モーツアルト(1756―1791)やベートーベン(1770―1827)はどんな時代を生きたのか。
ただ鑑賞するだけでは心もとなくもある。
ヨーロッパでの宗教・戦争を背景にした差別、迫害、殺戮、、、ほんの少しでも知りたく手に取った本がある。
18世紀前後のヨーロッパを舞台とした、藤本ひとみ著『ハプスブルクの宝剣』上・下巻と『マダムの幻影』の二冊。
どちらも小説であるので歴史事実とは異なるが、小説・映画・音楽・芸術も同様、そのぼんやりとした時代の景色は垣間見ることができる。
『ハプスブルクの宝剣』上・下巻は、神聖ローマ皇帝家であったハプスブルク家の女帝・マリアテレジアとフランクフルトのユダヤ人居住地区に生まれ育った青年(この青年は架空の人物)とのオーストリア・ウイーンを舞台にした愛憎を描いた作品。
(この作品は宝塚星組ミュージカルで公演され評判を博したことでも知られる)
『マダムの幻影』は、上記マリアテレジアの11女・マリーアントワネットと嫁いだフランス皇帝ルイ16世と共に1793年断頭台に立たされたフランス革命後を舞台とした歴史小説。その遺児マリー・テレーズ、欧州各地を転々とした薄幸の娘が、今ではマダム・ロワイヤルとして伯父のルイ17世を操る。
読後、”どんな時代も人間は必死に生きてきたんだなあ”という単純明快な歴史事実と宗教及び権力欲望に潜む暗闇を思った。
当時フランクフルトユダヤ人居住地区には2000人程が住んでいたといわれる。
鍔広の帽子、マント、黒い服を義務付けられ、1年間に12組みの結婚しか許されず。
毎年30種以上の税金を課せられ、男性は二人以上では歩いてはならず。
男女とも歩道を歩くことも禁止され、車道をあるくしかなかった。
その規則を破ったユダヤ人が通行人たちに殴り殺されたといった話は稀ではなかったという。
13世紀~15世紀末には全ヨーロッパのほぼ全域からユダヤ人が追放されるか、ゲットーに閉じ込められるかし自由を奪われていたという。
スペインなどでは表面上カトリックを装って心のなかではユダヤ教といわれる「隠れユダヤ教」(アラーノ)もいたとのこと。
(1492年ユダヤ教追放令により、6万人ものユダヤ信者がスペインからポルトガルに流入。16世紀アジアへ流れインドへも離散していった)
その後啓蒙の時代を迎え若干自由を与えられた時代もあったが、常に宗教改革の波が吹き荒れ、光もみられたと同時にその闇も深まっていく。
1536年イエズス会・ザビエルがローマ教皇に設置要望した異端審問所による異教異端の排撃・粛清。陰惨な神聖裁判と火あぶりの刑も行われた歴史事実も見逃してはならないと思う。
後年聖人として列聖されているザビエルですが、ナチスによる恐怖の蛮行をも凌ぐといわれる異端審問所の犯罪行為について、もっと調査研究が行われてしかるべき、、、という人もいる。
魔女狩りは15世紀から18世紀までにかけてみられ、全ヨーロッパで最大4万人が処刑されたと考えられている。
ちなみにトランプのジョーカーの図柄はこの「魔女」からきているとのこと。『インド・ユダヤ人の光と闇』徳永・小岸共著より。
フランス革命が一つの衝撃となり、以後ユダヤ人解放の波は西から東へと進むが、東方の解放は100年位遅れた。
ナチスの悲劇はドイツユダヤ人ではなく、その殆どがその解放の遅れた東のポーランド・ソ連(現ロシア)地域のユダヤ人であったという。
死者の数・ナチスホロコーストでは600万人とも、第二次世界大戦では4000万人とも、、。
以上長々と宗教・権力・欲望のもつ闇の部分を書いてきたが、考えてみれば歴史って殺戮の歴史しか見えてこない。
この世でもっとも生き物を殺戮した動物は、トラでもライオンでもない。
先日他界した山崎豊子著『沈まぬ太陽』の一節を思い出した。
主人公がニューヨークのブロンクス動物園に行ったときのこと。
マウンテン・ゴリラとオランウータン舎の間に「鏡の間」と呼ばれる鉄格子をはめ込んだ檻(おり)がある。
そこには人間(自分)の上半身だけを映す鏡があり、その下の説明書きに、、、。
「THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD(世界で最も危険な動物)」と書かれていたという。
なぜか、今はその後「鏡の間」は取り外されているとのこと。
旭山動物園さん、、、是非その「鏡の間」を復活させてくださいな!
ただ鑑賞するだけでは心もとなくもある。
ヨーロッパでの宗教・戦争を背景にした差別、迫害、殺戮、、、ほんの少しでも知りたく手に取った本がある。
18世紀前後のヨーロッパを舞台とした、藤本ひとみ著『ハプスブルクの宝剣』上・下巻と『マダムの幻影』の二冊。
どちらも小説であるので歴史事実とは異なるが、小説・映画・音楽・芸術も同様、そのぼんやりとした時代の景色は垣間見ることができる。
『ハプスブルクの宝剣』上・下巻は、神聖ローマ皇帝家であったハプスブルク家の女帝・マリアテレジアとフランクフルトのユダヤ人居住地区に生まれ育った青年(この青年は架空の人物)とのオーストリア・ウイーンを舞台にした愛憎を描いた作品。
(この作品は宝塚星組ミュージカルで公演され評判を博したことでも知られる)
『マダムの幻影』は、上記マリアテレジアの11女・マリーアントワネットと嫁いだフランス皇帝ルイ16世と共に1793年断頭台に立たされたフランス革命後を舞台とした歴史小説。その遺児マリー・テレーズ、欧州各地を転々とした薄幸の娘が、今ではマダム・ロワイヤルとして伯父のルイ17世を操る。
読後、”どんな時代も人間は必死に生きてきたんだなあ”という単純明快な歴史事実と宗教及び権力欲望に潜む暗闇を思った。
当時フランクフルトユダヤ人居住地区には2000人程が住んでいたといわれる。
鍔広の帽子、マント、黒い服を義務付けられ、1年間に12組みの結婚しか許されず。
毎年30種以上の税金を課せられ、男性は二人以上では歩いてはならず。
男女とも歩道を歩くことも禁止され、車道をあるくしかなかった。
その規則を破ったユダヤ人が通行人たちに殴り殺されたといった話は稀ではなかったという。
13世紀~15世紀末には全ヨーロッパのほぼ全域からユダヤ人が追放されるか、ゲットーに閉じ込められるかし自由を奪われていたという。
スペインなどでは表面上カトリックを装って心のなかではユダヤ教といわれる「隠れユダヤ教」(アラーノ)もいたとのこと。
(1492年ユダヤ教追放令により、6万人ものユダヤ信者がスペインからポルトガルに流入。16世紀アジアへ流れインドへも離散していった)
その後啓蒙の時代を迎え若干自由を与えられた時代もあったが、常に宗教改革の波が吹き荒れ、光もみられたと同時にその闇も深まっていく。
1536年イエズス会・ザビエルがローマ教皇に設置要望した異端審問所による異教異端の排撃・粛清。陰惨な神聖裁判と火あぶりの刑も行われた歴史事実も見逃してはならないと思う。
後年聖人として列聖されているザビエルですが、ナチスによる恐怖の蛮行をも凌ぐといわれる異端審問所の犯罪行為について、もっと調査研究が行われてしかるべき、、、という人もいる。
魔女狩りは15世紀から18世紀までにかけてみられ、全ヨーロッパで最大4万人が処刑されたと考えられている。
ちなみにトランプのジョーカーの図柄はこの「魔女」からきているとのこと。『インド・ユダヤ人の光と闇』徳永・小岸共著より。
フランス革命が一つの衝撃となり、以後ユダヤ人解放の波は西から東へと進むが、東方の解放は100年位遅れた。
ナチスの悲劇はドイツユダヤ人ではなく、その殆どがその解放の遅れた東のポーランド・ソ連(現ロシア)地域のユダヤ人であったという。
死者の数・ナチスホロコーストでは600万人とも、第二次世界大戦では4000万人とも、、。
以上長々と宗教・権力・欲望のもつ闇の部分を書いてきたが、考えてみれば歴史って殺戮の歴史しか見えてこない。
この世でもっとも生き物を殺戮した動物は、トラでもライオンでもない。
先日他界した山崎豊子著『沈まぬ太陽』の一節を思い出した。
主人公がニューヨークのブロンクス動物園に行ったときのこと。
マウンテン・ゴリラとオランウータン舎の間に「鏡の間」と呼ばれる鉄格子をはめ込んだ檻(おり)がある。
そこには人間(自分)の上半身だけを映す鏡があり、その下の説明書きに、、、。
「THE MOST DANGEROUS ANIMAL IN THE WORLD(世界で最も危険な動物)」と書かれていたという。
なぜか、今はその後「鏡の間」は取り外されているとのこと。
旭山動物園さん、、、是非その「鏡の間」を復活させてくださいな!