スノーマン見聞録

ジャンルも内容も気の向くまま~“素浪人”スノーマンの見聞録

ナチスの発明

2014年10月08日 | 雑感
フリーライター・武田知弘著 『 ナチスの発明 』という本を読んでみた。

言わずと知れたあのヒットラー率いるナチス・ドイツ。 
残虐行為のかたわら、発明・発見<人類への功績>という黙殺されてきた歴史への空白。

     

冒頭に著者はこう記している。
   「本書は、ナチスの残虐行為を擁護するものでも、ナチスやヒットラーを崇拝するものでもない。
    ただ、ナチスが何を作り、その背後にはどのような思いがあったのかを明らかにするものである」


ナチス誕生の種々な要因があるが、やはり第一次大戦終戦後に締結されたヴェルサイユ条約だ。

 ドイツ戦後の賠償などを定めたものであるが、その戦争責任をすべてドイツにあり、二度と立ち上がれない様に
 するために作られた条約で、ドイツにとって悲惨極まりないものであった。巨額な賠償金もしかり、英・仏
 などにより、海外の領土や植民地は全て没収されドイツの鉄鋼生産等も戦前の37%にまで落ち込んだという。

 当時世界恐慌も起き、街には失業者があふれ、餓死者も出るような状態だったといわれる。 
 ナチスが掲げた<ヴェルサイユ条約の破棄>・<再軍備>・<共産主義革命への警戒感>とういのは、どれも
 当時のドイツ国民が切望していた政党に合致していたのである。

そのナチス政権下での発明・発見とやらを列挙してみる。

 ● 給料からあらかじめ税金が引かれる<源泉徴収>や扶養家族がいればその分だけ税金がやすくなる
   <扶養控除>制度はいまや日本のサラリーマンにとっては当たり前だが、その起源はナチスだという。


   ナチス政権以前のドイツは、不景気のため税収が少なく、その確保の為に増税を行い景気がさらに悪化、
   税収は更に減るという悪循環にあった。 それを断ち切る為の大減税で労働者が恩恵をうけた。
   その一方では大企業に対しては大増税を行っている。

 ● 失業者対策としての高速道路建設。当時アメリカやイタリアでもあったが、ドイツでのこれほどまでの最先端の
   技術・大規模な高速道路は、現代の高速道路のモデルになっているという。

   
   これによりドイツの失業率は700万にも達していたのが、わずか数年でほとんどゼロにしてしまった。

 ● 労働者にも長期休暇を。 今ではヨーロッパでは1・2ヶ月のバカンスを楽しむのは当たり前だが、労働者の
   不満を解消させるため、「金持ち特権の打破」はナチスの方針の一つだったという。


 ● ナチスは少子化対策にも。勿論「ドイツ民族を増やす」為だが、1933年政権を取るとすぐ「結婚資金貸付法」
   を施行。お金がない人の結婚資金を無利子で貸し付けるという思い切った政策だ。

 
   子供を一人産む毎に返済金の四分の一が免除され、四人産めば全額免除された。
   その結果1932年には51万件だった結婚数が翌年には73万件に増加、出生数も20%も上がったという。

 ● 伝説の1936年・ベルリンオリンピック。聖火リレーはナチスが作ったといわれる。
   
   ナチスのユダヤ人迫害や人種差別に抗議してボイコットを考える国も多かったというが、ナチスは一時的に
   迫害政策をゆるめ「政治にスポーツは関係ない」と主張。結果的にボイコットは殆どされなかったという。

 ● 現代の医学に多大な貢献をしている電子顕微鏡は、ナチス時代のドイツ人学者エルンスト・ルスカによって開発
   されたもの。 (ノーベル賞は世紀の発明から半世紀も後のことであったという)


その他にも、ガン撲滅対策・財形貯蓄制度・合成着色料の禁止・自然農法の実験・ジェット機開発・ミサイルの発明
・宇宙開発、、、等々がある。 女性アナウンサーを世界で最初にとりいれたのもナチスであった。

善と悪。 そこには必ずや望んだ人々や支持した人々が多数いたのである。 

ナチス収容所で亡くなったあのアンネ・フランクがその日記でこう記していたという。

   『 戦争とは 一部の政治家や指導者が起こすものではなく 人々の心の中に
        それを望むものがあるはず。 人々が それに気づかなければ 戦争はなくならない 』