(新)緑陰漫筆

ゆらぎの読書日記
 ーリタイアーした熟年ビジネスマンの日々
  旅と読書と、ニコン手に。

コラム 最近聴いた音楽(歌)

2021-05-01 | 音楽
最近聴いた音楽(歌)

 ごく最近、「You raise me up」という歌をYouTubeで聴きました。全くの偶然です。どんな歌かをご説明する前に、まず聴いてみてください。
(2010年 オランダのマーストリヒト市にて)

 いまひとつ風貌も冴えない中高年の男性が歌っています。歌詞の意味は、およそのところ、”心が疲れ果てた時に あなたが来て勇気を私に与えてくれる、そして荒波も乗り越えられる、そしてあなたは私を励ましてくれる・・”というほどの意味です。次第に歌のキーが高音に移ってゆき、この歌に感情移入してゆくのです。

声を張り上げることもなく、自然体で実にに伸びやかです。歌っているのは、オランダ人の歌手、マーティン・ハーケンスという人です。といっても本格的な歌手ではなく、あるオランダのテレビのオーディション番組で優勝してデビューしたとのことです。この「You raise me up」という歌は、色んな人が歌っています。ちなみに2006年のトリノ冬季オリンピックでは荒川静香選手がアジア人発の金メダルに輝きましたが、その時バックで流れたのが、「You raise me up」でした。

いろいろな人やヴォーカル・グループが歌っています。有名なのは、アイルランド出身のCeltic Woman という四人組の女性ヴォーカルグループ、またジョシュ・グローバンという男性四人組のヴォーカル・グループなどです。日本人では小柳ゆきがドラマティックな歌唱を見せています。

 後ほど、少し詳しくこの歌のことを述べますが、何か神のような存在が人間に力を与えてくれるような歌であると受け止めると、マーティン・ハーケンスの歌い方が最も心に深く染み入ってきます。決して力まず、のびやかに淡々と歌い上げています。

 この歌は作詞がブレンダン・グラハム(アイルランド)、作曲がロルフ・ラブランド(南ノルウエー)です。2002年に混声のデュオ「シークレット・ガーデンズ」がリリースしました。さらに女性6人の音楽グループ「ケルティック・ウーマン」が歌って知られるようになりましいた。

 歌の歌詞には。キリスト教の賛美歌を思わせるような要素を感じます。少し調べてみると、曲名の「You raise me up」というフレーズは、旧約聖書の詩篇の中に出ています。

 ”But you,Yahweh,have mercy me ,and raise me up・・”

you ,yahweh は神のことです。他にもいろいろキリスト教に関連した言葉があります。”stand on moutain ”、はキリストの山上の垂訓を思い起こさせます。これはは、新約聖書『マタイによる福音書』に出てきます。その他にも、いろいろ聖書の記述に関連する表現があり、現代的なクリスチャンソングとしての性格をあわせ持つもつものと受け止められています。


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


 ところで、この歌を聞いた時、私は、1980年代という遥か昔、東京は赤坂のあるピアノクラブで聴いた歌を思い出しました。それは、「You Light up my mind」という歌です。歌手パット・ブーンの娘でデビー・ムーンが歌って有名になりました。1970年代の映画「You Light up My Life」の主題歌です。これをデビー・ブーンが歌って1978年の第50回アカデミー賞歌曲賞を受賞しました。


 如何ですか。何となく「You raise me up 」と似たような感じがありませんか。

ここでは、神の存在と云うよりは愛しい人が、落ち込んでいる私を慰め、励ましてくれる。そのような受け止め方もできます。アメリカの場合、ほとんどの人がキリスト教となんらかの関わり合いがあるので、神のような存在を意識するひともいるかも知れません。

 この歌を聴いて、”落ち込んでいた自分が励まされたように感じた”、と感想をもらす人もいます。私自身、その頃は仕事でいつも悩みや問題を抱えていましたので、聞きたかったかも知れません。そのピアノクラブに行ったときは、いつもこの曲をリクエストしていました。

 この歌は、なんらかの形で「You raise me up」に影響を与えたかも知れません。

 それはともかく、「You raise me up」を聴いて、歌って見たくなりました。ただ、長いあいだ歌ってこなかったので声の声域が高いところまで伸びなくなっています。肺活量も落ちています。そこで・・・・ヴォイス・トレーニングを含めプロの個人レッスンを受けることにしました。師走の頃には、なんとかなるでしょう。それまでは、ワクチンを接種し、コロナウイルスをやつける納豆・赤ワインや黒酢を飲んで頑張ります!










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音楽 最近聴いた音楽~チェロの調べ

2019-02-24 | 音楽
音楽 最近聴いた音楽~チェロの調べ

 『私のレコードライブラリー』(共同通信社 1975年)という本がある。作家は、志鳥栄八郎。”音楽の楽しさを一人でも多くの人にわかってもらえるために書いた”と語っている。古今のクラシック音楽を取り上げ、それぞれの名曲の解説と推薦盤(当時は、LPレコード)が紹介されたもので、当時の私にとっては音楽の道標のようなものであった。上中下の三巻本であるが、その中にチェロの名曲として取り上げられているものは、わずかに4曲。サン=サーンスのチェロ協奏曲、ハイドンのチェロ協奏曲、ボッケリーニのチェロ協奏曲とベートーヴェンのチェロ・ソナタ第三番イ長調である。チェロが独奏楽器として活躍するようになったのは比較的遅い時期なので、わずかに4曲というのもうなずける。


(ハイドンのチェロ協奏曲)

 このうちの一曲、ハイドンのチェロ協奏曲を作曲したハイドンは、ボッケリーニと同じ世代で、バッハよりも後の時代の人である。したがってバッハの影響もなんらかの形で受けていたかも知れない。私がチェロの曲を好きなことを知った畏友K氏は、最近そのCD(ハイドンチェロ協奏曲第1番、第2番)を焼いて、わざわざ送ってきてくれた。それを手にして、すぐオーディオ装置にかけて聴いてみて、びっくりした。有名な無伴奏チェロ組曲を作曲したバッハよりも後の時代の人でもあるにもかかわらず、聞き慣れたバッハの曲とはまったく違った音色の演奏であった。チェロの弾き手は、鈴木秀美というチェリスト。彼の名前も聞いたこともなかった。モーリス。シャンドロンがチェロを弾き、カザルスがコンセール・ラムルーを指揮した演奏や、フルニエがラファエル・クーベリックフィルハーモニーと共演したディスクは聞き慣れたものであったが、この鈴木秀美のものはまるでバロック音楽かあるいは古楽器の響きかと感じたのである



 (ハイドン チェロ協奏曲第2番 フルニエ)


 それでどういうことなのだろうと、チェロのわが師匠に疑問を投げかけてみた。そしてその様子をK氏にメールで送った。

 ”彼女は、すぐハイドンの協奏曲の1番と2番とを弾いてくれました。それも、古楽器を弾くやりかたと、現代的なやりかたとで。それぞれ違うのですね頂いたディスクの演奏は古楽器を弾くようなやり方かと思いました。まず、弓の持ち方が違います。軽く持っています。また、音の出し方もやや弱音です。それから、ひょっとして・・と云っていましたが、チェロにエンドピンをつけていないのではないかとも。つけていないと、音は柔らかく甘めになります。”

K氏からは、次のような返事が返ってきた。

 ”CDについていた鈴木秀美の解釈文によると・・・「この演奏でのソロの部分では弦楽五重奏のような響きとなり、親密に室内楽的に語りかけるものとなった。解釈の仕方はいろいろあるが、全般的にハイドンのコンチェルトは譜面上のスラー指示がとても少なく、奏者は多くの箇所で細かいボウイングで微妙な表現を強いられる。例えば、二長調の第1楽章に現れる技巧的なパッセージの数々、走り抜ける感のあるハ長調の最終楽章などはにはスラーが殆ど無い。ゆったりとした両緩徐楽章にすら、小節線はおろか拍をこえるスラーさえ一度も与えられていない。楽譜から見えてくるのは、豪快なひきぶりや連綿として続く曲ではなく、軽やかな語り口の親しい会話と透明な響きである。ハイドンに関しては、一般的に私たちが「チェロ協奏曲」に対してもっている後期ロマン派的なイメージとはかなり違ったものと言わざるを得ない」”


     


 要は弾き方が違うのである。多分、楽器も違うのだろう。あとでわかったのだが、鈴木秀美という人は一般的なチェリストから転じてバロックチェリストとして活躍している。バロックチェロの巨匠であるアンナー・ビルスマに師事している。(私の好きなチェリストの一人) それから、エンドピンの問題であるが、鈴木さんの演奏風景をチェックしてみると楽器を膝の間に挟んで演奏している。エンドピンは使っていない。チェロにエンドピンを使うようになったのは少し後の時代であるようだ。ちなみに私の師匠はチタンのエンドピンを使っている。チタンは軽量であるが、純チタンではやわらかすぎるので合金製と云っていた。おそらくTi-6Al-4Vであろう。(チタン ロクアルミ ヨンバナ)さらに、これもごく最近分かったことであるが、古楽器(鈴木さんの使用しているような)では、ガットに羊腸を使っている。最近のチェロでは金属を巻いた弦である。音の違いに影響することは必至だ。


 いやいやすっかり専門的な話になってしまった。一般の方には面白くないのかも知れない。しかし、音楽の演奏家たちが曲の演奏の仕方だけでなく、楽器そのものを替え、弾き方を工夫し、場合によってはエンドピンの有無まで考えて、音楽を聴いている人たちの心に響くように工夫を凝らして演奏していることには、改めてプロ意識の凄さのようなものを感じた次第である。


     ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


(世界一音響効果が美しいサントリーホールでのコンサート)

          


 東京は赤坂アークヒルズにあるサントリーホールは、「音の宝石箱」と呼ばれるくらいで、世界一音響効果が美しいとされ、音楽愛好家などから高い評価を受けている。そのホールで、たまたまチェロのコンサートがあると聞いて、いそいそと出かけた次第である。

 チェリスト辻本玲、ピアニスト外山啓介の共演である。オケは東京フィルハーモニー(指揮、円光寺雅彦であった。

     

 
 辻本玲は若手ナンバーワンのチェリスト。エルガーのチェロ協奏曲ホ短調では、彼の弾き方はややおとなしく聞こえた。この曲は、なんといってもジャクリーヌ・デュプレのダイナミックな名演奏が耳に残っているせいか、余計にそう聞こえたのかも知れない。しかし、音色は甘くつややかであった。第一部のアンコールで彼が弾いたパブロ・カザルスの「鳥の歌」では、その実力が遺憾なく発揮され、実に美しい音色の調べが流れた。ちなみに1961年11月13日、この日カザルスはケネディ大統領に招かれホワイトハウスで「鳥の歌」をふくむ歴史的な名演奏を行っている。

「鳥の歌」の演奏 (パブロ・カザルス 1961年11月13日 ホワイトハウスにて)


 プログラムの第2部では外山啓介によるショパンのピアノ協奏曲第1番ホ短調の演奏があった。それも終わり、アンコール曲(ショパンのノクターン)も終わって、オケの団員たちと引き上げたその後。なぜか辻本と外山の二人が再登場してきた。二人は、東京芸術大学の同期生で仲がいいのである。吉本喜劇ばりのトークショーが繰り広げられた。そして本当に最後のアンコール曲として演奏されたのは、ショパンのチェロ・ソナタ第3番の第3楽章のラルゴであった。初めて聴いたが、実に美しい調べである。これを聞くことができたのは幸運としかいいようのない出会いであった。

   ショパンのチェロ・ソナタ3番 ラルゴ(ヤーノシュ・シュタルケルの演奏) (14分12秒から)
   ショパンのチェロ・ソナタ第3番 ラルゴ(ロストロポーヴィッチとマルタ・アルゲリッチの演奏) (20分15秒から)


外山啓介のピアノがチェロに寄り添うがごとく、そしてピアノが主旋律を奏でるときはチェロは音をやや抑え、まことに息の合った演奏であった。残念ながら、その演奏をこの記事の中でお聴きいただくことはできない。代わりにヤーノシュ・シュタルケルが弾いた演奏を動画でごらんください。。第三楽章のラルゴは、はじめから14分12秒辺りから始まる



この曲の演奏については、いくつか聴き比べてみました。CDで聴いたのはムスチスラフ・ロストロポーヴィッチとマルタ・アルゲリッチの演奏。またアマゾンMusicでは、平野玲音のチェロとぺーター・バルツアー(ピアノ)の演奏も見つけることができましたので聴いてみました。どちらも素敵な演奏でした。 注)アマゾンミュージックについて。アマゾンプライム会員ですと、無料で100万曲、無制限に聞くことができます。スマホでは、AppleStoreからアプリをダウンロードできます。そのうえで曲を検索したら、平野玲音の演奏が出てきました。平野玲音は、東京大学卒業後、ウイーンを拠点に活躍している知性派チェリスト。


 しかし、あの夜のサントリーホールでの辻本玲と外山啓介の演奏は、思い返しても見事なものであった。二人の音が溶け合っていた。そして、二人の協奏にとどまらず、あのホールでの臨場感を感じさせる音響効果が素晴らしいと感じた。たいていのオーディオ装置でこのショパンの曲を聴いても、ハイレゾウオークマンで聴いても、そしてもちろんiPhoneの最新型で聴いても、ひとつ物足りないものがあるとすれば、それは臨場感だ。やはり、ナマの音楽はいい!

 というわけで、サントリーホールの音響について少し調べてみた。サントリーホールのウエブサイトでは、ホールの特性をついて次のように紹介している。

 ”「サントリーホールの設計にあたっては「世界一美しい響き」を基本コンセプトに掲げ、第一線で活躍する指揮者や演奏家はもとより音楽を愛する各界の人々の意見が幅広く取りいれられました。大ホールは、日本では初のヴィンヤード(ぶどう畑)形式。全2006席がぶどうの段々畑状にステージ(太陽)を向いているため、音楽の響きは太陽の光のようにすべての席に降り注ぎます。音響的にも視覚的にも演奏者と聴衆が一体となって互いに臨場感あふれる音楽体験を共有することができる形式です。側壁を三角錐とし、天井は内側に湾曲させ、客席のすみずみに理想的な反射音を伝える構造です。客席はブロック分けされていますが、その側壁も反射壁として有効に活用されています。壁面の内装材にはウイスキーの貯蔵樽に使われるホワイトオーク材を、そして、床や客席の椅子背板にはオーク(楢)材をと、ふんだんに木を使用し、暖かみのある響きを実現。音響的な効果とともに、視覚的にも落ち着いた雰囲気を醸し出しています。」”

 では、このホールのどこの席で聞くのがよいのかということになるが、世の中には、好事家(こうずか)がおられる。”ぶらあぼ”(ブラボーから由来しているようです)というニックネームの音楽好きの方が、そのホールの音響特性をホールのブロック毎に詳しく検討されている。この場合の音響特性というのは、直接音と残響音の比率、音量、またそれぞれの楽器の音の分離などの観点からみた特性のことを指している。

 ”音の特性として、もう一つ注意しておきたいことがある。先ほどの例のように、ステージ上のピアノから出た音は同心半球状に拡がって行く(実際にはピアノの反響板が働くので楽器の正面方向に指向性があるが)。ひとつの方向として捉えるなら、音は直進する。ホールの各席からピアノが見えるなら、直接音は届くことになる。一方、残響音を含む音の集合体は、あらゆる方向から来る音波の混ざったものなので、空間を満たすように拡がる。従って、広い空間なら多くの音で満たされるが、狭い空間には音が物理的に少なくなる。サントリーホールでは、2階の奥の方に行くに従って座席のある床が高くなっていくため天井に近くなり、空間が狭められていく。また2階のLC・RCブロックがバルコニー状にせり出している下の1階席の辺りは天井がかなり低くなっている。”

そして

 ”【6】希望の席を確保するために/私が席を選ぶ理由
 このように、サントリーホールの音響の特性について見てきたわけだが、これで多少は席選びの参考になっただろうか。音楽を聴く上で、良い「音」であることが望まれるのは当然のことではあるが、この「良い音」というのもかなり主観的なもののようである。別の言い方をするなら「好みの音」が人によって違うということだ。残響音が長い方が「良い」という人もいれば、長い残響は音を「濁らせる」と言う人もいる。ステージからある程度離れて色々な楽器の音が程良くミックスされている方が良いという人もいれば、私のようにできるだけ近くでナマの音で聴きたがる人もいる。だからこそ、席の位置によって変わる音響特性を把握して、自分の好みの席を探すことになるのだ。最後に、席選びのポイントをまとめておこう(ただしあくまで個人的な見解)。

①音楽は「どの席で聴いても同じ」ではない
 そのコンサートを「聴く」か「聴かない」という選択肢で判断すること、つまり「聴く」のならどこの席でもたいして変わらないという感覚でいては、聴いた音楽の正しい評価はしにくいと思う。クラシック音楽の場合は、そしてサントリーホールの場合はとくに、どの席で聴くかによって、音楽そのものがまったく違った評価をされるほど聞こえ方が変わるのである。もちろん人それぞれの事情があるので、どこの席で聴いても差し支えはないのだが、ある程度はきちんと聞こえる席で聞かなければ正しい評価はできないと思う。

②録音された音楽との比較
 初心者が必ず陥る落とし穴がある。それはコンサートの演奏と録音された音源とを比較してしまうことだ。とくにオーケストラ音楽の場合、レコード・CDや放送用の録音はマルチ・チャンネルをミキシング編集している(ナマ放送であっても)。つまり音源を面で捉えているものを理想のバランスに近づけてステレオ2チャンネルに変換しているのだ。逆の言い方をすれば、これはこの世には存在しない聞こえ方をしているということである。コンサートホールでは、音源が「面」で、響いているのはホール全体の「空間」で、聴いている人は「点」である。私たちがコンサートを聴くということは、ホールのその「点」で「音」を聴くということであって、別の人は別の「点」で聞こえ方の違う「音」を聴いている。それに対して録音は、皆が同じ「音」を聴くということなのである。従って多くの場合、実際のコンサートの方が録音よりもバランスが悪く聞こえるのである。それなのに、録音ばかりを聴いて来た経験の持ち主が、ナマの演奏を聴いて「オーボエの音が小さい」だとか「ティンパニがうるさい」などと知ったかぶって論評するのはナンセンスである。”
 音にはうるさい私であるが、この”ぶらあぼ”さんの言われることには、いちいち同感する。

 もちろんS席がよいのであるが、その中でも位置によって違いがあると云っている。幸い、その夜は同行した友人が確保してくれた席はS席。2階のCブロックの最前列(2列目)の中央。ステージからは、少し遠いがチェロの最弱音がよく響いていて素晴らしい演奏を堪能することができ、音響特性からしても至福の一夜となった。


     ~終わり~





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音楽/エッセイ あなたと夜と音楽と

2014-02-13 | 音楽
読書/エッセイ あなたと夜と音楽と

 ずいぶんと音楽を~とくにクラシック音楽を~聞きこんできましたが、まだまだ聞いたことのない曲がたくさんあります。この年になって、そういう曲を掘り出すというか、出逢えるのはとても嬉しいことです。今夜は、先夜出会った曲にちなんで一筆、書いて見ました。余談ですが、この記事のタイトルは、あとで気がつきましたが、敬愛するジャズ・ピアニスト、ビル・エヴァンスのアルバムの題名なんですね。これはこれで素晴らしい
演奏です。いつもは、繊細なビル・エヴァンスがアップテンプなピアノで疾走する楽しい音楽を奏でています。ジャズのことは、またの機会に。


 さて今夜はシューベルトの歌曲「夜と夢」です。過ぎ去った美しい夜と夢に対するかぎりないあこがれを歌ったもので、多くの美しい歌曲をつくったシューベルトの作品の中で最も美しい曲ではないでしょうか。詩はウイーンの詩人、マテウス・カシミール・フォン・コリン。

 聖なる夜よ、お前は降りてくるのだね、
 夢たちもまた波立ってくるのだね、
 お前の月の光が、この空を抜け、
 人間たちの静かな心を抜けて下りてくるように
 彼らは聞き耳を立てる、喜び一杯に
 そして叫ぶ、夜が明けたとき
 戻っておいで、聖なる夜よ!
 甘い夢よ、帰って来ておくれ!


 Heil'ge Nacht,du sinkest nieder;
 Nieder wallen auch die Traume
 Wie dein [Licht]1 durch die Raume,
 Lieblich durch der Menschen Brust

 Die belauschen sie mit Lust;
 Rufen,wenn der Tag erwacht:
 Kehre wieder,heil'ge Nacht!
 Holde Traume,kehret wieder!

 
 この曲に出会った、きっかけはオンキョーのハイレゾ音楽配信サイトです。PCでダウンロードし、それにUSB TACと呼ばれるユニットを接続して、ちょっと上等なヘッドフォン(ゼンハイザー)で聞いています。CDよりも、遥かに高品質で臨場感のある音を楽しむことができます。近々、ソニーのHDDオーディオプレーヤーシステムに、音楽をPCからWiFiで飛ばして聴く予定です。

 この方法のお陰で、最近は、これまであまり知らなかった歌手や演奏家、作曲家の演奏や作品に触れるようになってきました。たとえばジャズヴォーカルの鈴木輪、ソプラノの森麻季、塚谷水無子のバロックのオルガン演奏、ポピュラー曲ではエルトン・ジョンの「黄昏の路」などなど。ただこの方法の欠点でもあるのですが、LPレコードについていたような詳細な曲や演奏家の説明がないのです。あっても少ない。しかし、それがまたいいところでもあります。何の説明も見ることなく、とにかく曲に集中する。それで、その曲を気に入ればいいのです。よく絵の展覧会に行くと、多くの人が、とくにおばちゃん連、先に解説のパネルを熱心に読んでいます。まず絵を見るのが先だと思うのですが・・。音楽も同じで、まずは聴くことですね。


(やっと本論です)
ダウンロードしたアルバムは「シャコンヌ」と題されたもので、長谷川陽子のチェロ、仲道祐子のピアノというデュオです。ヘンデルの歌劇「リナルド」の曲からはじまり、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番「シャコンヌ」などが収まっていますが、その最後を飾るのがシューベルトの歌曲「夜と夢とD827」です。わずか4分の短い曲ですが、チェロのゆったりと穏やかな調べにうっとりしました。夜寝る前に聞くと、心が落ち着いてきます。シューベルトは、なんと美しい曲を書いたのか、と感嘆します。演奏も透明感に溢れ、また静寂につながってゆくピアニッシモ! なんども繰り返し聴いていました。

     

 しかし、この曲は今まで知らなかったので、少し調べてみました。もともと歌曲なのです。かのジェラール・スーゼー(バリトン)とかリリック・ソプラノのエリー・アメリング、などなど多くの歌手が歌っています。あのフィッシャー・ディスカウも。プロフェッショナルは、本当にいい音楽を知っているんですね。そして嬉しい事に、この曲を聴き比べできるブログに遭遇しました。

<TaubenPosto~歌曲雑感>というブログです。歌曲好きの方が書いておられますが、フランツとの愛称があるだけで、詳しいことはわかりません。でも、素晴らしいブログです。クラシックの歌が好きな方は、ぜひのぞかれることをおすすめします。


いろんな人が歌ったり、演奏しています。この中で、ボクはソプラノのエリー・アメリングの歌、またバーバラ・ヘンドリックスの歌に加えやはりフィッシャー・ディスカウの歌が好きです。

 (突如、関西弁で)それがですねえ。これをギターで演奏するのがエエンですわ。韓国のプレーヤーですねん。Oh Seung Kook、少しアップテンポで演奏するスタイルには、はまりそうですわ。別途、iTuneで一曲買いましてん! いやあ、音楽ってよろしなあ! 心が満たされる想いですわ。みなさんは、どないです?



           ~~~~~~~~~~~~~~~~~

 ついでのことですが、シューベルトの歌曲というと「美しい水車小屋の娘」「冬の旅」「魔王」などがよく知られています。「冬の旅」など、フィッシャー・ディスカウに憧れ、よく口ずさみました。でも、みんな失恋の歌のなど暗いですね。ところが、彼が最後に書いた「白鳥」は、みな明るい希望に溢れたものばかり。その中に、ザイドルの詩に曲をつけた「鳩の使い」という曲があります。

 ”わたしは忠実な伝書鳩を一羽飼っています。鳩は毎日わたしの恋人のところへ手紙を運んでくれますが、疲れるということがありません。この忠実な鳩の名は、<あこがれ>というんです”

 天才シューベルトの文字通り、”白鳥の歌”の歌です。


     ~~~~~~おわり~~~~~


(お詫び)「今宵はミステリー」の続編を載せるつもりでしたが、「夜と夢と」という、あまりにも素晴らしい曲に巡り会えたので、その歓びを分かち合いたく、ここに臨時に書きました。次回は、「ミステリー」、とくにジェフリー・ディーヴァについてしっかり書きますので、お許しください。










 
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