趣味の日記

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侯爵さま語り・その5

2013-03-12 23:52:20 | 観劇
まっつさんが、ことあるごとに「見所です!」と言って下さった、ソファのシーン。
ブラック・ジャック先生が、唯一、相手に対して本音をぶつけるところ。
そのお芝居の相手がともみんだったことが、とっても嬉しかった。
先生と、侯爵さまと、お互いが本音をぶつけ合うことで、それぞれがお互いの向こうに希望を見出し、理解と共感を得る。
友情とかいうのとはまたちょっと違った、対等な立場での心の交流というか、つながりの距離感が、面白くて、好きでしたね。

このシーン、侯爵さまは手術後で弱ってる状態。
そしてこのときだけ、いつも快活で若々しい侯爵さまが、どっと疲れたように老いたような口調。
でも私、この感じは結構気に入ってました。300年生きてるんですから、年齢不詳で当たり前。
普段は若くて真っ直ぐで純粋な侯爵さまが、一転、やっぱりちょっと人とは違う雰囲気が出るのが、このシーンでした。
侯爵さまの回復力の理由を訊ねたブラック・ジャック先生に、キッと目を向ける、その視線が鋭くて、ドキッとします。
でもそこで、拒否せずに説明をするところが、先生に手術してもらった恩というか借りがあるというだけでなく、やはり先生に対して、何かしらの共感するものがあったからじゃないかなぁと。
侯爵さまの告白に、先生もまた、すごく表情が動くんですよね。そりゃあ、ぶっ飛んだ話ですし(苦笑)、驚くのは当然として、それ以上に、生きる意味を見つけられずにいる侯爵さまの苦しみに対して、先生の言葉がどんどん熱を帯びていく。
でないと、まさかブラック・ジャック先生が恋愛相談みたいな助言をするはずがない(笑)。
‘何のために生きるのか’、生きる意志を持ちながら、自分の存在意義をずっと探しているという点で、侯爵さまと先生は共感するんですね。

侯爵さまの告白に対して、ブラック・ジャック先生も本心を打ち明けます。
「もう一人、貴方に助けてもらいたい患者がいる」と。
本当なら、ほかの誰にもそんなことは言い出せなかったでしょうけど、ピノコの‘生きたい’という願いを叶えるために、そしてピノコを生かすことで先生自身が‘生きて行く’ために、同じように‘愛する人と生きたい’と願う侯爵さまに対してだからこそ、打ち明けられた。
決して、侯爵さまの生命力が強いから、だけじゃないんですよね(笑)。
ブラック・ジャック先生は、こうも言ってます。
「確かに貴方の秘密を知れば、どんな医者も冷静ではいられないでしょう。貴方の存在は、医者にとっちゃ麻薬みたいなものですよ。
でもね、仮に貴方のおかげで助からない命を救ったとしても、それはそれだけのことだ。命には限りがある。その現実は変えられない」
人はいずれは死ぬんだと。医者として、どんなに人の命を救ったとしても、その命はやがて消えてなくなる。じゃあ何のために、命を助けようとし続けるのか・・・。
‘生きたい’と願う心。その思いを、誰よりもブラック・ジャック先生が知っているから。そして、その願いを誰よりも強く強く持っているピノコを、どうしても生かしてやりたいから。
だからこそ「私は手術をするときは、命を懸けるつもりです。それは同時に、私が生きるためでもあるんです」という言葉につながるんですね。
ピノコの誰よりも強い‘生’への願いのために、一度だけ、限りある命のことわりを覆して、侯爵さまに助けてもらいたい。そのことを、先生は必死に訴えてるんです。
‘何のために生きるのか’と、ずっと苦しんできた侯爵さまには、その‘生きる意志’そのものが、希望に見えたんじゃないかと。
ピノコがたとえ、普通の人の生から外れた存在でも、‘生きたい’と願い、それが叶うのであれば、どんな異形の存在であっても、‘生きて幸せになりたい’という思いをあきらめなくていいのだと、そんな望みを、侯爵さまが感じたのなら。
ブラック・ジャック先生と侯爵さまが、ピノコの存在を通して、共感したのは、そういうところだったんじゃないかと、思います。

青年館の千秋楽、ともみんの熱演もさることながら、それを受け止めるまっつさんのお芝居も、ものすごく熱くて、びっくりしました。
ともみんって、もともと熱いハートを真っ直ぐに相手にぶつけるようなお芝居をしますけど、まっつさんはこれまで、そういう相手とお芝居したことって、意外と少ないんじゃないかな。
音月さんとか、ほっくんとか、同期同士でのお芝居でのぶつかり合いとかはありましたけど、どちらかというとお二人とも、理性的なやり取りが多くて、感情のままに真っ直ぐドカンとぶつかってくる(しかもパワーもある)相手とのお芝居って、あまり記憶にない。
そういう意味でも、ブラック・ジャックという役柄もあるとはいえ、まっつさんが熱い感情を出してお芝居されてるのがとっても新鮮で、やはりご本人も手応えを感じでおられたから、「見所です」と言ってくださったのかな~なんて。だとしたら、嬉しいですね。
千秋楽の、あの熱い熱いお芝居。ともみんの熱さにも負けない、まっつさんのあれだけの熱いお芝居、本当に素晴らしくて、観られて良かったと、心から思います。

コメント (2)
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