懐かしのバレエ

バレエ、パフォーミングアーツ等の感想、及び、日々雑感。バレエは、少し以前の回顧も。他、政治、社会、競馬、少女マンガ。

途中下車の気分で

2012-03-10 16:00:17 | バレエ
【今時は】
もう、モンテカルロバレエとか、スタダンの公演(都さん客演の演目が、珍しい「ワルプルギスの夜」なので、ちょっと注目された)とか、東京バレエ団の眠りとか・・・そういう時期なんですね。自分は彼氏孝行(?)とか、その他で、しばらくバレエ公演行くのはお休みです。4月中位まで。

【2008年「スパルタクス」公演】

自分は、手持ち画像で、ボリショイ公演後、関連作品全幕をざっと見まして。 
それで改めて思ったのは、やっぱりDVDやブルーレイが出てる公演はいいな、と。ボリショイ以外は、公演の場に、あったDVDがよく置いてあって、羨ましい。

それでも、私はまだ、手持ちが色々あるからみれるけど、色んなお客様が、公演を気楽に振り返れるようになれるといいな、と。公演後、CD,DVDある人とない人とで、違ったのでは?と思って。

さて。私の手持ち画像、「スパルタクス」全幕は4つ。

1.その最新のが、2008年1月、パリ・オペラ座ガルニエ、ボリショイバレエ団、パリ公演

後は、
2.ムハメードフ、セメニャーカの'89年か'90年のモスクワ公演。
NHK収録で、ロシア人よりカメラワークが良いような気がする。これはDVDが出たら良いと思う。

3.V.ワシーリエフ、クラッスス:マリス・リエパの、凄く古い画像の。
(画質が古く、今回見たら、目にやや辛く。)
4.ムハメードフの若い時の。クラッスス:ガボーヴィチ。
2の方が良いが、ネットやDVDで見られるのはこっち。(涙)

で、1の、ちょこっと感想。

※スパルタクス:カルロス・アコスタ
フリーギア:ニーナ・カプツォーワ
クラッスス:アレクサンドル・ヴォルチコフ
エギナ:マリーヤ・アラシュ

指揮:パ-ヴェル・クリニチェフ
★管弦楽:コロンヌ管弦楽団

≪指揮&演奏≫
クリニチェフは、'06年来日公演「バヤデルカ」や、'08年「白鳥」東京初日に、有能な指揮者ぶりが目に付いた人なのですが。今回はコロンヌ管弦楽団だったせいか、スパ幕開きの前奏の華々しく盛り上がる様だけは、今年の来日公演(ソロキン&ボリショイ)の方が、さすがに良かった。その後は、別に悪からぬ演奏。

≪男性群舞≫
こちらはグリゴロ氏が袖にいたせいか、今年の日本公演よりは、まだ定番どおり。でも、今年のも今時の若者の面白さがあって、今にして思えば、氏の不在で面白いもんを見たのかも?

≪舞台の広さと群舞≫ まず、ガルニエは、舞台広くないと思うので。この位のホールでも上演できるのか、と思ったけど。

今年2月1日の公演の雑感で、舞台のコールドの人数の事を書いたけど、上記の画像集で、ざっと確認したら、群舞の人数や、配置は、昔と変えてない様子。

ただ、東京文化会館の「スパ」で、2002年の来日公演では、男性群舞の圧倒的な迫力で、もう、途中でごめんなさいしちゃう、降参みたいな気持になったのが、今年のはそうでなかった為、何が違うんだろう???と思ったんだけど。

(なお今年の方が、主役たちの演技や、コールドとの関係が、より良好な面もあり、新しい現代のスパルタクスになっていて、想像力を刺激する新鮮な舞台、という意味では良かった。)

それで、人数の頭数は変わってないのに、何が違ったのか?と考えたのだけど。
そのヒントになったのが、このパリ公演。
大劇場改装で、舞台の狭い、ボリショイ新劇場や、或いはこのガルニエなど、コンパクトな舞台でも踊れるようになったのは良かったけど、反面、やっぱり狭い舞台だと、コールドも、狭いなりの踊りになるのかしら??と。

その、ムハメードフの2番目の手持ち画像で見ると、もっと群舞全体の迫力がある。(必ずしも、'08年より'90年頃の群舞が、全シーン優れているわけでもないけど。)もちろん主役が違うこともあるけど。

以前、'88年来日公演で、「黄金時代」か何かをやる予定だったのが、舞台の大きさが足りなくて、別の作品になったという話なので、その後、スパルタクスにしても世界で上演する上で、各地のコンパクトサイズの舞台でも上演できるようにしたのは、プラス面もあると思う。

もしかして、男性群舞の迫力が10年前ほどでないのは、その副作用?かも?と。

もう一つは、どうも今回,コールドの人は、(震災あって、日本に来たい人だけきたので、総力挙げての来日でなく)色んな役を持ち回りでやってたような気がするので、それもあるかも?とも思ったけど。

(敵と味方と両方同じ人とか。トラキア人女性群舞の中に、ニクーリナみたいな鍛えられた身体の人がいたのは、さすがに別人と思うけど。)

「ライモンダ」の2幕の民族舞踊の前座の女性たちの動きにしても、もっと俊敏な方が、より良いけど、そうは言っても、この人たち、色んな役をやってて、役の習熟面で、そこまでは出来ないのかな、とも思ったので、自分はそんなに不満は無かった。

(一方、「白鳥の湖」は定番なせいか、一転してコールドの安定感が目を引いた。)

※あいにく、手持ち画像が途中で1幕で終わって、保存状態が悪く、続き画像が見つからないので、以下散漫感想になってます。

≪最愛の妻:フリーギア≫
これを最初見た時は、カプツォーワが美しく、愛らしく、情深く、愛される容姿と清純な役どころに相応しい演技という点では、歴代のフリギアの中でも、最も愛らしい妻、男性が妻にしたいと思うフリギアで、かつ情愛深い役作りでは、NO1じゃないかと思った。誰よりも、リアルな愛が感じられて良かった。

(逆に脚線美を強調したソロやリフトの脚見せ振付には、アンナ・アントニーチェワやむかしのベスメルトノワ他の方が、全然あってるし、その舞踊の魅力は、脚マニアには他を勧める。
脚のラインの美しさは、上には上の、おそるべきロシア舞踊界ではある。)

演技では、マクシーモワは、リフトで大きな目を見開いた、ぶりっ子系の可愛さが持ち味で、セメニャーカも同じく姫資質なので、フリギア役のキモ、「献身的な妻」という面では、カプツォーワが、より自分好みに見えた。

3幕最後の、カプツォーワの、よろよろ歩いて意識もおぼろな様子は、演技じゃなく、本当に最愛の夫が死んだみたいで。
主観的には、過去のスターの演じる姫キャラ系のフリギアを、優に凌駕して見えた。)

※私はセメニャカを好きだが、彼女は尽くす系の女性には全く見えないし、彼女はスターの貫録は文句なしだが、フリギア役の3幕の乱れる様子の演技だけは、べスメルより誰よりセメニャカが良くなく見え、意外だった。彼女は演技は上手いと思ってたので。資質より演技力の問題とは思うが。ついでに彼女は献身的な妻ってタイプじゃ、なさそうで。それもセメニャカの魅力?

ところが、そのあと、愛らしく初々しく繊細に演じたニクーリナを観て、カプツォーワとの演技の違いも興味深かった。どちらも愛されそうな妻そのものだけど。

カプツォーワは、1幕登場してから、現代人の彼女とは違う、フリーギアの置かれた状況を考えて演じている。フリーギアが、今いる場を、どのように感じているか。大きな目を見開き、知らない暗い部屋へ連れてこられた五感の感じる不安、そして、これから何か恐ろしい事が起こるのではないか、との怖れを、作って演じてる。スタシスっぽい。彼女の演技を見てると、観客も、舞台の人の状況が改めて分る、という種類の演技。

ニクーリナは、自然で繊細な演技をする人で、まず、その場に「居る」ことから、演技を始めてる。実は師匠のマクシーモアよりも、私好みの演技をする人なのだが。

それと、最終場のスパルタクスの死についても、演技の違いに、二人の女性の違いが伺える。
もう大人の女性でフェミニンな魅力の香るカプツォーワは、最愛の夫の死、という状況から始めていて、歩くこともおぼつかない様子が、彼女の夫への愛の愛の深さを語ってやまず、そんな風に演じるカプツォーワ自身まで、愛情深い魅力的な女性に見えてくる。(かどうかは知らないが)この上ない名演。

ただ、ニクーリナは全く違って、夫の死を目の当たりにして、信じられないし、運命に全く納得できない表情をしていて、見なれたスパルタクス最終幕が新鮮に見えた。若い女性らしい演技で、このシーンだけなら、10年前のアントニーチェワを優に凌ぐ好演だった。何より、お芝居を作り事のように演じない、役を生きる演技は素晴らしい。

(この場の違いは、二人の女性の感じ方の違いも表していて、違う演目でも、ダブルキャストで見ると面白そうだと思った。ニクーリナの方が、まだとても若い女性っぽい。彼女自身が、また恋愛したり等で、心の世界が変化すれば、また芝居も変化するかもしれない。そういう意味でも貴重な舞台だった。)

アコスタが初役で頑張っていたのを、実態は、中堅のカプツォーワが、一緒に動く時もリフトも多少はリードしてるのかも、と思った。こういう組み合わせは、舞台の安定に寄与しそう。

一方のニクーリナは、主役のドミトリチェンコとは、さほど上下感が少なく、双方が適度にしっかりしてて、安定したパートナーリングを見せていた。

≪ヴォルチコフ&アラシュ≫
今年見た、悪のカップル役:バラーノフ&アレクサンドロワが、歴代でもっとも淡白なペアだったが、対照的に、ヴォルチコフらは、仲良さげな役作り。アラシュは、大人の色気が無いわけじゃないが、セクシーさの質が、歴代で一番、”妻っぽい”。

音楽に合わせて、二人でわらわらと妖しく踊り、盛り上がってゆく所で、絶妙の阿吽の呼吸。相手と離れてる時も、くっついてる時も、お互いの振りに逐一反応してて、微笑ましい。けれど、それって妻とか、夫婦っぽい。アラシュは舞台降りても夫君と夫婦仲も良さそうだったし・・・。いい奥さんなのかしら、なんて、考えてしまった。

こういうクラッスス&エギナも1組位はいていいのかな、と思った。もちろん、本来はもっと毒のある役と関係性だけど。この二人は、ライモンダでも、大人の男女の愛っぽく見えたから、まあ、こんなもん?。

≪クラッスス≫定番の演舞を型通りやってる感じ。ヴォルチコフさんって、もしかしていい人なのかしら?、と思ってしまった。一通り、そつなく踊るし、演技もしてるけど、こういう役は、もっと逸脱したものを内に持ってる人の方が合ってるのかも。踊りに爆発力があれば尚良し。
見かけ男性的だが、舞踊がそんなに爆発的に男性的なタイプではないのかも?

役作りは過去のダンサーをやや踏襲して踊ってるので、自分は意外と、バラーノフで見て良かった。(独創性があったから。)

今回ヴォルチコフが一番良かったのは、インタビューでクラッスス将軍を、「狂気との境界線にいる人物」と解説してくれたこと。多少は知ってても、そこまで認識を深めてなかった。関係者でしゃべれる人へのインタビューは、批評文よりずっと大事。

≪アコスタのスパルタクス≫
(前見た時は、何でアコスタが、と思ったが、その後、イワン・ワシーリエフまで踊ってしまった今となっては、まだプロポーションもましな方だし・・。)

頑張ってるが、この役だとカメラワークが全身になりやすく、そうすると、肌が黒く、表情が分りにくくて、やや損してるかな。
1幕の殺人の後のモノローグの演技は、ムハメードフのような蜂起の動機が分る内因表現は無く、普通のストーリー紹介の「お芝居」に。泣きそうな表情も、司令官というより普通の人っぽい。

今のダンサーのレベルでは、難度の高い振りも彼なりにこなし、何かが足りず、全体に惜しい感じ。ピルエットとかも、今見ると、まあ、きれいに回ってはいるし、クラシックバレエの好きな人なら、そういう観点で面白く見れるかな?ボリショイ好きな人には、他のダンサーの刷り込みがあるからきついかも。

踊りは、ジャンプしても空間が埋まらなく見えるのは、高さはあるけど、もしかしてバロンの長さが足りないとか?と思って。もしかして、ボリショイで2年とか一定期間在籍して、この時期のアコスタが修行すれば、この辺は改善された、なんてあるかも?と思ったけど。

その後バヤデールで、ジャンプが落ちた彼を見たので、今はもしかして無理かと思うし、本人にそこまでするメリットがあるかと思うと、非現実的だろうけど。

リフトとかは、カプツォーワが居て良かった感じ。でも並びでは、欲を言えば、カプツォーワのフリギアの夫には、もっといい男が出てくれた方が、自分は嬉しい。(でも、フランスでは、ああいうのがタイプとか?別の美観があるんだろか??黒人の好きな人もいそうだし・・。)

演技は、筋骨逞しい身体を持ち、「剣奴にされる奴隷」には見える。
ただ、(イワン・ワシーリエフも共通の泣き所だけど。)そこから蜂起してローマ軍に拮抗するほどの組織力を持つ、並はずれた胆力の古代の英雄には・・。非凡な反乱軍の指導者には・・・見・え・な・い。
(史実上は、かなり現実的な力量のある、なまなかならぬ人物と推測されるらしい、スパ。)

ただ、晴れやかに、のってスパルタクスを踊ってる。お疲れさまでした、ってな。

P.S.
この後、2のムハメードフのスパルタクスを見たら、憎らしい程巧かった。あの、長く宙に浮く爽快なジャンプの時に、「さ・わ・や・か~」な表情をしたりするのが、かつて、仮想敵国での上演でも世界を席巻した秘訣かも。

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