星を見ていた。

思っていることを、言葉にするのはむずかしい・・・。
良かったら読んでいってください。

ひとり

2007-11-24 14:53:28 | つぶやき
寒いね。

寒いと余計に寂しくなるのは何でだろう。

寄りかかっちゃいけないって、分かっているけれど、

時々ものすごく孤独を感じる。

そして、私は、ひとりだと思う。

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天使が通り過ぎた(7)

2007-11-24 03:41:51 | 天使が通り過ぎた
 新幹線は静かに発車をした。私が降りる駅までは2時間ほどだった。そこから在来線に乗り換えてさらに数時間行ったところの、山の奥にあるような温泉に行くのが目的だった。通彦とは車で行くつもりだった。ドライブが好きな通彦が好むような、くねくねした山道を行った奥に温泉があるとのことだった。けれど直前にああなってしまったので、遠くまで車を運転することができない私はこうして電車に乗ってやってくるしかなかった。

 やり直すことはできない、と通彦に言われたあと、私たちのテーブルは沈黙が支配していた。私が洟をすする音と、その洟をかむ音と、相変わらずぼんやりと掛かっている環境音楽だけが聞こえた。私たち以外のたった一組の客は、もう食事を済ませ少し前に帰っていた。時折皿を下げに来るウェイターには当然私のこの惨状が目に入っているはずだったが、彼は当たり前だが見て見ぬ振りをしていた。そのうちに食後に頼んだコーヒーが出てきた。私の体は冷め切っていた。顔だけが、泣いて始終洟をかんでいるせいか火照っていた。頭ががんがんした。コンタクトレンズは涙のせいで曇っていたし、泣いているせいで瞼は腫れぼったい感じがした。通彦はもう何も言うことはないというようにむっつりとしていて、明らかにこの時間を持て余していた。私はコーヒーを一口飲んだ。少し落ち着くのではと思った。カップを持った指先が少し温かくなった。もう一口飲んで、ここから家まで帰ることを考えるとこのへんで泣くのを止めなくてはと思った。

「いいよ。お待たせ。帰ろう。」
コーヒーを飲んで少し気分を落ち着かせた私は、半ば自分に言い聞かせるように言った。通彦は待っていたと言わんばかりに、さっと上着を着て荷物を椅子から持ち上げた。その時私が今日持ってきた紙袋に気が付いた。
「これは返すよ。」
 私は通彦のためにそのネクタイの柄を選んだのだ。今日は着ていないけれどいつも着ている定番のスーツに合うように色も柄も選んだのだ。それに、私が持っていても仕方が無い。
「いいよ。私がネクタイ持っていても仕方ない。」
 彼はネクタイなのか、と呟いて一瞬考えた。だが「いや、こんなことになって貰うわけにはいかないよ。お父さんとかにあげればいいじゃないか。」と言いながらこちらに返してきた。そのやりとりの数秒の間に、やはり通彦には彼女が出来ていて、その彼女のためにもこれは貰うわけにはいかないのだろうか、などという考えが浮かんだ。そして抑えていた涙がまたあふれ出そうになった。
「わかった。返して。」
 少しつっけんどんに言ってしまった。通彦はくしゃくしゃになった紙袋をこちらに突き出した。「悪いな、せっかく買ってきてくれたのに。」言いながらそれはちっとも悪そうに聞こえなかった。それほど私とはもう関わりたくないのだなということが逆にはっきりと分かった気がした。
 
 そこからどうやって帰ったのか、あまり記憶が定がでない。いや帰り道はいつもの通勤経路と一緒なのだから当然いつものように帰ったのだが、そして頭の中は通彦と出会ってからの様々なことを思い出していたのは間違いないのだが、どうも現実のこととしてうまく思い出せない。もう通彦には二度と会えないのだということで頭がいっぱいになっていて、そして頭の中とは別に、体が勝手にいつもの道順を機械的に帰っていったという感じだった。金曜の夜10時過ぎの電車はそこそこ混みあっていた。いつもと同じ電車に乗り、いつもと同じような車内の情景を見ながら、ここで涙を流してはいけないと、それだけに気をつけた。あっと気が付いた頃には家の最寄り駅からタクシーに乗っていた。タクシーに乗って行き先を告げると、もうここは公衆の面前ではないという意識が無意識に働いたのか、どっと涙が溢れ出た。だが暗い車内の中、涙は静かに流れていたので、運転手は何も気が付かなかっただろう。
 
 家に帰り着くと、まだ起きていた母親にそっけない挨拶だけして自分の部屋に急いで入った。泣き顔を母に見られると詮索されることは間違いなかった。私はネクタイを買うときにさんざん母にあれこれ言っていたので、母は今日私が通彦の誕生日のために会っていることを当然知っていた。
「あら思ったより早かったじゃない。」
 いつもなら遅いと文句を言われるのだが、私がこんな時間に帰ってくるので何かを感じたのかもしれない。今の私にはそれが嫌味のように聞こえた。私は今誰にも話しかけられたくなかった。部屋に直行するとただもうやる気が起きなくて、化粧も落とさずに布団にもぐってそのまま泣きつかれて眠ってしまったのだった。

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コメント (2)
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