☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド後編」※BL風味
※「伝えたい言葉」の冒頭にありましたが、こちらの方が合うので二章に持ってきました。
移動ついでに改稿しています。ジョミーの繰り返しがしつこかったのでちょっと変更しました。
「ね。いいよね」
「…それは…」
心が警鐘を鳴らしている。
けれど、彼の力に僕が抗えるはずもなく、僕は彼の手を取り身体を抱き起こす。
そして、静かに唇が触れ合う。
一度、ためらうように離れるが、次は舌を絡めて音を立て吸いあった。
(ジョミー)
シドの手が絡みつくジョミーの手を引き剥がした。
「シド?」
「ダメだ…。ジョミー…僕は」
不思議そうに見つめる彼を見返したシドの目には涙が光っていた。
「わ…わかっているんだ。僕は…ジョミー…僕は、ソルジャー・シンが好きなんだ。彼に認めて欲しくて求めているんだ…」
「……」
「わかってるんだ…僕は…ジョミーを羨ましいと…本当は妬んでいるんだ」
シドは下を向いて目をつぶりぐっと涙を堪えていた。
「妬む?」
「そう…そうだよ。ジョミー」
「……」
「彼は人からミュウになった。あのソルジャー・ブルーが彼をとても大事に扱ったのを僕は知っている。彼は人間で幼い時からの記憶を持ったまま、ミュウになった。人間なのに…最強のミュウで…。僕らを地球まで導いた彼。僕は嫉妬しながら、いつも憧れていたんだ」
「憧れていたの?」
「そうさ。僕が前からずっと好きだったなんて、嘘だ」
「嘘?」
「人と共に生きると言ってジョミーが船を降りた時、僕は何も言わずに見送ったんだ。なのに、キースの所に知った時から、心に黒い物が出来て、それがだんだんと大きくなっていった。…どうしようも無くなった時に、僕は彼を自分の物としようと思ったんだ」
「それは…」
「きっと、僕はソルジャー・シンがただの人間のジョミーに戻るのが嫌だったんだ」
「……」
「僕らは彼がものすごく苦労してソルジャーになって、そして何度も何度も迷いながら、戦ってきたのを知っている。ソルジャーとして、心を閉ざしてまで戦い続けて、地球にたどり着いたのに…。あの時、僕は止めなかった…僕は…それでも…」
「どうして?」
「彼のする事を願っていたなんて…嘘だ。ソルジャー・シンは休む事無く、ずっとソルジャーで居て欲しかったんだ。そう…死ぬまで…僕らの為に…僕らの側で…」
「死ぬまでなの?」
「悪夢のように…そんな呪縛で縛り付けて起きたかっただけなんだ。それを僕は愛してると言い換えたんだ」
「シド…」
「なんて、愚かで浅ましいんだろう…最初はただ認めて欲しかっただけなのに…」
「……」
「それを見抜いていたから、ジョミーは僕を受け入れなかった。友達のままでいたいと、ずっと言っているんだ」
「友達…」
「笑っていいよ。君にも僕は見破られているのだろうから…」
シドは愚かでも何でもない。
好きじゃなかった何て嘘だ。
きっととても心配してずっと見ていた。
その想いの行き先が決まってないだけだ…。
どの言葉で置き換えてもきっと…そこには…。
「ねぇ、シド。人が人を羨んで妬んでしまうのは、誰にもでもある事でしょう?」
「ああ、多分…」
「人にそうあって欲しいと願ってしまうのも罪じゃないよ」
「でも、僕は…」
僕はジョミーを必死になって忘れようとしている。
いつから…そう思うようになったのだろう…。
彼らが現れた事も、月で何も出来なかった事も、キースの所へ戻った事も、全てが…。
そうすれが楽になれると言ってくる…。
でも、それでも…。
「きっと…届かない思いだからだよ」
「……」
「ジョミーはシドを認めて、そして信頼をしていると思う。友達になりたいなんて他には誰にも言ってないよね。それが答えだと思うよ」
「…そう…」
「シドは…いい人だよ…僕は好きだよ」
「…ありがとう…」
シド…それでも…。
どうして…。
人は何かを求めてしまうのだろう。
僕は「人形」で、どこにも存在してはいけないのに…。
「……」
ふと、シドが違和感を感じて顔を上げるとジョミーが泣いていた。
「ど、どうして?僕に同情したの?なんで泣くんだ」
「どうしたら…いいのか…わからなくなっている…」
「何をなんだ?」
「妬むとか恨むとか、憧れるとか…僕はとてもわかるよ…シド…」
「なら何がわからなくなっているんだ?」
「人を好きになる方法が…」
「どういう?」
「妬むにも何もすべて…そこには愛がある…」
「妬むのも愛?」
「そう愛がある。ねぇ、シド。今の自分は好き?」
「自分?」
「うん」
「十年前の僕は自分に自信があった。けれど…ジョミーを見送ってからは自分が好きじゃなくなった。彼を取り戻せたら自分も好きになれそうな気がしてた。それは違っていた。それはわかる。だから…今は…」
「今の自分は好き?」
「少しだけね…。今はこうして忙しくしていた方が、きっと自分らしいんだろうね…」
「なら…良かった」
そう言ってジョミーは自分の涙をぬぐった。
「何故、泣いたんだ?僕を哀れんだのか?」
「ううん。僕と同じだと思って…僕は…ジョミーが嫌いなんだ。でも…大好きなんだ…」
「君はまだ子供でこれから色々知っていく。そうして悩んで泣いて大きくなってゆけばいいさ」
「ジョミーが言うような言葉だね…」
「僕は彼が好きなんだから、同じような事も言うさ」
「さっきは違うって言ったのに調子がいいな…」
「大人だからね」
「大人?大好きで大嫌いなんでしょ?そんな事言うのが大人とは思えない」
「違うよ、大嫌いで大好きなんだ…」
「そこ、意味あるの?」
「ああ、あるよ…」
とシドが笑った。
「ふーん」
ジョミー・マーキス・シンは特別な存在だ。
彼は守られなくてはならない。
それは、ソルジャー・ブルーの言葉。
僕はきっと…その言葉を頼りにして、そしてその言葉に反発して…。
そろそろ、その呪縛から僕も解き放たれよう。
ジョミー…君は自らの手で僕らからの呪縛から抜け出した。
でもまだ少し…時間を下さい…。
「ジョミー。起きれる?」
シドはジョミーに手を差し出した。
「大丈夫」
ジョミーはシドの手をかりてベッドから下りた。
「ほら、君の悩みの種が探しに来たよ」
シャトルのモニターをシドが指さして言った。
モニターにはソルジャーズのブルーが映っていた。
「大好きで大嫌いな、彼が」
終
『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 番外編「シド後編」※BL風味
※「伝えたい言葉」の冒頭にありましたが、こちらの方が合うので二章に持ってきました。
移動ついでに改稿しています。ジョミーの繰り返しがしつこかったのでちょっと変更しました。
「ね。いいよね」
「…それは…」
心が警鐘を鳴らしている。
けれど、彼の力に僕が抗えるはずもなく、僕は彼の手を取り身体を抱き起こす。
そして、静かに唇が触れ合う。
一度、ためらうように離れるが、次は舌を絡めて音を立て吸いあった。
(ジョミー)
シドの手が絡みつくジョミーの手を引き剥がした。
「シド?」
「ダメだ…。ジョミー…僕は」
不思議そうに見つめる彼を見返したシドの目には涙が光っていた。
「わ…わかっているんだ。僕は…ジョミー…僕は、ソルジャー・シンが好きなんだ。彼に認めて欲しくて求めているんだ…」
「……」
「わかってるんだ…僕は…ジョミーを羨ましいと…本当は妬んでいるんだ」
シドは下を向いて目をつぶりぐっと涙を堪えていた。
「妬む?」
「そう…そうだよ。ジョミー」
「……」
「彼は人からミュウになった。あのソルジャー・ブルーが彼をとても大事に扱ったのを僕は知っている。彼は人間で幼い時からの記憶を持ったまま、ミュウになった。人間なのに…最強のミュウで…。僕らを地球まで導いた彼。僕は嫉妬しながら、いつも憧れていたんだ」
「憧れていたの?」
「そうさ。僕が前からずっと好きだったなんて、嘘だ」
「嘘?」
「人と共に生きると言ってジョミーが船を降りた時、僕は何も言わずに見送ったんだ。なのに、キースの所に知った時から、心に黒い物が出来て、それがだんだんと大きくなっていった。…どうしようも無くなった時に、僕は彼を自分の物としようと思ったんだ」
「それは…」
「きっと、僕はソルジャー・シンがただの人間のジョミーに戻るのが嫌だったんだ」
「……」
「僕らは彼がものすごく苦労してソルジャーになって、そして何度も何度も迷いながら、戦ってきたのを知っている。ソルジャーとして、心を閉ざしてまで戦い続けて、地球にたどり着いたのに…。あの時、僕は止めなかった…僕は…それでも…」
「どうして?」
「彼のする事を願っていたなんて…嘘だ。ソルジャー・シンは休む事無く、ずっとソルジャーで居て欲しかったんだ。そう…死ぬまで…僕らの為に…僕らの側で…」
「死ぬまでなの?」
「悪夢のように…そんな呪縛で縛り付けて起きたかっただけなんだ。それを僕は愛してると言い換えたんだ」
「シド…」
「なんて、愚かで浅ましいんだろう…最初はただ認めて欲しかっただけなのに…」
「……」
「それを見抜いていたから、ジョミーは僕を受け入れなかった。友達のままでいたいと、ずっと言っているんだ」
「友達…」
「笑っていいよ。君にも僕は見破られているのだろうから…」
シドは愚かでも何でもない。
好きじゃなかった何て嘘だ。
きっととても心配してずっと見ていた。
その想いの行き先が決まってないだけだ…。
どの言葉で置き換えてもきっと…そこには…。
「ねぇ、シド。人が人を羨んで妬んでしまうのは、誰にもでもある事でしょう?」
「ああ、多分…」
「人にそうあって欲しいと願ってしまうのも罪じゃないよ」
「でも、僕は…」
僕はジョミーを必死になって忘れようとしている。
いつから…そう思うようになったのだろう…。
彼らが現れた事も、月で何も出来なかった事も、キースの所へ戻った事も、全てが…。
そうすれが楽になれると言ってくる…。
でも、それでも…。
「きっと…届かない思いだからだよ」
「……」
「ジョミーはシドを認めて、そして信頼をしていると思う。友達になりたいなんて他には誰にも言ってないよね。それが答えだと思うよ」
「…そう…」
「シドは…いい人だよ…僕は好きだよ」
「…ありがとう…」
シド…それでも…。
どうして…。
人は何かを求めてしまうのだろう。
僕は「人形」で、どこにも存在してはいけないのに…。
「……」
ふと、シドが違和感を感じて顔を上げるとジョミーが泣いていた。
「ど、どうして?僕に同情したの?なんで泣くんだ」
「どうしたら…いいのか…わからなくなっている…」
「何をなんだ?」
「妬むとか恨むとか、憧れるとか…僕はとてもわかるよ…シド…」
「なら何がわからなくなっているんだ?」
「人を好きになる方法が…」
「どういう?」
「妬むにも何もすべて…そこには愛がある…」
「妬むのも愛?」
「そう愛がある。ねぇ、シド。今の自分は好き?」
「自分?」
「うん」
「十年前の僕は自分に自信があった。けれど…ジョミーを見送ってからは自分が好きじゃなくなった。彼を取り戻せたら自分も好きになれそうな気がしてた。それは違っていた。それはわかる。だから…今は…」
「今の自分は好き?」
「少しだけね…。今はこうして忙しくしていた方が、きっと自分らしいんだろうね…」
「なら…良かった」
そう言ってジョミーは自分の涙をぬぐった。
「何故、泣いたんだ?僕を哀れんだのか?」
「ううん。僕と同じだと思って…僕は…ジョミーが嫌いなんだ。でも…大好きなんだ…」
「君はまだ子供でこれから色々知っていく。そうして悩んで泣いて大きくなってゆけばいいさ」
「ジョミーが言うような言葉だね…」
「僕は彼が好きなんだから、同じような事も言うさ」
「さっきは違うって言ったのに調子がいいな…」
「大人だからね」
「大人?大好きで大嫌いなんでしょ?そんな事言うのが大人とは思えない」
「違うよ、大嫌いで大好きなんだ…」
「そこ、意味あるの?」
「ああ、あるよ…」
とシドが笑った。
「ふーん」
ジョミー・マーキス・シンは特別な存在だ。
彼は守られなくてはならない。
それは、ソルジャー・ブルーの言葉。
僕はきっと…その言葉を頼りにして、そしてその言葉に反発して…。
そろそろ、その呪縛から僕も解き放たれよう。
ジョミー…君は自らの手で僕らからの呪縛から抜け出した。
でもまだ少し…時間を下さい…。
「ジョミー。起きれる?」
シドはジョミーに手を差し出した。
「大丈夫」
ジョミーはシドの手をかりてベッドから下りた。
「ほら、君の悩みの種が探しに来たよ」
シャトルのモニターをシドが指さして言った。
モニターにはソルジャーズのブルーが映っていた。
「大好きで大嫌いな、彼が」
終
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