趣味の日記

観劇・歴史・小説・漫画などなど、思いつくままの語り日記

侯爵さま語り・その2

2013-03-06 23:48:31 | 観劇
今回の正塚作品、私にしてはものすごくアンテナに引っ掛かった(笑)。
もともと正塚作品は嫌いなほうではないけど、のめりこんだり語りたいほど好きな作品も、そんなにあるわけではなく。
いつも正塚作品に関しては、あ~なるほどこうなってあ~なってこういうことだから、そういうことになるのね~と、自分の中でストンと納得できたらOKという感じ。
まぁわりと、私にとっては納得しやすい作風ではありますけど。
大野作品みたいに(笑)、そこがあ~だからこうなるのよ!!という語りモードまではなかなか行かなかった。
ところが今回、やたら語りたい衝動に駆られました(爆)。
・・・なんでだろう?と考えると、正塚先生の脚本が、計算されてるわりにかなり不親切で(苦笑)、ものすごく考えないと理解しづらかったのと、やっぱりともみんのお芝居によるところが大きい。
ともみんのお芝居は、通常の正塚作品とは、本来あまり相性が良いとは言えない系統(笑)。いや、全くできないわけじゃないんでしょうけど、でもやっぱり熱く大芝居になるのは、ともみんの基本仕様なので(笑)、そこが日常会話系を主流とする正塚芝居に合致しにくいのは仕方がない。
でも今回、正塚先生はそのともみんの特質を理解した上で、ちゃんと当て書きしてくださいました。
その代わり、ものすごくつくり込まないと成立しない、かなり難しい役どころになったのも確か。
そのともみんの侯爵さまが、ドンピシャ私のアンテナに引っ掛かったわけですね(爆)。
ともみんって、実は考えて考えて緻密にお芝居をつくっていく役者さんだなぁと、私は思ってるので、侯爵さまは、そんなともみんの役者魂を観られる、とてもツボな役でした。
ひとつひとつの台詞、ひとつひとつの表情、そのすべてにきちんと意味が込められていて、それを観る側で汲み取っていく作業が、大変だったけどものすごく深くて面白かった。
ほんと、ともみんのお芝居が好きだなぁぁと、改めて感動しました。

侯爵さまは、ブラック・ジャック先生と、カテリーナとしか、実は会話してないんですね(苦笑)。召使さんたちとのやり取りはあるけど、それはあくまでも主人と召使でしかないわけで。
限られた会話の中だけで、キャラを立てて、侯爵さまとカテリーナの物語として、作品の中で息づかなくてはいけない。
侯爵さまに説得力がないと、ブラック・ジャック先生との関係も、成り立たないですし。
それを言えば、カテリーナのせしるちゃんは、侯爵さまとしか絡まないですから、もっとさらに難解で大変だったと思うんですが(爆)。
でも、侯爵さまとカテリーナのエピソードが、実はブラック・ジャック先生とピノコの関係とリンクして、とても象徴的に描かれてるんですよね。
侯爵さまも、ブラック・ジャック先生も、ピノコも、それぞれ‘普通の人の社会’からは逸脱した、‘異形’の存在。
そこが、カイトとは違うところで。カイトは、‘普通の人’なんですね。先生に治療してもらったカイトは、「どこへ行くのよ?」とエリに訊かれて答えます。「まともに働いて、普通に暮らせるところ」と。
カイトは、平凡に、幸せに、当たり前の人として、生きていく。
でも、侯爵さまは違います。これからも、さらに長い時間を、ずっとずっと異形のまま、生きていかなければならない。
ブラック・ジャック先生も、ピノコも、‘普通ではなく’生きていく。
でも、侯爵様には、カテリーナという幸福を見出すことができた。生きていくことの素晴らしさを感じながら、カテリーナとの時間を、侯爵さまはきっと幸せに、大切に、生きることができる。
‘普通’でなくても、生きることは素晴らしいんだと、侯爵さまの存在が象徴していて、それが、ブラック・ジャック先生とピノコとの、これからの未来にも、明るい光を投げかけている。
空港からの帰り道、「お前は普通じゃない」とピノコに語りかけるブラック・ジャック先生。
でも最後に、平凡な「お腹が空いた」「そうだな」というやり取りに重なって、侯爵さまとカテリーナの結婚式が浮かび上がる。
それぞれが、それぞれの道で、生きて、幸福を見出せるんだと、その象徴的なシーンで、とても感動的でした・・・。

語りはおそらくまだまだ続きます(笑)。

コメント
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