人間だ。そして、俺たちより統率が取れている」
「…果たして、そうかな?お前のそれは過剰評価ではないか?」
「将軍。俺の認識が間違いだと言うのなら、あなたがミュウに感じているそれも間違っている。俺はあなたのそれは、私怨だと俺は思っている」
 挑発するようにギッと睨みつけるキース。
「…私怨?何が言いたい」
「あなたは大戦中、恋人だった女性がミュウの疑いがかけられた。彼女はあなたの前から姿を消した。その事でミュウを恨みに思っているのではないか?」
「大戦中?そんな昔の事を根に持つ訳がないだろう」
 と笑った。
「…では、あなたは何故、前の海賊掃討の時、戦闘要員でもないジュピターに海賊と対峙するように命じたのか?」
「ジュピターの出自に疑問があったからだ」
「では、その後に捕らえた海賊の首領グライムの処刑を私や彼にさせたのは何故だ?」
「それは裁判でそう決まったからだ」
「海賊を殲滅すると言いながら、全てあなたが裏で動いていたのはわかっていた。あれは海賊の敵愾心を俺たちに向ける為だった。そうしてあなたは海賊に近づいた…」
「……」
「…全てはミュウの所為だと、大戦が無ければと。ひいては政治や軍部がいけないのだとマザー信奉者を煽り彼らを利用してきた。ミュウのソルジャーのクローンを作ったのも、メギドを盗み惑星メサイア襲撃やノア事変。そのすべてをあなたが仕組んだ。それは全て私怨から、そして、あなたの野心だ」
「野心?それは必要な物ではないのかね?」
「間違った物でなければな…」
「それをキース。君が決めるのか?」
 俺が?まさか俺ではない…。
「……」

「野心だろうと何だろうとかまわないわ」
 突然、ドアが開きクリスティナが入って来た。
「何故、ここに?」
 将軍が叫んだ。
「クリスティナ。今すぐ君の船に戻るんだ」
「将軍。ここから微弱だけど何かの通信データが送られているのよ」
 そう言うと彼女はソルジャー・シンに銃を向けた。
「…クリス…」
「ジョミー。いえ、ジュピター。君はそれで何をしているの?」
 クリスティナは淡く光るブレスを指差した。
「答えなさい。何をしているの?」
「…僕も答えを待っている…」
「答え?何の?」
「……」
「…いいわ。今すぐ、それを外して。止めなさい」
「このブレスは…僕には無理です…」
「何故?」
「答えが出るまで止めれない…」
「じゃあ、それは何を発信しているの?」
「……」
「そう。それじゃ、それを壊すわ。外せないのなら、その腕ごと吹き飛ばすわよ」
 と彼女はブレスに狙いを定めた。
「クリス、だめです!撃っちゃいけない」
 将軍の横で身を乗り出しクローンのジョミーが叫んだ。
「ジョミー?」
「それは、そのブレスは壊しちゃいけない。それが壊れると同時にここは彼のシャトルで撃たれる」
「シャトル。ジュピターのか?」
 将軍が横にいるクローンのジョミーの腕を掴んで聞いた。
「…そ、そうです。将軍」
「ジュピターのシャトルか?」
 そういって彼の腕をねじ上げた。
「はい…あのブレスは銃では簡単に壊れない。でも、クリスティナが撃ったのに紛れて彼が壊す可能性がある。そうなったら、ここはステルスで隠れているシャトルに撃たれる。そう設定されている」
「ジョミー。お前の操るままになっているのではないのか?」
「99%僕の意思の下です。だけど…1%…は彼の意思が残っている。だから…」
「では、ジョミー。やつのシャトルはどこに隠れているのだ?」
「待って…探します…。…この直上。約三キロ…」
「そ、そんなに近くに?機影なんて無かったわ」
 クリスティナがミュウのステルス能力に驚いていた。
「ジョミー。正確な位置をブリッジ知らせろ。そして、そこを撃つように言え」
 将軍はジョミーにそう命じた。
 しばらくするとブリッジから「目標撃破」の知らせが入った。
「…ベルーガ…」
 ジョミーがぼそりと呟いたのをキースは聞いた。

 ジョミー。
 お前はこの事態をどう収拾するつもりなんだ。
 シャトルが壊されてもまだ淡く光るブレス。
 そのブレスだけでも、ここを破壊するくらいの能力はある。
 お前はそれを使う気でいるのか?
 クローンのジョミーの裏切り。
 クリスティナの乱入。
 将軍、そして、俺。
 戦争の火種は全てここに集まっている。
 おまえはそれを消す事が出来る。


「ジョミー。ソルジャー・シンに命じろ。キースとクリスティナの二人を今すぐ殺せ」



  続く







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