ゆっくり読書

読んだ本の感想を中心に、日々、思ったことをつれづれに記します。

くるくる

2011-04-23 13:40:50 | Weblog
トイレで繰り広げられるOLの話は、独特だ。
そして、特別な時間が流れている。

トイレという場所自体は、公共の場なのに、
女性社員が2人以上いると、3人目に訪れた人は、
たとえそこで、前の2人のあいだに現在進行形の会話がなかったとしても、
一種閉鎖的な空間に感じる。
「あ、私が来たから、話をやめたのかな」と、まず気配をさぐる。

そして、引き返すこともあれば、そのまま仲間に入ることもある。
同じ女性だからといって、誰でも参加できるものではない。

先日トイレに行くと、たまたま私が比較的話をする2人が先客でいたので、
しかも「お~」という感じで迎えてくれたので、入ることにした。
そこでしかできない質問もある。
まず最初は、さしさわりのないと思われる会社の構造について質問してみた。
ある意味、お決まりのステップを踏むと、
そこからは垣根がなくなるので、話もはずむ。

そして、ある社員の話になった。
その人は、自分自身の基準において、上だと思う人に対してはとても気をつかうけれど、
下だと思っている人には、かなりぞんざいな態度をとる。
もちろん、私は派遣社員だから下だと思われている。
あと個人的に私のことを好きではないという理由もあるのだろうが、
最近は「おはよう」「お先に」も無視されるようになった。

一時期、職場に他の派遣さんがいたころは、外で悪口を言いそうな人がいたので、
それでも比較的ソフトにしていたようなのだけれど、
私ひとりに戻ってからは、以前のように、また完璧になめられるようになった。
きっと「派遣社員なんだから、身の程をわきまえろ」ということなんだろうけど、
周囲の人も、その人のそんな言動には、常日頃からうんざりしているらしいことがわかった。

結局のところ、
自分より上、自分より下という判断基準は、自分のなかにしかないことに気づいていない。
気づいていないからこそ、当然だと信じている。
そして、自分は上をたてて偉いと思っている。
それに、上下の基準があまりにも即物的だ。
という三拍子揃っているから、小さい人間だとバカにされるわけだ。

そんな話をしていたら、冗談半分で「部長にチクっちゃえ」と言われて、
そうか。上を味方につけるって方法もあったな、と思った。
面倒で恨みをかいそうだし、バカらしいからやらないが。

こんな話は、どこの会社に行ってもあることだけれど、久しぶりで結構楽しめた。
上昇志向の強い男性は太鼓持ちになる。
女性の場合は、上司のおじさんをうまく操るようになる。
いまの20代はまた違うロジックで動いているかもしれないけれど、
30代中盤より上の世代では、よくある話だ。

ふと思い出したのは、「くるくるさん」と呼んでいた上司のこと。
バブル期の入社で管理職になった学歴の高い女性の上司がいた。
彼女がいまの私くらいの年齢だったころ、髪の毛にパーマをあててきた。
仕事をせずに、ネットを見ながら髪を指でくるくるしていたから、「くるくるさん」。
髪がないところで、指に髪を絡める仕草をすると、
自分の頭を「くるくる」とやっているように見えるので、この真似は、なかなか気に入っていた。

若いころは仕事熱心だったようなのだけれど、
棚ぼたっぽく課長になったころから、彼女はまったく仕事をしなくなった。
もちろん弊害があるわけなので、私をはじめ数人が部長に「なんとかしてよ」と訴え、
他部署からもチクリとさしたが、部長は課長をかばうことしかしなかった。

で、飲んでたときに、男性の同僚が、
「あれはね、男としての弱みを握られているに違いない。むかし、できてたんだよ」と。
私が「え~。だって2人とも家庭があったじゃん(女性は離婚した)。
それに、どうせ不倫なんだったら、もっと選びようがあるでしょう」と。
で、同僚が「わかってないな~。男としては、あの人とやっちゃったということが恥なんだよ。
いい女だったら、もっと堂々としてるって。
それに真の意味でいい女だったら、こんなドロドロしてるとは思えないでしょ」と。

本当にできていたかどうかはわからない。
私はいまでも「できてなかった説」に一票を入れている。
でも、いま改めて思い返してみると、すごい真理がたくさん詰まった会話だった。

そして、自分のことを思い出すと、
私は直属の上司に、一人として心を開けたことがなかった。
唯一の女性の上司にもそんな感じだった。
正面から向き合うのはおろか、上司を利用しよう、という感覚も乏しかった。
原因は、すごいファザコンと、筋金入りのマザコンにあるのだろう。

いまも部長は好きだけれど、課長は業務上困ると思うことが多い。
というか、課長に話していて埒があかないのを見かねて、
部長が介入し、解決しようとしてくれるから好きなんだけど、
もし課長が女性だったら、またものすごく面倒だったろうと思う。

ただ、少しずつ、業務としてシンプルに遂行するという立ち位置はわかってきた。
だからやはり、会社や組織にではなくて、プロジェクトにコミットしていく、という方向で、
やっていくのがいいんだろう。
でも、やはり私は、仕事で決定権を持っている人が好きかどうかに、
ものすごく影響されるんだよなあ。
女性ですから。