リーメンシュナイダーを歩く 

ドイツ後期ゴシックの彫刻家リーメンシュナイダーたちの作品を訪ねて歩いた記録をドイツの友人との交流を交えて書いていく。

5. マインフランケン博物館

2015年06月02日 | 旅行

 旅日記 No.4

 マインフランケン博物館の続きです

 この部屋の突き当たりには砂岩でできた聖母子像<写真7>があります。1520年の作で、熟練した腕を感じさせるものでした。部屋の中にはこの他にも木彫りの聖母子像が何体かありましたが、その内の一つ<写真8>を警備の方は誇らしげに説明してくれました。こちらの聖母子像は1500年の作で、まだちょっと表情が出来上がっていないように感じましたが、後ろ姿までていねいに彫られていて、長い髪がきれいにカーブしながら腰の辺りまで届いているのです。
 近くの聖母子像の中には、リーメンシュナイダーの彫刻とはちょっと雰囲気が違うものもあります。これはリーメンシュナイダー派の作品や工房の作品で、特に前者の作品は一見似ていますが、細かな彫りはちがう人の手によるものではないかと感じられる作品が目に付きました。

 

                                 

                     <作品写真7> 聖母子像                                       <作品写真8> 聖母子像
                              Maria mit Kind                                                  Maria mit Kind

                                Tilman Riemenschneider,1520頃                                                                    Tilman Riemenschneider, 1500頃
                                                               Mainfränkisches Museum                                                                      Mainfränkisches Museum                          

 

 

 もう一つ、特に印象に残った作品があります。それが聖バルバラ像<写真9>です。ミュンヘンでも清楚なバルバラ像を見てきましたが、彼女は、ハウベというかぶり物をかぶっていました。植田重雄氏の著書によれば、これはオリエンタル風の丸くふくらんだかぶりもので、こうした衣装は中世後期のものだそうです。しかし、マインフランケン博物館のバルバラ像は頭に何もかぶっていません。そして何だかとても清純な少女のような面差しです。ミュンヘンのバルバラ像は清楚ながらももう少し成熟した女性のように感じられました。顔の輪郭からくる印象の違いかもしれません。
 
 聖バルバラについて植田重雄氏はこう書いています。

聖バルバラはヨーロッパでは人気のある聖女で、さまざまな伝説があり、女性の聖者としてはマリア、アンナについで崇拝されている。12月4日、クリスマスにさきがけてバルバラが祀られるのは、処女のままキリストへの愛に殉じ、殉教をとげたためである。一般の人々が死に臨んでおそれることのないようにという誓いを立てたので、死の不安を取り除く聖女として崇められた。とくに危険の多い山林の作業、鉱山で働く人々から熱狂的な崇拝を受けている。(『リーメンシュナイダーの世界』57頁より抜粋)
 
  
                                                                                                     <作品写真9> 聖バルバラ
                                                                                    Heilige Barbara; Tilman Riemenschneider, 1510

                                                                                                  Mainfränkisches Museum
                                                      
                                                                                                   


 この部屋を出て少し行くと、キリストが天の神に祈っている間に眠ってしまう使徒の彫刻があります。砂岩でできたこの彫刻もリーメンシュナイダーの特徴を持つ表情ですが、工房の作品と書かれていました。彼の作品につけられた説明のプレートには「ティルマン・リーメンシュナイダー」「ティルマンリーメンシュナイダーと工房」「ティルマンリーメンシュナイダー派」「その周辺」と約4種類の表示がありました。こうした説明文の違いがどこから来ているものなのか、恐らく手元にあるドイツ語や英語の本には詳しく書かれていると思うので、これから読み解かないといけないと思っています。ただ印象として「ウムクライス(辞書には周辺と出ていますが。)」と書かれた作品は表情がどこか違います。リーメンシュナイダーの作品の特徴については次回書こうと思います。

※ このブログに掲載したすべての写真のコピーをお断りします。© 2015 Midori FUKUDA


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