スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

戦争の教室

2014年10月27日 | 雑感
今年7月に出版された 『 戦争の教室 』という本を読んでみた。

戦前生れから20歳代まで、各世代80名による戦争への想いを綴った論考書である。
著者陣はフリーライター・新聞記者・写真家・建築家・画家・天文学者・ジャーナリスト・会社員等々。


     
表紙写真は東京・山王神社での七五三の風景。外国の軍服を模した格好での男の子たち。
                            (1929年・昭和4年撮影~毎日新聞社提供)

戦争は人間のモラルを消滅させるという。 戦争は人殺しを正当化するともいわれる。
『百人の死は悲劇だが 百万人の死は統計だ』 ナチスのユダヤ人虐殺を指揮したアイヒマンの言葉だそうです。

この本を読んでいると人類の平和など未来永劫来ないかもしれない、そんな不安もまた頭をよぎる。

戦争未亡人やその子供たちの疎開先での人間不信・疎外感の話や 空襲の恐ろしさ、収容所体験、
沖縄の悲劇の話などのほか、戦争を取材した人、戦争を知らずに育った人等の思い、靖国神社問題
などと幅広く網羅されていて、読み応えのある一冊でした。 


落語界でも浅草本法寺境内に<はなし塚>まで建て、53本も≪禁演落語≫として葬ったという話や

三島由紀夫に赤紙が届き、検査で結果不合格と云い渡され、父は倅の手を取り喜んで一目散に駈け出した
という実父の話(著書『倅・三島由紀夫』)等々興味をそそる話も紹介されていた。

≪戦争を取材する≫とのタイトルで、2年前シリアでの内戦取材中に45歳で凶弾に倒れた山本美香さんが問う。

 『人間ひとりひとりがちがっているからこそ、豊かな関係が築いていける。だれもがちがいを学び、
  相手の気持ちを考え、他人を理解しようと努める事で価値観のちがいを乗り越えることができる』


≪平和とは既得権者の春である≫、、フリーライター赤木智弘さんも問う。

 『すでにお金・地位などの持つものが、持ち続ける社会。失いそうになっても貧しい持たざるものより
  先に保障される社会が<平和な社会>であっていいのだろうか』


そして≪女子旅≫とのタイトルで、旅好きな会社員・根本綾香さんも続けて問う。

 『旅に出ると思いがけず「戦争」に触れる。平和ボケしている私たちが、厳しい現実に触れる瞬間
  でもある。かつてジョン・レノンが唄ったように、イメージする力は平和実現への第一歩だ。』


  世界に旅するようになってから毎年《世界報道写真展》に足を運ぶようになったという。

戦争の語り部がほとんどと言っていいほど少なくなった今、
                  戦争を学びイメージすることの大切さを感じる一言一言ですね。


   
  写真は鉄格子の中のタリバン捕虜(写真:山本美香)  右はカブール・ジャパンプレス事務所の山本さん