(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

読書/『求めない』

2008-03-24 | 時評
読書メモ『求めない』(加島祥造 小学館 2007年11月)

~心がやすらぐことば~

 求めないーすると
 いまじゅうぶんに持っていると気づく

 求めないーすると
 いま持っているものが
 いきいきとしてくる

”求めないーすると”、で始まる短かい詩のような言葉で埋め尽くされた本である。詩人にして、フォークナーなどのアメリカ文学の翻訳も手がけている著者は、80才台半ばにして信州・伊那谷に独居し、詩作と著作をつづけている。あとがきの中で、こう云っている。

”2年ほど前の夏、突然私の胸中に「求めないー」で始まる語群が「次々と湧きだした。それは画室にいる時、林を歩く時、時には飯をつくっている時にも出てきたのです” そして四ヶ月のあいだに、こういう短句が150ほど、と短詞13篇がノートに記された。 それらをまとめたのが、本書である。

 「自分全体」の求めることは とても大切なことだ。
 ところが「頭」だけで求めると、求めすぎる。
 「体」が求めることを「頭」はおしのけて
 別なものを求めるんだ。

 じつは それだけのことなんです、
 ぼくが「求めない」というのは
 求めないですむことは求めないってことなんだ。
 すると
 体の中にある命が動きだす。
 それは喜びにつながっている。
 

さらにいくつかの言葉を見てみよう。

 求めないーすると
 人に気がねしなくなる

 求めないーすると
 自分の好きなことができるようになる

 求めないーすると
 自分の内なる可能性が動き出すよ
 そこがとても楽しいポイントなんだ

     ーーーーーーーーーーー

 ひとはなにも求めないなんてことはありえない。
 ひとはいつも、求めている。
 いつも求めてやまぬ存在だ。・・・・・

 ほんの五分間、いや三分間でいい
 なにも「求めない」でいてごらん
 為すことを無しにして
 全身を 頭の支配から解放してごらん

 できれば野原にあおむけに寝ころぶ。
 できれば海に大の字に浮いてみる。
 目は 浮き雲の動きを映すだけ
 耳は ただ音を受けいれるだけ
 口は 息の出入りにまかせている
 
 すると君は体が 命のままに生きていると知るー
 求めないで放っておいても 
 体はゆったり生きていると知る。


     ~~~~~~~~~~~~~~~~

たまには、こんな詩を読むのもいいなあ。。なにかのんびりしてくる。心が安らいでくるようだ。いつもあくせくし、あれもこれもと欲望の赴くまま、求めている私たち、現代の人間には、もっと心を平穏にすることが大切なように思う。

結びのことばが、心に響いてくる。

 ”人間とは、何かを求めずにはいられない存在です。この前提は否定しないのですが、同時に人間は求めすぎることを抑える時、自分の中のものが出てくるーということも生じるのです”


コメント
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