(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

年の瀬のご挨拶

2021-12-22 | コラム
                冒頭の写真は、六花亭の花柄包装紙から(画:坂本直行氏)
ブログ 年の瀬のご挨拶 

 この一年拙文「緑陰漫筆」をお読み頂きありがとうございました。
来年も引き続き、よろしくご愛顧賜りますようよろしくお願い申し上げます。過ぎ越し一年の中で、心に残ることがいくつもありました。その中から、特に印象に残ったことを記してみます。お目通しいただければ幸いです。

 ①印象に残った音楽。

  若い頃の合唱の仲間から教えてもらった多田武彦の男性合唱曲「雨」には、しみじみとしたものを感じました。詩は、八木重吉。

  ”世のために働いていよう、・・雨が上がるように静かに死んでゆこう” 、というフレーズには感動を覚えました。ちなみに八木重吉の没後、その妻とみは歌人吉野秀雄と再婚します。吉野は、とみの没後遺骨の一部をと    みの墓にも収めています。

   →男声合唱(スターボーイズ)
    

 ②印象に残った本

  『2040年の未来予測』(成毛眞)
  これは本来、『おいしいいニッポン 投資のプロが読む2040年のビジネス』(藤野英人)と合わせて読まれるべき本である。前者は、20年後の日本を見据え、”今から10年後の日本は世界の5流国家にまで落ちぶれることはないが、高度成長期のような二桁成長は望めず、よくて横ばい、またGAFAのような企業が日本から生まれる兆しはまるでない・・・”、といわば悲観論を展開する。そして、”しかし最悪の状態を想定しながら、未来を描いておけば、あなたの人生 はそれよりも悪くなることはない”、という

  後者は、20年ほど前に外資系運用会社で働いていた著者は、当時は日本に対して絶望的な気持ちを抱いていた。当時のアメリカでは、ハーバード 大学やスタンフォード大学などを卒業した優秀な学生のトップ層は自分で 起業したり、ベンチャー企業に入ったりするようになっており、大企業を 選ぶのはさらに下の層でした。そして成功した起業家たちが後に続く起業家を支援することで、多用な新興企業が続々と誕生していったのです。一 方 、当時の日本では最優秀層は官庁か大企業に就職するのが当たり前でした。 日本が変化のない社会を選択していることは明らかであり、急激に変化してゆくアメリカの状況と比較すれば、日本の明るい未来を思い描  くことは難しかったのです。

  しかし、著者は日本の将来について明るい見通し持っている。それは、2000年頃にアメリカ起きたへんかと似たような動きが日本でも見られ始めているという。近年日本でもベンチャー企業が上場し、起業家が社会的   にも経済的にも成功するケースが増えている。また超優秀層の中で、大企業や官庁には目もくれず起業にチャレンジする人が目立ってきたという。  著者は2年ほど前に東京大学と京都大学のトップクラスのデータサイエンティストが集まる場に行き、そこで”最近、優秀な学生は大企業に行きたがらないて聞くけど本当?と尋ねた。するみんな口を揃えて、”当たり前じゃないですか!”、という。日本の大企業など眼中ないようだ。

  そのようなことを踏まえて、著者は①テクノロジーを実装できる企業は伸びる②在宅ワークや多拠点生活サービスで地域を活性化する③成長の必須要件となるダイバーシティについて語っている。



 ③印象に残った絵画

 以前本ブログでも紹介した吉田博という人がいる。大正末期から戦後にかけて活躍した洋画家・木版画家であった。米国でなんど出展しており、彼の名前は米国ではよく知られていた。太平洋戦争後、総司令官のダグラス・マッカーサーの夫人も下落合にある吉田のアトリエを再三訪ねている。その妻の「ふじを」もまた画家であった。明治40年の第一回文展3年連続入賞し、第四回文展では「神の森」で褒状も受けている。そして水彩画家として着実な成長を遂げていった。ここにある「窓辺の花」は、レースのカーテンを通して差す光を背後から受け、花弁を透かせて輝く花々を繊細に描写する。花瓶やテーブルに映る光と影の微妙な交錯も、見事に描きだしている。


         



 ④印象に残った紅葉


  この秋は、コロナもほぼ収まったことで、あちこちへ紅葉を愛でにいった。丹波の高源寺、京都の光悦寺や正伝寺などなど。しかし、振り返ってみれば、見事な紅葉は身近にあった。茅渟の海を見はるかす六甲アイランド の紅葉である。六甲山頂にある森林植物園のシアトルの森から天津の森へと続く道の紅葉も素晴らしい。でも、身近にある六アイの紅葉にも素晴らしいものを感じた。

   →六アイの紅葉


 ⑤印象に残った出来事

  ボジョレ・ヌーボー(新酒)の解禁日に合わせてフランスから送られてき たワインを飲む風習があります。今年は、11月18日でした。いつも出かける京都の小料理屋では、「酒樽ボジョレの会」と題して酒樽から新酒を注 ぐという粋なはからいがありました。大勢の仲間たちとヌーボーを味わったことでした。ワインのおかげで、いつもより、一段と口も滑らかになり、初めての仲間とも旧知のごとくお付き合いしました。

   →

  
 ⑥印象に残った言葉

  映画などの配信会社ネットフリックスについて、面白い話を聞いた。(日経のコラム「春秋」より。

  ”成長中の動画配信会社、米ネットフリックスもデータ分析の部署がある。新規採用候補者の中で最適な人材をどう選ぶか。ヒントを得ようと、すでに在籍する社員で特に優秀な人たちの共通点を探す。答えは音楽をこよなく愛する点だった。以降、面接では音楽への関心や楽器の経験を、それとなく探るようにしたそうだ。論理的思考が軸となる業務だからこそ、創造性や感受性が発想の差を生む。議論好きが集まる職場には、無口だが独自の視点で発言する人を加えたこともある。こうして多種多様な人が集まり異文化への理解が育ち、「イカゲーム」など非英語圏のヒット作に結びついた。”

 こんな発想は、残念ながら日本の企業では出てきませんね。


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次回のブログは、「歌人小高賢を偲んで」です。アップは、小寒の女正月の頃を予定しています。気長にお待ち下さい。

 みなさまどうぞ良いお年をお迎えください。
コメント (6)
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