年末年始は・・・結局、エレーナ・フィリピエワの最後の「白鳥」全幕とか、気になる公演はあったけど、美食ばかりで、芸術鑑賞には全く行けず。
んで、TVの劇場中継とかを、ちょっと見てお茶を濁した程度で・・・。
【12/31 テレ東 ジルベスターコンサートのバレエ】
東京バレエ団、集団創造として、私的には印象は良かった。そんな、凄い名振付とかではなくても。オーチャードホールの舞台上だけでなく、時には、建物内のカフェの近くとかも使って、踊ってたけど、このバレエ団は海外公演、野外公演等の経験的蓄積がかなりあって、こういう、イレギュラーな空間も使う場合の「場」の作り方が、おそらく、他バレエ団よりうまいんだと思う。
今回の作品は、自分の印象では、一人一人の顔が印象に残る有り方でなく、東京バレエ団という一つの集団全体の印象が残る有り方で、昔のバランシンのバレエ団のあり方に、そういう所は似てるかな?、と思った。
練習量というか、指揮者や、バレエ団以外の人との共演、コラボレーションについて、しっくり馴染んでいるように感じたのは、やっぱりそれなりに見えない所で、労力を割いてる結果だろうと想像された。高名なスターダンサーが出てたわけでなくても、好印象の舞台だった。
*東京バレエ団と言えば、先のくるみ割り人形の衣装、ロシア製のだっていうから、ちょっと見てみたいと思ったけど。(この頃バレエに行けず生活)
【恒例、ウィーンフィル、ニューイヤーコンサートのバレエ】
今年は見るのやめようかと思ったけど、今年は今までよりましだったかも。
【バレエじゃないけど。アイスショー氷艶2019】
これは、年末ごろ、BS日テレで再放送してたのを、全部じゃないけど、とぎれとぎれ見た。
(前に、一回、TV放送あった時は、ちょうど中盤の、海賊の女性二人のシーンで、正直、「源氏物語」のはずなのに、なんじゃこりゃ~、と思って、見るのをやめてしまったのだけど。
もう少し、ちゃんと見たら、思ったよりずっと良かった、かも。
宮本亜門演出とは知らなかったし、フィギュアスケートの選手や元選手たちが行ってるアイスショーとかについて、業界外の、舞台の演出家、演劇とかミュージカルでもいいけど、別系統の演出家をつけた方がいいのに、って、ずっと思ってた。
光源氏の話のはずだけど、原作の小説から、筋を大幅に変えているので、正統派の源氏物語の舞台化を期待すると、その海賊の所とか、原作にない部分等で、ちょっと当惑する部分はどうしてもある。
私的には、宮本亜門は、好きでも嫌いでもない演出家で、殊更に褒めたい演出家でもないのだけど、ここは、やはり、こういうちゃんとした演出家が入ってとても良かった、と言うのが第一の感想。私は、フィギュアスケーターたちの、我流な演技・演出がかなり嫌いなので。
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紫の上役の、ユリア・リプニツカヤが、予想外の出色の出来。
(外国人なのに、日本人がやるより良かったので、凄く意外。)容姿が舞台映えして、普段よりこの舞台での方が、もっときれいに見えた。また、内面性のある演技で、純粋でいちずに主人公を愛し、原作の紫の上より、もっとずっといい女に見えた。理想的なヒロイン像の形象が素晴らしい。
各人の衣装が各々デザイン違って、衣装の水準も高かったと思うが、とくにリプニツカヤの衣装だけ、袖部分超薄くて手が隠れるほど長いのが、滑るときれいにひらひらして、天女の羽衣の様、着物風衣装でも、脚を高々上げてスピンしたり、脚上げたまま滑れるように、上手くつくってあったみたいで、着物先入観のある日本人の自分からすると、意外な感じ。と言うわけで、衣装の係もGJ。
・ステファン・ランビエール、ポスターの写真が、着物衣装似合いすぎてて、この人って!(主役の光源氏より、兄役の朱雀帝の方が、よりかっこいい、みたいな?原作は反対で、光源氏が誰よりもかっこいい設定だった気がする。)ペアで動くシーンも、男子シングルの元選手じゃないみたいに、ペアダンスっぽく振る舞えるとか、なかなか恵まれた人。外人が、朱雀君をやる違和感が全くなかった。コーチとしても活躍してるし・・・。とにかく、容姿に恵まれてて舞台映えがすると思わない人は珍しいかも。(自分はこの人のファンではないのだが。)
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一番良かったのは、音楽かも、と言う位、舞台をよく作り上げていた。テーマ曲:松本孝弘、劇中曲:川井憲次。ってあったので、松本氏の功績かな?こういう音楽系の人って、才能あるのねぇ、とひたすら感服。
・ファンじゃないけど、主演:高橋大輔、努力賞って感じ。まさかの、歌まで歌っていた。(一瞬、本人が歌ってると思わなかった。)
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(※後日追記:以下、「初挑戦」等書いちゃったけど、2017年氷艶で、歌舞伎役者とのコラボ舞台はやっていた模様。お詫び訂正。(といっても、こちらはあくまで演出も歌舞伎界の人の様だし、現代劇方面の、舞台の演出家のもとで、主演したのは、はじめてなんじゃないかな?)
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演技も、歌も、殺陣みたいのも、ちょっとある。スケートが上手なのは当たり前でも、剣抜いたり、チャンバラシーンが、素人目に上手に見えた。
最後はワイヤーで吊られて、空中にいたり。(これだけは、当たり前だけど、ジャニーズとかの方が上手いけど。(別に怪我しなければ、吊りはあれ以上上手くなくてもいいけど。)でも、それ以外は、たぶん初挑戦にしては、そう思わせない位に、色々うまくこなしてた印象。演出の指導も良かったのかもしれないが。それに、やっぱり運動神経がいいのか、チャンバラは、宝塚出身のキャストの人よりうまいと思って感心した。笛吹くのも様になってるし。)
ファンを集められるスタースケーターなので、まさかここまでやるとは思わなかった。体当たり的と言うのか、何でもやる感じ。
脱線するけど、こないだの全日本選手権の高橋大輔選手の演技見て、「この人変わった!」って思った。たぶん、演出家がついて、舞台をやった事とかが、表現面にいい影響あったんじゃないかと思ってた。
やっぱり、フィギュアスケートの選手って、素人の指導とかで演技を我流でやっちゃうけど、演技の指導の出来る演出家が付いたり、或いは、舞台とかの役者さんと一緒に舞台やったりした方が、演技にとっては、絶対いいと思うし、フィギュアスケート選手の演技とか、表現の一部には、顔芸とか、オーバーアクトが、表現力があると勘違いしてる向きがあって、あれからは脱却してほしいと、よく思う。
「氷艶」は、皆、マイク付きなので、舞台俳優の発生訓練は無くてもできるように、上手く作られていた。
高橋大輔は、声は高い方ので、なかなかいい声なんではないかな。本人は、「光源氏役をやるには、顔が濃い」、って自分で言ってたけど、声的には、こういう声で光源氏、っていう設定でも、通用するように思ったし、実年齢より若い、青年の思いみたいのは、この設定なりに伝わってきた。
・とりあえず、舞台を作るにあたって、色々な工夫には感心させられたし、「スターの高橋大輔を見せる」域を超えて、ちゃんと作品を見せる、ストーリー性のある舞台を見せる、レベルには達していて、途中までは感心した。
・逆に、ここまでやるなら、最後、もう少し上の感動があるような台本設定に出来なかったかな?とも思った。
スケーターの演技を見せる趣旨だけでなく、たぶん、歌うたえる人を使って、ちょっとミュージカル要素のある舞台にもしたかったのかな?って思ったけど。
その意味では、一般的には、藤壺役:平原綾香の起用は要だったのかもしれないし、歌はまあ、それなりに、演出意図をよく伝えてはあったけど。
自分主観では、源氏の理想の女性二人の内、紫の上役のリプニツカヤが、予想外に良かった、可憐で美しかったので。(日本の女優で探しても、ここまで適役な人ってなかなかいないかも。手垢にまみれてない感じが凄くあって。)
それで、なんで、藤壺がこの人なの?!っていう、わがままな感想に。
藤壺とは、「輝く日の宮」と言われるほど、美しかった女性であり、彼女の為に、源氏は父の后を寝取る大罪を犯す、
理性を失わさせるほど、常軌を逸した情熱を抱かせるほど魅力的な女性のはず…という、「源氏物語」原作の刷り込み、先入観があるもので。
チケット買って、観に行った観客が満足してれば、上記は大きなお世話感想かもしれないが。
「源氏」原作へのこだわりを言いだすと、朧月夜だって、設定とぜんぜん、違うやんか、とか、
何で六条とか葵の上とか出てこないの?とか、あるけれど。
平原綾香さんの藤壺が良かった方、ごめんなさい。歌は上手だったけど。リプニツカヤの紫の君が、むしろ原作よりいい女だったのに対して、この藤壺は、何とも平板な、大和なでしこの形象で。
それでも、舞台役者としては、(好演ではあったけど)キャリア的には素人の高橋大輔の相手役としては、平原綾香は演出サイドからすると、手堅いキャスティングだったのかもしれないけど。
(色んな「源氏物語」がある中で、大和和紀の「あさきゆめみし」の藤壺は、さすが少女マンガイズムで、なまなかならぬ人生を送った女性の半生記として、これとは対照的な深みのあるものだったと記憶している。高貴な生まれの姫が、帝の后として厚遇されながら、源氏と通じ、罪の意識に慄きながら半生を送る中で、心の成長を遂げる様が感慨深いものがあって、やっぱり、最初から最後まで同じ様な形象より、一人の女性が曲折を経て、成長したり変化したり、そういう方が、見てて面白い。内容も深かったし。)
平原綾香については、もしかしたら、メイク、鬘とかの工夫でもう少し舞台容姿を上げることは可能だったかも?と思う。
後は、フィギュアスケーターで、よく使ってもらえる人たちって、毎度同じような人に声がかかる傾向があるので、私は業界内事情に明るくないので、仕方ないかもだけど。
高橋大輔が予想外の好演だっただけに。(他の人とは、年季や思い入れが違うのかも?)
平原綾香どころか。荒川静香:弘徽殿女御⇒普通に大根だった。・鈴木明子:朧月夜⇒普通に大根だし。
という、商業演劇の舞台にフィギュアスケーターを入れて演技させたら、大根なのは、そりゃ、普通よね、っていう結果。だから、彼女たちよりも先に、平原綾香について、いまいち、みたいに書いたのは、ちょっとあれだけど。
ついでに、朧月夜は、官能的な流される美女、という先入観があるので、容姿的にもかなり違和感。設定が、源氏を好きだけど朱雀帝の后になる、っぽかったけど。(しかも、朱雀は、朧月夜より紫の上の方が好きみたい、っていう、原作無視傾向台本。)
原作は、朱雀も源氏も、朧月夜を好きで、っていうもので、三角関係の在り方が逆みたいだった。
衣装も、朧月夜役の、黄色に青の衣装が、どうかすると牛若丸?みたいで、何で、あの衣装、下をズボン調にしたのかな?って思った。(氷の上が寒いとか??)ちょっと、ボーイッシュテイストかな?って。
鈴木明子さんの形象は、普通に大和なでしこの、常識的でまともな女性だった。原作の朧月夜は、もっとスキャンダルを引き起こすような因子を持った、困った人系の、魅力的な女性なんじゃないかと思う。
とか、言い出すと切りない。
・最近何かと、TV番組で持ち上げられる荒川静香、そのうち選挙に出たりするかな?って思う位、忖度の人で、その意味でどうでもいいし、表現力が今も昔も無さすぎるのに呆れる(解説者で出てる時、若い選手の表現力を批評するのが片腹痛い。)。この人の良さを出す気なら、この人って、年齢高くても、足が細くて出せるので、足だす衣装でもいいかもって、この作品と関係ないけど、思った。素人なので、大根でも仕方ないが、皆で制作発表とかの時、コメントが長すぎるのは、短くできるはず。
最初の方のシーンの弘徽殿女御の衣装、裾が長いのは、よく出来た衣装だった。スケートが上手いので、長い裾の着物衣装でも遜色なく氷上を周回してた。他の人も、フィギュアスケーターは皆、当然ながら、衣装付けて氷上を滑るのは上手で綺麗だった。舞台人や歌手?系の人が、ほぼ上手くこなしてて不思議な舞台。
宝塚出身らしい、柚希礼音の演じた、海賊の長の男装女性は、海賊の衣装、ヘアメーク、もっと見栄えするものにすればよかったのに、と思ったし、海賊の話、いらないんじゃ?とも、最初は思った。けれど。
ただ、役者たちは場面良く盛り上げてたのと、
やっぱり、演出家の発想として、主役が舞台初挑戦(?)の人なら、舞台経験がしっかりある人を脇に配したかったのかな?と思うと、それはそれで、半分分らなくもないキャスティング。
歌も、平原さんの歌唱と、柚希さんの歌唱は、芸風が違うというのか、別の良さがある感じなのと、なんとなく柚希さんは宝塚調のヒエラルキーのある秩序感を思わせる演技、集団のトップとして主役とかやってる人独特のカリスマ性みたいのがあって、それが、高橋大輔を盛り立てるのに一役買っていた気がした。
そういう意味で、やはりキャリア、実績ある舞台関係者のスキルは感じたんだけど。
ただ、宝塚出身の人の独特のせりふ回しとか、堂にいったポージングとか、秩序感は完成されていて、それはそれでいいんだけど、一方で高橋大輔みたいな立場の人が、演技で、中途半端に宝塚系の舞台人の影響受けてほしくない、とも。宝塚独特のせりふ回しは、他の世界の人には、あまり真似てほしくない。くせがあるので。今の高橋大輔氏には、今の彼の良さがあるので、そういうものを大事にしていってほしいという、感想も持った。
平原綾香の歌唱は、歌唱で、この藤壺の全てを表現してる位の者はあるのだけど。歌のうまさは感じたし、何よりスケートしてうまく対処できてたけど。台本の問題も半分あるけど、わたし好みの藤壺の形象ではなかった、ということ。少数派感想と思って頂ければ。
主演の高橋大輔には、随分色んな要素をこなしてて、感心したけど。
で、あっと思ったのは、こんなにこの舞台、一生懸命やって,それって、全日本選手権の順位が低かったことと、関係あるのか?無いのか?って思ったけど。(関係ないかもだけど。)タラれば、もし、この舞台やってなければ、全日本での順位を、もう少し上にできた?なんて、可能性があったとしても、それでも、一番にはなれないわけだし、若手二人:佐藤・鍵山両選手のバトル見ちゃうと、ちょっと、こういう試合に、今の彼の出番ってどれほど、今後あるのか考えた場合、むしろ、この舞台やって、大正解だったんじゃないかなって思えた、八面六臂の大活躍でした。
何より、舞台でどう振る舞うべきなのか?というようなことについて、今迄の高橋大輔選手の演技に感じられなかったものを、自分は感じたし。試合で、ロックの曲でダンサブルに色々な振りで動いても、どう動いてもうまく決まるっていうのか、洗練があるし、氷上の舞台で、前より大きく見えるような気がした。全日本のspで、最初に顔の表情つけてたけど、顔芸演技じゃなくて、気持ちの入った演技だったし。
まだ若くて、感性が柔軟なうちに、いろんな経験した方がいいし、今度はアイスダンスやるので、今回の舞台経験も活きると思うし、また、何か別の仕事のチャンスに繋がるかもしれないし。
フィギュアスケーターと言う立場、アスリート系は、若い時期が過ぎると、跳んで回るようなことでは、いつか、陰りも終わりもある。
そんな中で、舞い降りたチャンスで、集客力のあるアイドル的存在というよりずっと上の事をやれたことは、地平を切り開く一つの切り口を作ったんではないのかな?と思って。
誰に限らずだけど、アスリートとして栄光を得た人間が、その次になにをやるのか、やるべきなのか?って問題について、ちょっといい感じで、一回、ここで結果を出せたんじゃないか、という意味では、好舞台でした。
(「源氏物語」としては、・・・・だったけど。)
今回の、宮本亜門演出、みたいなのは、フィギュアスケート界の人で、アイスショー企画するような人たちが、もっと起用してもいいんじゃないかって、素人考えには思った。