趣味の日記

観劇・歴史・小説・漫画などなど、思いつくままの語り日記

侯爵さま語り・その6

2013-03-13 23:42:47 | 観劇
いったいどこまで続くんだ・・・と思われるかもしれませんけど、やっぱり書きたいのでお許しを(爆)。
まぁ今のところ、ほかに書けるネタもないことですし(苦笑)。

「ブラック・ジャック」ということで、舞台にも、いかにも手塚漫画が思い浮かぶような演出がたくさん使われてました。
まぁ「ゴンス」は漫画そのままだとして(笑)、一番顕著なのは、二幕の医師連盟の場面。
ブラック・ジャック先生を審問するかのような配置で、バックにずらりと椅子と人が並んでいる。そして、非難の怒号を浴びせるのに「わー!わー!わー!わー!」と叫ぶところ。
いかにも、手塚漫画のひとコマらしい。
そしてそのあと、ピノコとトラヴィスの待ってるところへ、ブラック・ジャック先生が戻ってくる、その扉が開いた瞬間だけ、奥から「わー!わー!わー!」と洩れ聞こえてくる。
なんか、コマ割りの絵までが浮かぶんですね。
空港のシーン。たくさんの人が思い思いに行き交い、雑踏の声がさまざまに聞こえる。しかもその中に、「ゴンス!!」だけやたら聞こえてきたりして・・・(笑)。あれって絶対、コマの中で大きい吹き出しで描かれてるんですよね♪

そういった演出上の手法も手塚漫画だなぁと思いましたけど、実は侯爵さま設定も、なんとなく雰囲気は手塚作品っぽい。
宝塚なので、不老不死なんて言うと、ヴァンパイアとかお耽美系ファンタジーのイメージですが、ともみんの侯爵さまは、そうじゃない(笑)。
ヒトゲノムがどうの、タンパク質がどうの、遺伝子に特殊な構造があり、歳をとらないことになってる。それって、むしろSFチック?
手塚漫画で言えば、ファンタジーとSFの入り混じった「火の鳥」の領域?なんて思ってました。
遺伝子のせいで老いないだけで、侯爵さまは血も吸わないし、たぶん食事だって普通に摂るんだろうし、なによりもともみんですから、まず太陽がなきゃ生きていけないでしょうし(笑)。
「火の鳥」は重すぎて、私は原作を読むのを途中で挫折した身ですが(汗)、それでも、命と、生と死、そして愛についても、深く抉るように描いてるイメージで、むしろ侯爵さまって、そっちの設定に近いのかも。
壮大なラブシーンもありますし(爆)、正塚芝居の中ではかなり毛色が違って見えるんですけど、意外に手塚作品としてみると、そんな突拍子もなく違和感がある設定でもないのかな、という気はしました。
・・・とはいえ、やっぱり宝塚ですし、ともみんのキャラですから(笑)、重くなることなく、ロマンチックな正統派のハッピーエンドになったので、そこはちゃんと正塚先生が当て書きして下さって、ほんと良かったです。

「ブラック・ジャック」に欠かせないヒロイン、ピノコちゃん。
今回の舞台では、このピノコの存在が、全ての中心になってます。
ブラック・ジャック先生は、ピノコのために自分の存在意義を懸けている。
侯爵さまは、そのピノコの誕生に力を貸し、同時にピノコの‘生’に希望を見出し、自らの生きる意味を見つける。
カイトは、偶然ピノコの誕生に立ち会うことで、自分の‘命’を見つめ直し、人生に向かって歩き出す。
そのピノコちゃんを演じた桃ちゃんがまた、素晴らしかった。
ピノコは、ある意味ブラック・ジャック先生が創りだした存在。バラバラだった部品をつなぎ合わせ、人の形に組み立て、はめ込んだモノ。
その不思議な人形っぽさが、桃ちゃんのピノコにはありました。
パッチリと目を見開き、どこか作り物めいた表情と動きと声。なのに、あふれんばかりの生命力と、純粋ゆえの強さを持っていて、それがたまらなく切なく愛おしい。
‘影’のほうのピノコは、普通に生まれ、成長していたらそうなっていたであろう、本来あるべきピノコの姿なので、普通の生身の少女。
見た目からまったく違う存在だからこそ、桃ちゃんのピノコは、登場した瞬間、より異形で、本来の形からはかけ離れた、孤独な存在に見えました。
そのピノコが、歩き、言葉を覚え、人の心を理解し、相手を思いやることを覚えていく。
その成長を、きっちりと1年という区切りで描き、ラストシーンの誕生日につながっていたのが、とても綺麗に収まって、素晴らしかった。
桃ちゃんピノコの言動のことごとくが愛らしく、命の輝きに満ちていて、とても好きでしたが、何といっても最後の台詞「ちぇんちぇいも、たべゆ?」は、感動的で、毎度毎度ボロボロと泣かされてました・・・。
言葉も知らず、ただ自分の感情を相手の脳に直接送り込むことで自己主張していたピノコが、1年目の誕生日に、初めて、相手を思いやる言葉を口にする・・・。
それに対する、ブラック・ジャック先生の「あとでいいよ」が、限りなく優しく、慈しみにあふれていて、幸せなあたたかさで胸が一杯になりました・・・。

侯爵さまがピノコと直接絡むのは、二幕の冒頭のみですけど、ピノコの目覚めに自らの身体を提供したというだけでなく、ピノコの存在そのものが放つ‘生’の輝きを嬉しそうに見つめる侯爵さま自身が、ピノコから勇気と希望をもらって、カテリーナと幸せになりたいと、改めて感じたんだろうな、と思います。
そして、‘普通ではない’侯爵さまが、カテリーナと結ばれて幸せな‘生’を得ることは、同じく‘普通ではない’ブラック・ジャック先生やピノコの未来を、明るい希望で照らしていて、そのあたたかいつながりが、とても心地好かったです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする