リオデジャネイロ（ダウ・ジョーンズ）欧州の財政危機が長引いていることで、ブラジルの石油ガス鉱区に対する関心が再び高まってきた。豊富な資金力を持つ石油会社が世界最大の辺境の1つに進出しようと意欲を燃やしている。
現地のエネルギーコンサルタント会社ブラジル・インフラ・センターのアドリアーノ・ピレス所長は、「欧州の危機をきっかけに企業は資金の有効な活用方法を模索し始めた。そして投資対象としてのブラジルの魅力に気づき始めた」と語る。
ブラジルの石油産業は数カ月前から好転している。政府は依然として新鉱区の入札を渋っているものの、有望な海洋探査鉱区の取得を目指す海外企業は少なくない。権益を有する米国の独立系石油・天然ガス会社アナダルコ・ペトロリアム(NYSE:APC)が7つの海洋鉱区について買い手を引きつけていると15日に報じた英経済紙フィナンシャル・タイムズは、フランスのトタル(NYSE:TOT)(FP.FR)、ノルウェーのスタトイル(NYSE:STO)(STL.OS)、デンマークのマースク・オイルの3社がいずれも関心を示していると報じた。
このところ停滞していた同国の石油市場にとっては大きな方向転換となる。ブラジル政府が石油法を改正し、政府が優先的にプレソルト（海塩層下）の権益を握ることにして以来、海外企業の進出は途絶えていた。プレソルトは南東岸沖（カンポス沖）水深数マイルのところにある。
ピレス所長は「プレソルト開発は多くの不確実性をはらんでいた。2010年の大統領選挙と規制変更の可能性があったため、海外の投資家は次々とブラジルから撤退した」と明かす。07年に30年ぶりとなる世界最大の鉱区が発見された当時は業界全体が陶酔状態にあったため、多くの企業はその高揚感を生かそうと高値での鉱区売却を提示した。後に政府が海洋探査鉱区の入札を停止したことも価格高騰に拍車を掛けた。
ただ探査鉱区の規模が大きかったためその後の鉱区売買市場は買い手市場の様相を呈した。
ブラジル有数の富豪エイケ・バティスタ氏率いるOGXペトロレオ・イ・ガス(OGXP3.BR)はカンポ海盆の権益30％を手放すつもりだったが、その計画を撤回した。オーストラリアのカルーン・ガス・オーストラリア（KRNGY,KAR.AU）やフランスのペレンコも、ブラジルでの鉱区開発の可能性を持つ子会社の株式売却を取りやめた。
ピレス所長は「プレソルトが発見されてからブラジルの海洋石油資産の価格は必要以上に上昇した。結果的に海外の投資家を追い出すことになってしまった。そうした高揚感がようやく落ち着き、これからは現実に向き合わなければならない。業界内再編が進む公算も大きい」と指摘する。
中国は天然資源を積極的に買い占めており、業界統合のけん引役となっている。ペレンコは今年に入ってすぐエスピリトサント海盆にある探査鉱区5カ所の権益の10％を中国国有の石油化学大手、中国中化集団（シノケム）に売却した。シノケムはすでにスタトイルからもペレグリノ鉱区の権益40％を31億ドルで買収している。
中国石油化工（シノペック）(0386.HK)(600028.SH)(NYSE:SNP)は最近、ポルトガルのガルプ・エネルジア(GALP.LB)のブラジル子会社の株式30％を50億ドルで買収、スペインのレプソルYPF(REP.MC)のブラジル部門の株式40％も70億ドルで買収した。
英BGグループ(BG.LN)がサントス海盆に保有するプレソルトの取得にも、複数の中国企業が強い関心を示しているという。シノペックはすでに同地区でブラジル国営のペトロブラス(NYSE:PBR)(PETR4.BR)に次ぐ大きな権益を保有している。
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