(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

酒のある風景

2023-04-22 | 日記・エッセイ
(酒のある風景)

 このところ家でよく飲むのは、浪乃音酒造の「金井泰一流純米大吟醸」であるが、それは最近のこと。それより以前に名古屋の銘酒(醸し人九平次)との出会いがあった。(記事の冒頭の写真が「醸し人九平次」)

 いつのことか忘却の彼方にあるが、あるとき京都駅南出口の道を挟んだところに「PHP研究所」という建物があり、そこで京都に詳しい作家の柏井壽(ひさし)さんの講演会がありあった。もちろん、いそいそと出かけた。なぜ柏井さんの話を聞きたかったかというと、そのころ彼は旅のエッセイを何冊も出されていて、それに紹介されている宿を訪ねて旅をして回っていたからである。話の主題は京都の料理について、であったように覚えている。その講演会に相方として出席されていたのが、「楽善柿沼」という小料理屋の主人であった。お土産として持ち帰った弁当が「楽善柿沼」製でとても美味しかった。では、その料理はどのようなものかと、好奇心の旺盛な私は、旬日を経ずして、いそいそと京都に出かけた。写真の小皿に盛られているのは、そのときに出された酒のあてであった。




 そして”お酒はどうされます?”、と聞かれ、”出して頂く料理にあったものをお願いします”、と言ったところ出されたのが「醸し人九平次」であった。聞いてみると、この酒は名古屋の「萬乗醸造」(名古屋市緑区)で作られている。


「醸し人九平次」を作っている「萬乗醸造」では、米の栽培から着手している。栽培時の植え付けの間隔を空けることで日照時間が増え、”重い米”が育つ。土壌にも凝る。兵庫県黒田庄は、愛知から遠く離れるがそこまで出向いて米を育てている。そこでは自社で稲作を行う。そうして作られた酒は非常にエレガントで舌を包み込むような旨味たっぷりの感がある。
 
 以来、この酒にはやみつきになってしまった。その後、福島へ出かけるようになり、会津の銘酒であるフレシュな香りの写楽/飛露喜/会津娘/会津中将などを愛好するようになった。これらの殆どは会津東山温泉の定宿(芦名」で供されてその味を味わった。

しかし京都で呑むときは今でも「醸し人九平次」。その大ファンである。

 せっかくなので、京都の店をもう一店語りたい。柳小路にある「そば酒、まつもと」である。ここは、四条河原町通りから、一本東に入った柳小路にある。そこには古い洋食屋や小料理屋があり、思わず立ち寄りたくなる。その中の一軒に「まつもと」がある。カウンターが七席しかなく、タイミングを逸すると満席になって入れないこともある。ここは「そば」の店なのだが、日本酒もあれこれあり、小料理の逸品も多い。鳥のたたきや、 菜の花と新海苔の和えものなどを摘まみながら日本酒を呑んでいるとそばが出てくる。こじんまりと小さい店だ。夕暮れになると店の灯がともり、風情が感じられる。


 せっかくなので、もう一軒。京都は高瀬川ちかくにある酒亭<招猩庵>。小さな店だが、二階もあって、四月頃そこで高瀬川を見下ろしながらシャンパングラスを傾けていると、桜吹雪が待ってくる。ここでも店を辞すると、店主が頭を深々とさげて、私たちが高瀬川の角を曲がるまで見送ってくれる。”また来ようと思うわけだ。


 次は神戸のお店。コロナも収束の気配が見えだしたので、ここのところ、神戸の小料理屋を食べ歩くようになった。

まずは山手幹線、ハンター坂にる「A」という店である。ここは、ミシュランなど幾つかののグルメガイドブックをみて、これぞと思うところをリストアップし、さらにそれらのウエブサイトをチェックして探し当てたものである。それらのウエブサイトを丹念にチェックし、店のオーナーの考え方などから、これぞと言うところに絞り込んだ。京都で店をチェックする時も、店主の対応などをみると、どのような店かが分かる。その結果から、やっと一軒の店を探し当てた。それが、「A」であった。

小振りのビルをエレベータで三階に上がるとカウンター六席、さらにその手前に椅子席が四席と二席がある。友人と訪れるときは、いつもカウンター席に座って、店主やスタッフと会話を楽しむこととしている。

 オーナー(料理人)は有冨巧治さん。2013年に店を開いて、もう13年ほどが経過し、ますます料理も洗練されてきた。旬の食材と、年中楽しめるすっぽん料理が特徴である。オーナーは、穏やかで寡黙だが、その笑顔を見ているとなんとも言えぬ親しみを感じる。

 
 (前菜)





 (デザート)


 料理には素晴らしいものがあるが、それだけではない。供された器も素晴らしく魅力的である。私の行きつけの京都の料理屋(押小路岡田)も器に凝っているが、どうも祇園にさほど遠くない古川町商店街にある店と連絡を取り合っていて、いい掘り出しものがあると、買い付けてくるようだ。Aでは、どうやって器を集めているのか、いつかオーナーに聞いてみたい。


宴も終わって店を出ようとすると、オーナーと若女将が、エレベーターの前で待ち構えており、エレベーターに乗り込んだ私たちに、深々と頭を下げて、お辞儀をするのである。

 店が三階にあるので、そういうことになるが、もし平屋の作りであったら、オーナーは、おそらく私たちの姿が見えなくなるまで、お辞儀をし続けているだろう。まさに、茶の心得で言う、余情残心である。

そのような客に対する姿勢は、もともと京都の料理屋で遭遇したものである。10年以上前のことになるが、姉小路近くの、その店で食事を終わって外へ出ると年老いた料理人が深々と頭を下げて、私たちをずうっと見送ってくれた。今は、その店はなくなってしまったが、オークラホテルの近く、高瀬川に出る前にある酒亭<招猩庵>でも、大将が店の前の通りを歩いて、次の角を曲がるまで見送ってくれる。わが街神戸でも、JR甲南山手を南下して二号線をすぎたところにある「焼肉 翔苑」でも若女将が、私たちが店を出ると、姿が遠くなるまで頭をさげて見送ってくれる。もともと美味い焼肉を食べられることもあって、”また来よう”と思うわけである。

 ここを出ると、足は自ずから不動坂にあるヤナガセに向かう。

(成田一徹さんの切絵集『To the Bar』 より)

このバーは、開店が1961年。私が会社に入ってまもないころである。三宮にある<マスダ名曲堂>でレコードを何枚も買って、その足でガスライトに向かった。初代のオーナー兼バーテンダーは、柔らかい微笑みを浮かべながら、私を迎えてくれた。そして先ほど買い求めたレコードの束を奥の棚にしまってくれた。一年ほどして、店を再訪すると、オーナーは、にこやかな笑みを浮かべながら、”お忘れ物ですよ”、と言ってレコードを手渡してくれた。
 今のオーナー(バーテンダー)は三代目である。しかしシェーカーを振る手つきは、初代のそれと変わっていない。そして、初めて訪れた折に初代のオーナーがつくってくれたカクテル「アドニス」を出してくれた。


 
 ここは、冬であれば店の奥に暖炉があり、ひのきの丸太が燃え、香り高い
煙が漂ってくるのである。ガールフレンドとでも行っていれば、恋の語らいをしたことであったかもしれないが、当時はまだ純情で、とうていそんなセッティングにはなり得なかった。


 さて次は、山手幹線の県庁前の道を北に上ったところにある「B」と言うお店である。これは山本通りを歩いていて、すこし東の方野坂を下りかけた時に、偶然見つけた。緑に囲まれた店構えに魅せられたのである。



 大将は、上野直哉さん。年の頃は、五十歳くらいか。案内されて店に入ると、大将の前の席(3~4席がある)、初めての客にたいしてもなかなかユーモラスな人でいつもにこにこしながら応対してくれた。メニューは、特にない。1品ものなど酒のあてがあるかもしれないが、、その日は、次々と料理を出してきた。他に、別なカウンターに男性ふたりという客がいたが、てきぱきと料理は供された。

 上野さんは、大阪「菊乃井」で村田吉弘さんについて学ばれたとか。そして思い切って神戸へ。そこで店を持つことになった。当初。アラカルトのメニューも考えた、神戸ではアラカルトを注文する客は少なく。フルコースを好む客ばかり。今は、コース一本に絞っている。。ただし、FaceBook]でも案内されているように、いわゆる酒のあてのようなものを各種取り揃えてて提供さる試みをやっている。これは、日中に限ってのようだが、人気を集めているらしい。一度、顔を出してみたい。

 上野さんがインスタグラムに広告を出して、新しくスタッフを募集した。それに応募した島本阿実江さんが採用され、今店に立っている。彼女はあまり前
面に出ず、控えめなスタッフだがなかなか感じのいい人である。序でであるが、FaceBookにも、料理のことや、時折気に任せてつくる品々のことを描いている。

 さて本論、供された料理は、(何故か写真が消失しているので、掲載できません。出てきたら、後ほど載せます。ご容赦ください)
                    
 ①前菜
 ②お刺身
 ③鳥取の天然のブリ(からすみの粉が振リかけてある)
 ④神戸ポーク肩ロース。と姫路の蓮根。
 ⑤河内の鴨、はまぐり、水菜とせり。
 ⑥淡路のはもしゃぶ。鍋に入れ、出汁で煮て食べる。」
 ⑦デザートとお茶

上野さんの料理は、「A」に負けず劣らずで美味極まりなし。店の雰囲気も気楽で、また行こうと言う気になる。特に、お昼は、酒のあてが充実していている。

 ”えっ、もういっぺん店(玄斎)に行きますか?” 行きたいねえ?客あしらいもいいし。美味い料理やあてを求めて、また大将との会話も楽しみたいし・・・。

お店にはおいていなかったようだが、「醸し人九平次」や「浪の音酒造の金井泰一流純米大吟醸」を知っているかなあ?


店を出れば満点の星空! よき料理、よき酒、よき友がいて、今日も幸せ、明日も幸せ!















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