想風亭日記new

森暮らし25年、木々の精霊と野鳥の声に命をつないでもらう日々。黒ラブは永遠のわがアイドル。

母さんの畑

2009-01-31 02:20:46 | Weblog

 母がまだ今より少し元気だった頃、住まいの脇の空き地を耕して
 畑を作っていた。
 コンクリートの団地のどこに空き地があるのだろうと思っていたら
 母の部屋は1階で、その入口近くに土のある場所がちょっとだけあり、
 本当は共有場所なのだろうけど、それを母は「畑」にしたのだった。

 葉ものを植え、それが青青と育つと団地の他の住人のだれかれに配り、
 喜ばれていた。みそ汁の具にしたり浅漬けにしたりするのである。
 誰が作っているのか、毎日見ているのだから、もらう方も安心している。
 小さな小さな畑である。

 今はもうずいぶん弱って、外に出てもちょっと歩いてみるくらいだから
 この畑は荒れたようだ。母に言わせると、一年も放っておいたらただの
 土くれだからという有り様らしい。
 昨夏には姉たちが行き雑草を取ったりしたと聞いたが、もとより忙しい
 勤め人だから耕したりまではしない。
 自分で作った野菜を食べていた頃、今より母は勢いがあった。
 ときどき電話で文句を言い合ったりした。
 生きる勢いがあふれて、はみだして、互いを傷つけた。

 数年前に撮った上の写真、母に会いに帰った日のものだ。
 この日、母は曲がった腰が少し伸びていた。
 あさつきを摘んで、食べさせてくれた。
 
コメント
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