とにもかくにも、私の大好きな歴史小説が、大好きな大野演出で舞台化ということで、ある意味夢が叶ったように嬉しい、今回の「阿弖流為」。
でもパンフを読むと、意外に大野先生、阿弖流為についてはあまり興味はなかったらしい。
上演が決まってから取材旅行に出掛け、実際の土地を歩き、話を聞き…。
でもそれで、きっちりと小説の要所を纏めているところは、歴史好きの感性なのでしょう。
田村麻呂の子嶋寺(ここは私も行ったことある)だの、明日香檜前の御園だの(檜前に御園地区?があるなんて、明日香に通ってる私も知らなかった)、超マニアックに調べあげているところもさすが。
叶わない夢だけど、一度でいいから大野先生とサシで歴史話をしてみたい…。
パンフに紹介されてる、片埜神社のお守りってのが、これ。
昔、私も行ったことあるので持ってます。
サエコさんが、謝先生主催のTSミュージカルファンデーションの「AKURO」に出演されたときに、阿弖流為をあれこれ調べてて、行ったんですね。
そもそもは大河ドラマの「炎立つ」から高橋克彦さんの東北シリーズにはまり、劇団新感線の「阿弖流為」以降ずっと阿弖流為好きですが、まさか宝塚で「火怨」を上演するなんて。
今回、音楽の玉麻先生や、振付の平澤さんとか、「AKURO」のときと同じスタッフが入ってるせいか、そのイメージも混じってる。
蝦夷の踊りとか、平澤さんのオタケをすごく思い出しましたもん(笑)。
電光スクリーンの多用は、「前田慶次」でもありましたが、使い方がより新感線チックになった(笑)かな。でも、名前紹介だったり、地図が出たりするのは、音だけ聴いている観客にはきちんと字で見る分、わかりやすくなるとは思う。
映像で表現された透明感は、私の好きな東北の風と大地の息吹みたいなイメージで、嬉しかった。この空気感があるのとないのとでは全然違う。大野先生も、わかってくれてるんだな~。
脚本は、さすがにあちこち飛ばしてあるけど、小説の要所は押さえて、うまくアレンジしてまとめてたんじゃないかと思います。
後半、戦に疲れるほど長く戦った(小説では20年間)ようには見えず、すぐに田村麻呂に降参したように見えるのが、ちょっと残念かな。降伏の狙いも、原作を知ってるとすんなりわかるけど、あのやり取りだけで初めて観る人がすぐ理解できるかな、とちょっと心配。
ラストの河内のシーンから、日高見へのシーンは、大野先生渾身の力作になってる。そりゃあね、ここを描かずしてどうする。
お芝居全体として、みんなちょっと肩に力が入りすぎ。
押しの芝居でガンガン怒鳴るので、観ていて疲れます。もっと引きの芝居がほしい。そうすれば、もっと伝わると思う。
その中で、せおっちの田村麻呂は良く頑張ってました。どっしりと、落ち着いて抑える芝居ができていたので、ラストシーンが引き立ちました。
こんなお芝居ができるようになったんだな~。
あと、母礼の綾君が、静の役柄としてすごく自然なのが良かったです。もっと引いたお芝居でもいいよ、というところもあったので、頑張ってほしい。
肝心の礼くんの阿弖流為が、とにかく力一杯なので、引くところをもっと引けるようになれば、さらに大きく懐深く見えるようになると思います。
原作のこの三人の`好い男´っぷりを、それぞれ頑張って役に注ぎ込んでほしいですね。
あと、ラストシーンのえま君の飛良手は、しっかり堪えてて正解。あのシーンのお芝居ができているので及第。
私のイチオシ役だった天鈴は、颯香君。本来なら、上級生の役でもおかしくないくらいですが、下級生ながら落ち着いて演じてたと思います。…でも、原作のあの渋くて切れ者なオジサマを、舞台で観てみたかった。
大野作品として、しっかりできているので、あとはそれぞれのお芝居力次第。
まだ始まったばかりですし、東京でもう一度観られるので、成長を楽しみにしたいと思います。