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論文)シュート由来マイクロRNAによる側根形成の制御

2024-04-14 12:24:12 | 読んだ論文備忘録

A micro RNA mediates shoot control of root branching
Sexauer et al.  Nature Communications (2023) 14:8083.

doi:10.1038/s41467-023-43738-6

ドイツ エバーハルト・カール大学テュービンゲンMarkmann(現所属 ユリウス・マクシミリアン大学ヴュルツブルク)らは、以前に、ミヤコグサ(Lotus japonicus)のシュート由来篩部移動性マイクロRNA miR2111が根粒菌の共生感染と根粒形成を制御していることを明らかにした。 miR2111は、根で発現して根粒菌との共生を抑制しているF-Box Kelch- repeat遺伝子TOO MUCH LOVETML)を標的としている。今回は、miR2111の機能について、根系構築の制御における可能性について解析を行なった。pUBQ1::MIR2111-3 を導入することにより成熟miR2111を恒常的に過剰発現させた形質転換ミヤコグサの表現型を解析したところ、野生型植物よりも側根の発生が少ないことが判った。pUBQ1::MIR2111-3 を発現させたシュートを野生型植物の根に接いだところ、根のmiR2111量が増加し、側根発生量が減少した。よって、シュートのmiR2111が根に移行して側根の数を制御していると考えられる。また、この接ぎ木植物では対照よりもTML 転写産物量が減少していた。tml 変異体は、野生型植物よりも側根の発生が少なく、pUBQ1::MIR2111-3 導入系統と同等の表現型を示すことから、側根制御におけるmiR2111活性の主な標的はTML であることが示唆される。Crispr-CAS9で作出したmir2111-3-1 変異体は、野生型植物と比較してmiR2111量が少なく、TML 転写産物量が多く、側根数が増加していた。また、野生型植物の根にmir2111-3-1 変異体のシュートを接いだ場合も、対照と比べて側根発生が促進された。したがって、シュート由来のmiR2111は、TML を介した側根誘導の制御において十分かつ必要であることが示唆される。ミヤコグサは、何れのエコタイプにおいても、窒素飢餓によって側根数が増加した。一方、側根原基数は、硝酸塩が十分な条件下で多くなっていった。また、成熟miR2111量は、シュートと根の両方において硝酸量と負の相関を示し、全身的な窒素応答シグナルの関与が示唆される。根のTML 転写産物量は、miR2111量とは逆のパターンを示し、窒素飢餓の際にはmiR2111によってTML が抑制されると考えられる。この窒素飢餓応答性は、エコタイプで異なり、Gifu B-129系統よりもMG-20系統で強く現れた。miR2111過剰発現形質転換体およびtml 変異体は、野生型植物と比較して側根数が一貫して少なく、硝酸塩の影響を受けなかった。MIR2111-3 を過剰発現させたシュートをMG-20系統の根に接いだところ、硝酸塩に応答した側根形成が喪失した。このことは、シュート由来のmiR2111がこの応答を効率的に抑制していることを示唆している。Gifu B-129系統では、硝酸塩に応答したTML 転写産物量の減少が見られず、このことがGifu B-129系統の窒素飢餓応答性の低さをもたらしていると考えられる。これらの結果から、miR2111-TMLレギュロンは、硝酸塩に応答した側根の誘導と出現に関与しており、miR2111は側根原基形成の抑制因子として機能し、TMLは活性化因子として機能すると考えられる。また、硝酸に依存した側根原基出現の制御にTML は必要ではあるが、TML 転写産物量とは相関してはおらず、硝酸に応答した側根原基出現の制御にはさらなる因子が関与していることが示唆される。植物体の根を2つに分けて硝酸を添加したした培地と添加していない培地で生育すると、窒素飢餓培地上で生育している根のmiR2111量も低下した。このことは、miR2111の蓄積は、硝酸飢餓ではなく、硝酸充足によって全身的に抑制されることを示唆している。この時、両者の根のTML 転写産物量は相補的ではあるが中間的であることから、TML 量はさらなる調節因子の影響を受けている可能性がある。興味深いことに、野生型植物とtml 変異体は根粒菌共生感染によって側根発生が減少する。よって、共生条件下ではmiR2111-TML依存的な側根原基制御に、TML非依存的な制御が重なっていることが示唆される。シロイヌナズナには、ミヤコグサLjmiR2111a と同じアイソフォームを生成する2つのMIR2111 前駆体遺伝子座(MIR2111a/b)がある。また、TML オルソログと推定される遺伝子が1つ見つかり、コード配列中にmiR2111相補部位を持つことから、これをHOMOLOGUE OF LEGUME TMLHOLT)と命名した。ミヤコグサと同様に、シロイヌナズナの側根発生数は窒素供給量に依存しており、1 mM 硝酸塩付近で最大となり、飢餓または飽和条件下で生育すると側根発生数が減少した。miR2111 を35Sプロモーター制御下で過剰発現させた形質転換シロイヌナズナ(2111ox)は、HOLT 転写産物量が減少した。holt 変異体および2111ox は、野生型植物と比較して、低濃度(0.1 mM)および中濃度(1 mM)の硝酸塩条件下での側根の発生が有意に減少した。野生型植物のmiR2111量は硝酸塩濃度と正の相関があり、硝酸塩供給量が多いときにHOLT 量は低下した。また、HOLT 量は側根発生数と正の相関があった。2111ox と野生型植物の接ぎ木試験から、miR2111は側根形成の制御因子として作用し、移動可能であることが確認された。以上の結果から、シュート由来のマイクロRNA miR2111は、根系の構築と側根数の制御における重要な因子であると考えられる。

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