スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

がんと闘った科学者の記録

2015年11月13日 | 雑感
今年のノーベル物理学賞に輝いたのは梶田隆章氏。 受賞会見で二人の恩師の名前を挙げていた。

一人は既にノーベル賞を受賞している小柴氏。 もう一人が共にニュートリノに質量があることを発見し、
他界しなければ同時受賞間違いなしと言われた戸塚洋二氏だ。 残念ながら2008年 がんで他界。

立花 隆編 ・ 戸塚洋二著 『 がんと闘った科学者の記録 』 という本を読んでみた。
                                   ※ 立花 隆との対談も巻末にあり。

戸塚氏がこれを著した時点、既に末期がんと宣告されていて、大腸、リンパ、骨、肝臓、脳にまで転移。
日々 <死> と向き合っていたようです。その約1年7ヶ月の間、ブログにその <がん闘病記> を書き
残した記録をまとめ、あの知の巨人・立花 隆氏が監修したものだそうです。


          

病状の観察と死に対する素直な心境を綴っている記述となっているが、そこは根っからの科学者。

医者からもらったCT写真を画像化して腫瘍サイズの時間的変化を試みたり、抗がん剤の投与回数と
腫瘍マーカー値をグラフ化するなどと、そこまで自らの病気を分析する人もなかなかいないのでは。

この本は闘病記録のみならず、氏の人生感・世界観・宗教観・科学論 それに読書や映画、植物への
造詣に至るまで、いろんなことが網羅されている ≪正に命がけ渾身の一冊≫ でした。


私も4年前ですが、がんを宣告された経験はあるのですが、(経過観察は続けてはいる)
余命として宣告されたという経験は、幸いまだ無い。 


もし余命を宣告、あるいはその治療手法の限界を覚ったとしたら、心の内でどう対処するのであろうか。

戸塚氏は著書の中で こんな言葉を残していた。 

     自分の命が消滅した後でも 世界は何事もなく 進んでいく。

       自分が存在したことは この時間とともに進む世界で
                       何の痕跡も残さずに 消えていく。

          自分が消滅した後の世界を 垣間見ることは 絶対に出来ない。
 
                    
あたりまえといえばあたりまえ なのだが そこは宇宙を探究し続けてきた人 だからこその言葉なのか。