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想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

まくらが濡れた話

2009-04-17 17:00:41 | Weblog

ごうごうとオヤジのようないびきをかいて寝ているのである。
うさこの大事なカピバラコレクションを奪いとって枕にして
いやがるのである。
ごーせーなイビキで、知らない人が音だけ耳にしたらば、
あ~ら、うさこさんたらオヤジと一緒じゃないの? 独り身とか
いいながら、隅に置けないのねとか言われるかもしれないが
独り身と言ったおぼえはないよ、11歳のオヤジとふたりだ。

枕が変わると眠れない、と話には聞く。わたしはホテルなどに
泊まることも多々有るが、眠れないときがたまにある。
枕のせいではなく、気配のせいで。

気配というと、何か出る? とか言う人もいるが、そうではない。
出ればいいのである。部屋を変えてもらえる根拠になるから。
気配だけなので、他人にはわからない。
気配を共有できる人は稀なのである。

ある夜のこと、枕が濡れて寝れない、という夢を見た。
ホテルの大きな枕、あの白いカバーのついたふかふかのアレです。
だから濡れていない方へ、端へ端へと頭をずらしながら、なんとか
寝ようとしているのだが、こんどは首のあたりも濡れてきて
ついには足下まで水があがってくるのである。
溺れてしまうかもしれないと思い、とうとう起き上がった。

灯りをつけると、夢ではなく天井からぼたぼたぼたと水が降ってきている。
窓の外は大雨で、木製の雨戸が外れ窓も半開きであった。
雨漏りのホテルは、今、争乱中のタイ、バンコクから北へ北へと行った場所であった。

驚くのを通り越すとわたしは冷静になるクセがあり、フロントへ行くと、
なんとそこにいたのは黒い顔をしたひげ面の大男だった。
そのまま逃げ帰ろうかとためらったが、しょうがないので部屋へ来いというしかない。
ソーリー! と大仰な声をあげた男はバタバタを走り出て行き、
ホテルのオーナ―らしき人が現れたが、その人も大男ですっかり眠気は飛んでしまった。

うつらうつらとしていると、気配だけ濃厚に顕われる。
ぬぐいきれない気配もあって、それはどこまでもついてくるのである。
白昼もうろうとして、不覚にもバッタリと倒れてしまったこともある。

場数を踏んで用心深くなったので、今ではよく知らない場所で変な目にあったり
しないが、よく知っている場所で油断して先日などは不覚にも倒れてしまった。
相手もよく知っていたので。

わたしはそれを売りものにはしていないが、見えないものを観る。
聴こえないものを聴く。
方法を知りたがる下世話な人にはわからないことである。
しかし、文章を書くということも音楽を創り出すということも絵を描くと
いうこともみな同じで、そういうことに携わる人で見えないものが見えたり
聴こえたりしない人はいないのではなかろうか。
理性で否定し、単なる妄想、想像の産物と片付けようとするのは、そもそも
たいした事ではない。理性を保ったままにして、観るのであるから。
どだい肉眼で認識できることをすべてとする方がかたよりである。

わたしはカメの元で教えをこうて、元々のバッタリ倒れるだけの虚弱な体質から
観る、ということを修めてきた。受け身も鍛錬しだいで上達する。
中途半端に「私」がないと襲われるだけなのだが、「私を滅す」と魂が働いてくれる。

死んだように生きている人に比べれば、見えすぎた方がまだましである。
感じないということは、生きていることにはならないのである。
「生きているって言ってみろ」と友川かずきも歌っているではないか。



コメント
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