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『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十二話「人類の答えとミュウの答え」

2012-12-15 00:53:18 | 『君がいる幸せ』Artemisia編二章 心の中は
☆アニメ「地球へ…」の二次小説です。
<人物>
ジョミー キースの警護をしていたが今は教育ステーションに在学中 ジュピターは宇宙の軍を動かせる権限を持っている
キース・アニアン ノアの首相 人類の評議会議長を兼任
ソルジャーズ 人類が作ったブルージョミーのクローン(タイプブルー)
シド ミュウの優秀なパイロット シャングリラのキャプテン 今はジョミーの専属

   『君がいる幸せ』 Artemisia編 二章「心の中は」 十二話「人類の答えとミュウの答え」

  海賊の旗艦 ・戦艦ゼウス
「では、これが全部、民間船だというのか?」
 海賊の旗艦の艦橋でパネルに浮かぶ無数の青く点滅する光を見ながらキースが言った。
 その青い点滅はパネル全体を埋めそうな勢いで増えていた。
「そう。これがお前たちの出した答えだ」
 トォニィがソルジャー服の緑のマントを翻しながら上にあるパネルを指差し答えた。
「お前たち?どういう事だ?」
「この戦いが始まってすぐにジョミーはあのブレスを使い、ソルジャー・シンの名で人類に問いかけをしたんだ。人類同士が戦うこの戦いを認めるか認めないかを。それで、認めないなら、止めたいのなら。この東の空域に来てほしいと言ったんだ。それで集まってきた民間船をミュウがこの空域に運んだ」
 そのやり方は、大戦中に人類が一度答えを出しているあの方法と同じだった。
 ジュピターのブレスの能力を変換させて軍事施設以外へとそれを発信させ、敵だったミュウのソルジャー・シンが人類の未来を問う。
 それは、それに答えてくれる人類がいるかどうかすら確信の持てない賭けだ。
「それで。ここからが問題だ。人類の総督、キース・アニアン」
「……」
 キースは増えてゆく青い点とトォニィを見た。
 トォニィはキースとそこにいる人間をザッっと見てからゆっくりと言った。
「この戦いはこれで終わりではないよね?お前が恐れていた事が今から始まるかもしれない。しかも、お前たちの手でそれを起こすかもしれない」
「回りくどい言い方はしなくていい」
「了解だ。キース。僕もそういうのは好きじゃない」
「……」
「お前らのこのバカげた戦いを今すぐに放棄する事を提案する。将軍の問題とお前の問題は今は棚上げにしろ。いいか。この無数の青い点。ここに来た戦わない民間船を一隻でも沈めたら、軍部、海賊を問わず全てを殲滅、いや消滅させてやるから、そのつもりで対応してほしい」
「…停戦どころではないな…」
「ああ、そうだ。脅しじゃないよ…。これがお前たち人類が出した答えだからね。もちろん、僕らも君たちの撤退に手を貸そう。でないと接近し過ぎて動けない船も多いからね。出来たら戦艦なんかここに捨てていってくれると嬉しいんだけど」
 今にも戦艦を力で投げ捨ててしまいそうな笑みでトォニィが言った。
「わかった。停戦及び撤退を命じよう。我々は民間船の安全を最優先にして帰港する。そしてこの事は、海賊にも徹底させる」
 キースの指示に従い東の空域はその緊張を解いていった。
 海賊もクリスティナの指示でその陣形を崩した。
 青い点滅もその数を減らしていった。
 その間、トォニィは何も言わずにただ見つめていた。
「トォニィ。私はゼウスに戻る。将軍をペセトラに送らなくてはならない」
 一通りの指示を終えたキースが旗艦ゼウスに戻ると報告をしてきた。
「それは…。僕に何か将軍に言えって事?」
「いや、そうではないが…」
「色々な恨みつらみを晴らさせてくれるつもりがあんたに無いなら、僕に会わせない方がいいよ」
「ははっ、それはお前らしいな」
「ジョミーなら…なんて言うだろうって思ってる?」
「いや、きっと…お前と同じだろう」
「…どうだろうね…。ジョミーの方が僕より怒っているよ」
「…かもな…」
 そう言って艦橋から出てゆこうとしたキースにトォニィが声をかけた。
「待って。あんたは、やっぱりジョミーと居ない方がいいんじゃない?」
「言葉が間違っていないか?」
「え…?」
「反対だろう?」
「…ジョミーが、あんたと居ない方がいいって言えって事?」
「……」
 キースはそれには答えずに微かに笑っただけだった。
「どっちも同じじゃないか?」
「それを、言うのがお前だから違うんだ」
「…僕はあんたを認めた訳じゃない…」
「ああ、知ってる」
「……」
「だが、今、俺を引き止めたのは、ジョミーが今何処に居るかを教えようとしたのだろう?」
「確かにそうだけど…」
「……」
「だって…もうあんたしか…じゃないか…」
「……」
「…傍に…いてって…」
 そこで憮然としたトォニィはキースから目をそらし、真横をギッと睨んだ後、もう一度キースを睨み据えた。
「いいか。キース・アニアン!一度しか言わないからな、よく聞けよ。これは、現ミュウの長からの要望なんかじゃない…命令だ。ジョミーがあんたに何を言おうと、拒絶されようと、今は絶対傍から離れるな。何があってもだ。もし、あんたにそこまでの度胸と覚悟が無いのならば。僕が何とかするから…お前は…もう二度と近づくな!」
「トォニィ…。悪かった…。君にそこまで言わせるとは、正直思わなかった。大丈夫だ。心配する事はない。俺は必ずあいつの傍にいる」
「もし、ソルジャーズのジョミーが死んでしまったら…本当にもう…取り返しがつかなくなるかもしれない…そうなったらあんたしか止めれない」
 トォニィはそこまで言うと俯いてしまった。
「なんで…こんな事に」
 ソルジャーズのジョミーは今はシャングリラへと運ばれたが予断を許さない状態のままだった。
 トォニィは必死になって涙を堪えていた。
「大丈夫だ。トォニィ。彼は、あのジョミーは死なない」
「…もう、僕たちはこんな悲劇なんか見たくないんだ。もう何とも戦いたくはない…誰にも死んで欲しくないんだ…」
「ああ、それは俺も同じだ」
 そう言うと、キースは艦橋を後にした。
 やがて小型艇がゼウスに向かって飛び立った。

「これで良かったのですか?」
 とトォニィに声をかけたのは、キースの部下でミュウ部隊のヴィーだった。
「今の事?この戦いの事?」
「あの、どちらもです。ソルジャー・シンをまかせるなんて事を言って大丈夫なんですか?それと、この結果は、ミュウはこれでいいのですか?」
「どちらも…か…。だったらどっちも良くは無いな…。でもさ、ジョミーも彼も、もう僕らは放っておいて良いと思うんだ。それから、僕らミュウは戦えないんじゃない。戦わないんだ。それなのに、僕がいつまでも好戦的なのは、ジョミーの為だ。だから…二人はもういいんだ」
「はい…」
「それと、こんな事をしたって、戦いに犠牲はやむを得ないのは承知している。この戦いだって、どこにも犠牲が出ていない訳じゃない。ただそれを最小限にしたいだけ…。ううん。そうじゃないね。一番良いのは戦わない事だ。そう誰もそんな風に死なないのが良いって、皆がわかっているのなら、僕らはそれを代弁しただけ…。僕らはね、過去の犠牲をもう振り返らないと決めたんだ。僕らはそんな絵空事を全力でやってゆく。それだけだ。それがミュウの答えだ」
「……」
「…君たちに戦わせておいて、何を言ってるんだろうな…僕は。それに、犠牲を振り返らないなんて…今、生死を彷徨っている仲間がいるのに…薄情だな…」
「いえ、僕たちはもう生まれながらの軍人ですから、気にする事はありません。それに、彼はキース総督が大丈夫と言ったのだから、大丈夫です」
「はは…。そうだね、ヴィー。ありがとう」
  トォニィはヴィーが自分を安心させるように言ってくれた心遣いを嬉しいと思った。




   続く







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