<2015・2・25 掲載>
約1年ぶりくらいの、「なでしこジャパン」ルポ。
2月23日(月)から招集合宿スタート。本日、2日目。
男子日本代表チームの、いつ見てもチンタラムードとは違い、無駄が無い練習運び。休憩が、殆んど無い。あっても、一息つくだけ。
この日も、1日、2回の練習。
朝は、午前9時から。
う~ん・・・・・ちょいと遠いし、練習観に、満員電車に、ぎゅうぎゅう詰めさせられてまで、行く気ナシ。
なもんで、午後3時半開始の、「午後の部」へ。
昨日の初日は、報道では、練習時間が、「1時間」(NHK)と言ったり、「1時間半」や「2時間」(スポーツ新聞)と書いていたり、まちまちの訳が、あるはずのないことが、起こってる。
で、会場の「秋津サッカー場」に、10分遅れて着くと、すでに練習が始まっていた。
これもまた、正確。男子は、おおまか。遅延、早い。10分ほどの誤差は当たり前。
えっ!
記者控え室(写真左の、右側のガラス張りの部屋)に、4人もいて、パソコンを見つめている。
その部屋に、サッカー場グラウンドの模様を映し出すモニター画像は設置されていない。
一体、練習も見ないで、この記者とおぼしき者ら、何しに来たんだろう??
まあ、こんなコト。初めて見る光景ではない。
k-1全盛期のこと。記者は、毎回、150人くらいは会場に来ていた。いや、正確に言おう。記者控え室に、だ。
試合が行なわれているリングの周囲に、記者席は用意されているし、客席の空いているところには、メイン近くに成っても誰も来ないところには座れる。
だが、記者の大半は行かない。
記者控え室で、中継されている大型モニターをチラチラ見ながら、パソコンで記事を打っている。モニター画面からは、フジテレビのアナウンサーと、解説者の声が大きく流れていた。
ゾッとした。
こいつら、一体何の為に、ここまで来たんだろう? 試合の臨場感を味わい、ファンの動きや、入りなは、ど~でもいいんだな。
控え室の並びに、狭い記者会見スペースがあり、試合を終えた選手が座ってくれて、話してくれる。でも、そこにくるのは、カメラマンと、記者20人ほど。
大挙して取材陣が来場し、且つ、「分担制」であるにしても、なんだかなあ・・・・・・。
また、こんなこともあった。
ラグビーの試合が、いままさに行われている時の、記者控え室。
会場の記者席に行かず、モニターテレビ画面を、数人が見ていた。
思わず、聞いた。
---どうして、記者席で見ないんですか?
中のひとりが、答えた。
「だって、寒いだもん」
これが、「報道」の現実です。
あきれつつ、練習公開されている一般席へ。
わっ! 少な!
平日。肌寒い午後。とはいえ・・・・以前、12月の年末に書いたように、男子はまだまだ多い。
また「なでしこジャパン」人気全盛のころは、こんなもんじゃなかった。
今日は、35人くらいか。
聞くと、昨日の初日は、これに少し多いくらい。
取材陣も、今日は、カメラ、VTRカメラマン入れても35人くらい。昨日は、40人くらいとのこと。
優勝しないと、コレ!か・・・・・・・・。
それでも、キチンと来ている人、つぶさに見ている人が、いた。
この顔を見て、すぐ名前が思い浮かぶひとは、相当なサッカー通だ。
上田栄治、61歳。今から12年半前。2002年8月、女子サッカー日本代表の監督に就任。
翌2003年には、ワールドカップに出場し、その翌年にはアテネ・オリンピックに選手を出場に導いた。指導力には定評のあるひと。
現在の「なでしこジャパン」の基盤を形作った人物と言って良い。
現在は、日本サッカー協会の理事であり、女子委員長も兼務している。
なでしこや、女子の若手低年齢層の合宿には、必ず来て、キッチリと見つめている。
あの、いつもいつも責任取らない、な~んにもせんむ理事の、原博実のように、せっかくグラウンドにいても、練習を見ずに、終始、控えのケガ組と、たわいもない雑談だけして、監督ともコーチとも、一言も話さず帰ってゆくバカとは、大違い!
おまけに、驚いたのは、この上田。練習終了まで、まったく座ることなく、立ち続けたまま見ていたこと。
寒さが身にしみてきたため、体操で体をほぐすも、午後5時17分、練習終了まで起立したまま。
しめて、1時間47分。たいしたもんです、その真摯な姿勢。
グラウンド左では、「なでしこジャパン」の練習相手の常連&御用達の「明海大学サッカー部」の面々10人ほどが、ゴール前で練習。
ん? 協会に聞くと「無いです」と言っていたが、練習試合を、今回もやるのだろうか?
ちなみに、明海。まったくのボランティア。謝礼、無し。なでしこの中の、好みの子との会話、メール交換、厳禁か? まるで無い。
身長、体重という、サイズが、外国女性選手に近く、練習相手に最適との判断で、ここ数年、合宿のたびに呼ばれている。
「明海」と、明快にハッキリ出しているのは、私の記事のみ。ホントに、大学名、知らない番記者すら多くいるのには、あきれる。
100知って、1書くのが、記者だろうに・・・・・。.
本格練習が始まる前に、失礼ながら、上田・女子委員長に、いくつか質問させて戴いた。
ーーー澤穂希(さわ・ほまれ)さん、正直代表入りは、もう無理だと思うのですが、今までの経験を生かして、アシスタント・コーチとしての打診とかは、してみないものですか?
それを聞くや、上田、少し、苦笑いを浮かべる。
「澤本人が、代表に意欲を燃やしているんですよ。本当に、本気で代表入りの座を狙ってる。コーチをするという気持ちは、まったく現役の間は、無いと言うんですよ」
---選手兼任コーチも?
「拒否、ですねえ」
ーーー今日は、明海大学の選手たちと、練習試合を?
「いや、なでしこの中に入って練習するとか、聞いてます」
---今のなでしこのメンバーが、そのまま、6月のワールドカップに行ける?とは、限らない?
「そうですねえ・・・」
---基本は、このメンバーで継続して、多少増減があると?
「そうなると思います」
まさに、丸1年前の、このアルガルべ・カップへ向けての、直前日本合宿を見たルポで書いていたのだが、もう、澤の代表入りは、かなりむずかしい、と。
今年より寒かった同じサッカー場。
他の選手が素足に長い靴下をはいているのに較べ、澤は、足と太ももを完全保温。
長年の積み重なった激闘の結果が、否応なく、足首、ひざ、ふとももに響いていた。
全盛期のようにサッ!と、俊敏に動いてくれない下半身。冷やしたら、さらに稼働がにぶる。
アタマの方は、経験の積み重ねによる「勘」で、最適の、ベストの位置へ向かって走り出している。パスも、蹴り出すシュートも。
が、身体が、足が、ついて行ってない。
それが、所属する昨年の「INAC神戸」の戦績低迷、5年ぶりの無冠の一因になっていた。
会場にこそ行けていないが、BSでナマ中継や録画された試合は、すべて見ている。全盛期に動きが戻る「奇跡」は、冷たいようだが、無い。
気持ちと姿勢は、今も強いままということは、昨年9月、アメリカのシアトルのチームから出戻った川澄奈穂美が「一緒に練習していると、澤さんから、もっとうまくなりたい!という気持ちをひしひしと感じます」という言葉からも、分かる。だが・・・・。
「澤さん」と敬意をもって慕われ、威張らず、聞かれればアドバイス。その性格と力量は、将来の「日本代表女子サッカーチーム監督」に、もっともふさわしい。
高倉麻子のように、若い世代の子をあやつる、「巧みな人心掌握術」は、まだ持ち合わせていないが・・・・・。
しかし、「現役」にまだこだわる気持ちは・・・・・わからないでもない。本人の意思に、まかせるほかない。
見ると、記者席と、協会関係者席には、誰ひとりおらず。今の、「人気」と、「注目度」が分かる。
さて、練習光景に目を転じる。
早いパス回し。ボール止めて、ワンドリブルや、トラップして、パス。全体で、16人。
コントロール・パス、自在にボールをあやつれるパスのコントロールを、心掛ける狙い。
「緩急つけて!」 「サポート!」 「パス、早く回す!」
コーチの、的確で、短い指示飛ぶ。
動き、軽快。目下の所、ケガ人、1人も無し。
声の掛け合いも、良く出ている。
佐々木則夫・監督。次にやる、4対2の組み合わせ指示。
4人は、なでしこ。2人は、明海。
「ココでは、相手の・・・・」と、狙いを解説。選手、理解しやすい。
「学生さ~ん!」と叫んで、佐々木、「明海大学」のメンバーを呼ぶ。
4-2、動き出す。
「ボール、奪われたら・・・」
「ボール、奪う」
「ボールを、裏へ」
などなど、佐々木、注意と指示。
明海、軽く、なでしこの動きに合わせ、付いてゆく。強いアタックは、無し。ケガでも、この時期、させたもんなら大変だ。が、テキトーもいけない。
その頃合いが、むずかしい。
気温、ぐんぐん下がってくる。なでしこのメンバー、一息つく、水呑みタイムに、ひざ屈伸。長い靴下はいてはいるが、ひざの動きが、硬くなりかける。海風も、吹き始める。
佐々木(写真右端)、メンバー呼ぶ。ホワイト・ボードを手に、書き込み、指示。
午後4時8分。「学生」も入れて、語る、
「こう、来たら・・・・・」
「・・・・・・たら」
と、あらゆる攻守のパターンを想定し、動きをペンで指示。
「ハイ、いこう!」
7対5の、2チームに分かれて、動き出す。
7は、なでしこ。5は、明海。いしだ壱成(いっせい)そっくりの、高瀬愛実の動きが良い。精力的といえばいいか。
競り合い。「学生」は、腕を伸ばす程度。
明海は、黄色と白のビブ着用。
寒くなってきたが、なでしこは、黒手袋をしている選手は少なく、素手の選手は、はあ~っと、息を手に吹きかけている。
「特に、サイドも相手を引きつけておいて、裏へ・・・・」と、佐々木。
細かく、指示。
「遅いよ、それじゃあ!!」
「オーケー!」
選手を、乗せてゆく、佐々木。うまいっ! 選手に笑顔、のぞく。学生、パス回してあげる。
競り合い、走ったら「明海」の方が、常に早い。
狭いエリアのなかで、パス。動き、競り合い、抜き去る。その繰り返し。
ゴール・キーパー陣、3人。別練習。高いゴールキックを、キャッチの繰り返しを、もくもくとこなしている。
<前篇 終了>