梅様のその日暮らし日記

その日その日感じた事や世間で話題の事について自分なりの感想や考えを書いていきます。

「るろうにん剣心」に思う

2014-09-19 17:36:59 | 日記
  先日、萬屋錦之助主演の「織田信長」を久しぶりに見ました。BSで放映していたのですが、大変懐かしく鑑賞しました。

   私がこの映画を前回見たのは、50年以上前、小学校低学年の時であったと思います。当時私たちは映画館で映画を見られるほど豊かな生活をしていませんでした。そこで夏休み期間のある日、公園に柱を立て、そこに真っ白い布を張ってスクリーンに見立て、映画を映して鑑賞したのです。この「織田信長」も、このようにして鑑賞の機会を持つことができたのでした。

   当時人気絶頂であった錦之助は、演技力に長け、時代劇でありながら、恐らく8歳位であったであろう私を少しも飽きさせることがありませんでした。当時は日活が10日で一本の割合で娯楽現代劇を撮影していた映画全盛期でしたが、一方でこうした本格時代劇も制作されていたのです。

   以前、キムタクごときが織田信長を演じるべきではないと書きました。本物の時代劇俳優の演技を見てきた私には、とても見るに堪えないからです。時代劇俳優は、トレンディドラマの俳優と違って、特別な修業が必要でした。かつて北大路欣也がその父親と時代劇で相対するテレビ番組があったのですが、父親はきっちりと江戸時代の武士に成りきっていたのに対して、既に功成り名を遂げていたはずの北大路欣也が、見ちゃいられないほど見劣りしていました。

   最近読んだ記事の中でも、とある俳優が、最近の若い俳優は時代劇が全くできないと嘆いていました。袴を穿いて立ったり座ったりを繰り返すと、動作がなっていないために、演技の途中で脱げてしまうのが常なのだそうです。また、時代劇では口先での発声ではなく、腹式呼吸で腹から声を出さないと、トレンディードラマっぽいせりふ回しになってしまって、時代劇としてのリアリティーがなくなってしまうのです。

   この点は韓国でも同じで、とある人気女優は時代劇に抜擢されたものの、時代劇にふさわしい発声ができなかったために毎日監督に居残りを命じられ、何か月もかけてようやくそれらしい発声ができるようになったそうです。時代劇を演じるということは、国を問わずそれだけ難しいのなのだと言えます。

   目下韓国ドラマ「イ・サン」を見ているところです。突っ込みどころ満載なのですが、それは別の機会に譲るとして、国王の演技が完全に時代劇になっているのに対して、主人公を演じるイ・ソジンはもう押しも押されぬ中堅ですが、それでもすぐに現代劇っぽい軽さが顔を出してしまっています。時代劇を演じるのは本当に難しいものです。

   さて、本題に入りましょう。「るろうにん剣心」、見れば見るほどダメです。佐藤健を始めとする役者たちに時代劇の素養がないばかりか、以前書いたように、ありえないアクションばかり続くので、到底時代劇の範疇に入れてはならないものです。

  この映画の監督は、20年間香港映画でアクション・シーンの指導に当たってきた日本人だそうです。曰く、「日本の時代劇のアクション・シーンは嘘だ。」とあります。では彼が作ったアクション・シーンはどうなのか。ワイヤーで釣ったりカメラを早回ししたりして、人間には絶対に出来ない動きでアクションを構成しています。人間にはできない動きで構成したのなら、それはもう時代劇ではなく、SF映画と呼ぶべきです。

   撮影中、役者たちは生傷が絶えなかったことと思います。彼らは今までとは全く別の苦労を経験したとは思います。しかし、私の答えはやはり「ノー」です。この映画は日本の文化と伝統を知らない監督が働いた「無礼」な作品だと言わせてもらいます。