(ダウ・ジョーンズ)世の中は突然、風邪が治ったような感じになっている。米国で良好な経済指標が相次いで発表され、米国経済の改善を示唆している。新興国経済が成長し、欧州経済圏も重要ではあるものの、米国は依然として世界経済の主なけん引役で、その景気が腰折れすると、誰もがその影響を受ける。だから、米国経済の回復の兆しは朗報だ。
ただ残念ながら、問題がすべて解決したと言うにはあまりにも早すぎる。危機的状況にまた戻るか、控え目に言っても二番底のリセッション(景気後退)に陥るかと思われた昨年の秋以降、投資家は米国経済の見通しについて次第に強気になってきたが、健全性の回復はうわべだけのことにすぎない。
米国経済に関する新聞報道の相対的楽観度の尺度となるダウ・ジョーンズ景況感指数は12月に、2007年~09年のリセッションからの苦しい回復期の大半でみられた低水準で経済が空回りしている状態に戻っただけのことだ。
実際、景況感は、昨年3月11日の東日本大震災以前の水準を、引き続き下回っている。
投資家らはさらに強い回復を期待しているかもしれないが、景況感はようやく水面上に顔を出したにすぎず、その変化は一段とゆっくりしたものになるだろう。
結局、企業の設備投資の発表などは、株主にとっては強気材料に違いないが、経済全体に反映されるのは何カ月も先のことだ。
一方、投資家でファンドを運用しているジョン・ハスマン氏は最近の顧客向けリポートのなかで、投資家を喜ばせている経済指標の多くは、遅行指標だと警告している。非農業部門就労者数を例にとってみよう。
たしかに、12月は強かった。だが、過去のリセッションの始まりと同水準でもある。事実、ハスマン氏は、過去のリセッションの八割において、リセッションが始まった月の雇用の伸びは現在と同じ平均20万人で、その前の3カ月に雇用は50万人増加していることを指摘した。
しかし、ハスマン氏自身や景気循環調査研究所(ECRI)がまとめる景気先行指数は、この1-3月期か4-6月期に米経済のリセッションが始まる危険性が高いことを示している。
この違いが出るのはなぜだろう。
ロンバート・ストリート・リサーチのチャールズ・デュマ氏は以前から、11年後半は企業が投資減税の恩恵を受けるので米経済が比較的良好になるとみてきた。
しかし、11年に行われた企業の投資は、12年中に行われるはずの投資を前倒ししたにすぎないと言う。
言葉を変えるならば、特に今年前半は、投資支出の相対的な減少が予想される。
同時に、東日本大震災によって生じた生産の途絶で、昨年4-6月期の生産は7-9月期と10-12月期にずれ込んだ。
最後に、ユーロ圏経済はほぼリセッションに陥っており、ドイツ経済も今後数カ月でかなり減速する可能
性が高い。
米国は欧州に輸出先を依存していないかもしれないが、欧州経済の落ち込みは米国の成長に打撃を加えるもう一つの要因になるだろう。
虫垂炎の場合、盲腸を切除すれば患者は治る。
しかし、盲腸が破裂してしまうと、回復はつかの間に終わる。患者は回復したかに見えるが、破裂した盲腸がまき散らした細菌が増殖して極めて悪質な二次感染症を引き起こし、患者の状態が急速に悪化する可能性がある。そうなると、さらに猛烈な発熱に見舞われることになる。
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