君とともに生き、君とともに逝くのならば、僕は君の為に生きよう。

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『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十一話「大人の思惑」

2012-12-11 03:12:20 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十一話「大人の思惑」

「将軍!二人共って…!どうして…彼女までですか!?」
 そう言って将軍を見たジョミーの額に銃が押し当てられた。
 彼は将軍の部下に腕を掴まれていた。
「ああ、かまわない。ここでキース・アニアンに撃たれた事にすれば都合がいい」
「将軍」
 クリスティナとジョミーがほぼ同時に叫んだ。
「命じろ。ジョミー」
「出来ません」
「お前がここで死ぬ事になってもか?」
 将軍はそう言うと銃でジョミーを殴りつけた。
「僕が…僕が居ないとソルジャー・シンを思い通りに出来ませんよ…」
 口に血を滲ませながらジョミーは言った。
「では、お前は予定通りにキースを殺せ。クリスティナはこちらでやる」

「聞け。クラヴィス将軍!」
 キースが叫んだ。
「俺が何もしないでここに来たと思っているのか?」
 キースは耳のピアスを触りながら言った。
「これは今までの会話を全て俺の部下に送信している。俺や彼女を殺しても、もうあなたの思い通りにはならない」
「キース・アニアン!きさま…」
「じゃあ、あの通信はあなたから…?」
「それに、この船にはもう俺の部下が取り付いている頃だ」
「ま、まさか、近くに船は居ない…」
「俺のミュウ部隊は三キロくらい跳べる」
「さっきのジュピターのシャトルにか…」
「俺はこの戦いに軍部のミュウしか参戦させる気はない。将軍も、もうそのクローンのミュウを使うのは止めて頂きたい」
「お前はそんなにミュウが守りたいのか?」
「勘違いをするな。俺はこの馬鹿げた戦争を止めたいだけだ」
「馬鹿げた…だと…?」
「そうだろう?あなたは人の未来など何一つ考えていない。人間の欲望が開放されただけの、ただの老人でしかない。先人は先人らしくマザーの言いなりになって生きていた事を、自分たちのしてきた事を嘆いていればいいんだ。いまさら、自分勝手に悩むな」
「今までマザーの言いなりでしか生きてこなかった…だから、何か残したいだけだ」
「…やっと言ったな…野望と野心、それが本音か…」
 キースが安心したようにニッと笑った。
「かまわない。二人とも撃て!」
 将軍の部下の銃が火を噴いた。
「もう止めて下さい!」
 ソルジャー・シンが叫んだ。
 その瞬間、キースは青い光を見た。
 将軍の部下の銃の弾丸が自分とクリスティナの前で止まる。
 青いバリアがある。
 手を横に大きく広げるソルジャー・シンが見える。
 彼が止めているのか?
 止められたのを見た部下が次を撃ち出す。
 その瞬間、彼らの横にいるジョミーが攻撃をして彼らは倒れた。
 そのままジョミーは将軍の銃を奪い、将軍の額に銃を向けた。
 その間も変わらすに青い光は下の三人を守っている。
「…三人を守る?」
 キースはこの力が誰のものであるのかに気づいた。

 ゆっくりとした速度で時間が流れてやがて止まる。
 声が聞こえた。
 だめ…です。
 もう僕を守らないで…僕は…仲間じゃない…。
 僕の本当の目的はアナタを殺す事…。
 だから…。
 もう十分に幸せでした。
 全てを知ってるアナタに守られて、人を愛する事を、誰かを何かを守って戦って。
 そして、僕は人として生きる喜びを知りました。
「ダメだ。許さない」
 もう…十分です…。
「なら…何故…泣くんだ。ジョミー」
 幸せだったから…です。
「僕には君が必要なんだ」
 それでは、これは賭けです。
 アナタがそう願ってくれるのなら僕はここで死なないでしょう…。
「ダメだ…そんな賭けは許さない」
 もうすぐここにブルーが来る。
 最後に、彼を見たいと思うのは僕のわがまま…ですね…。
 少しずつ青い光のバリアが黄色の光に押され始める。
 バリアをこじ開けるようにして銃弾が通り抜けソルジャー・シンに向かっていった。
 キースとクリスティナに向けられたものを全てその身に受けてソルジャー・シンが倒れた。
「…!」
 止まっていた時間が戻る。
「ジョミー!」
 キースが叫んだ。
 部屋の壁が破壊される音と共にソルジャーズのブルーが飛び込んで来た。
「…ブルー…僕は…」
 倒れたジョミーの元にテレポートして彼を抱きかかえるブルー。
 ブルーを見て安心したジョミーは気を失った。
「何故…どうして…こんな事に…」
 彼ら二人の下に血の海が広がってゆく。
「貴様ら。許さない!」
 ブルーが青く光始める。
 その怒りはその場にいる全員に向けられていた。
 突き刺さるような恐怖が場を支配した。
「止めるんだ。ブルー!」
 将軍に銃を向けたまま、ジョミーが叫んだ。
 ギッとジョミーを睨み返すブルー。
「だから!皆、殺してしまおうと言ったんだ!二人が入れ替わるなんて計画。反対したんだ」
 ブルーがジョミーに向かって叫んだ。
「それを、今、議論する気はない!」
「…お前…」
「早く彼を連れてゆけ!上には僕のシャトルがまだある。あれには医療設備が乗っている」
「それで…助かるとは…」
 抱きかかえたジョミーの体から流れた血で濡れた自分の手を見るブルー。
「君が助けるんだ。いくらソルジャー服を着ていても、バリアで弾の威力は消したが…それだけの銃弾を受けてしまっては…僕には無理だ」
「嫌だ。俺はこいつらを殺してから…でないと…気が収まらない」
「ブルー。こうなったのはジョミーの意思だ。彼自身が…僕のバリアをこじ開けたんだ…」
「…ジョミー」
「いいか。ブルー。彼を必ず助けろ」
「嫌だ!」
「ブルー。僕がこの状況に怒っていない訳がないだろう」
 ブルーはここで初めて気がついた。
 ここにいる人間が彼の怒りに当てられて言葉も発せられないでいる事を。
 かろうじてキースだけがその場で立っていた。
 将軍は命乞いをするような目でジョミーを見たままイスに身じろぎもしないし、クリスティナは床に座り込んでいた。
「これは命令だ。彼を絶対に死なせるな!」
 それは、ソルジャー・シンの絶対の命令だった。
 その言葉の後に続くのは「死なせたら…どうなるかわからない」だろうか?
 もうブルーにも反論は許されなかった。
「わかった。約束する。僕が絶対に死なせない」
 血だらけのジョミーを抱えたブルーがシャトルへと跳んだ。
 ジョミーが将軍と一緒に浮かび上がりキースたちの前へと音もなく降りた。
 将軍をその場で離し、ジョミーはソルジャーズのジョミーの血溜りにそっと手を触れた。
「彼は普通の子供だった…のに何故、自分の命を…」
 そこまで言うとジョミーは立ち上がった。
 ジョミーは淡く淡く青く光はじめる。
 その腕には白く光るブレスがあった。
「全く…人は都合が悪くなると殺して終わるのですか?その短絡な思考はどこで作られているのですか?人間の全て…僕らのがそうなのですか?それは…辛いですね」
 ジョミーはまず後ろにいる将軍、そして、目の前のクリスティナとその少し後ろにいるキースを順に見てから、皆に見えるようにブレスのついた右腕をあげる。
 そして、その怒りを治めていった。
 青い光が静かに消える。
 だが、まだブレスは白く光ったままだった。
「これが、何であるかの説明はいらないですね…」
「ジョミー…それは、あなたがジュピターである証、でも、それで何をしているの?」
「僕自身は何もしていません。答えを待っているだけです…」
「何の答えを?」
「人々の…」
 そう言うとジョミーはチラッとキースを見てから言った。
「そうですね…まだ時間があるから、少し話をしませんか?」
 パチン。という小さな音と共に、キースのピアスが床に落ちた。
「僕の仲間、ミュウと人類が戦った先の大戦が終わってからもう十四年です。あの時、生まれた子が成人する年です。僕らが開けた箱はパンドラの箱だった筈です。?いつまでマザーのスカートに隠れて甘えているのです。いったい何年待てば、目覚めるのですか?そして、その後は今度は何に頼っていくというのですか?僕らにですか?次に僕らに何をしろというのです?もう自分で前を向いて歩きませんか?いつまでも何をしているのです。もうそんな人類なんか滅びてしまえばいいのに…。と本気で思ってしまいますよ」
「ジョミー…」
「でも、きっと大丈夫。僕は信じている。だから、僕は答えを待っているのです…」
 言いながらジョミーは三人の前から少しずつ離れていった。
 それでも声は同じ大きさで聞こえてきていた。
「大戦前の、あの頃の人類は、知りたくない物は知ろうとしないで。見たくない物は見ないで。嫌な物は嫌だと排除して…自分の見たい物だけを回りに集めて。そうやってマザーに大事に守られて生きてきたのですよね、そんな者たちに何が言えるというのです?けれど、答えが出たようです」
 ジョミーがそう言い終えた瞬間、キースの部下のミュウ部隊が突入してきた。
 そして、その後ろに続いて入って来たのはミュウの長、トォニィだった。
 ジョミーは空間に紛れるように消えていった。


「キース総督。大変です。外に…」
 海賊の旗艦を制圧したブリッジから通信が飛び込んできた。



   続く









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