サラステ指揮、ロンドンフィルハーモニック管弦楽団、ルプーのピアノで、ベートーベンのPf協奏曲第5番『皇帝』、ブラームスSym第1番を聴いた。
ルプーはCDでは聴いたことがあったが、生は初めて。叙情的な曲が得意な彼で『皇帝』というのはどうかとも思ったが、出かけてみた。
結果は-皇帝、といっても小粒ちゃんもいるよね、という演奏だった。ロイヤルフェスティバルホールは、普通ピアノの音が綺麗に聴こえるホールと思っていたのだが、pはともかくfが弱い、特に低音のfに全く迫力が感じられない。弦の低音はとても良く響いていたのに、ピアノの低音が響かない-と不思議に思われた。
テンポ設定もかなり遅い。特に第3楽章。第2楽章のAdagioから、第3楽章のAllegroへと、テンポ変化を期待して身構えていたのに、全然速くならない。ルプーは指揮者に左手で指揮をして、テンポ設定も決めているようだった。このゆっくりとした速度でこのテーマを歯切れ良く演奏するのは、却って大変そう。オーケストラの皆様、お疲れ様でした。
ルプーはピアノ用の椅子を使わずオケの団員が使用するのと同じスチールの椅子を用い、まるで小学生が学習机に向かって座るかのようにきちんと座った。これでは低音や高音が弾き難いのでは、と心配になった。結局、特に左右の動きには不自由していないように見えたが、フォルテが十分に出ない理由が、この座り方で腕の動きが不自由になることが理由ではないか、と思われた。ゆったりと座れば、自然に腕全体を使って弾くことで無理なくfが出るようにも思うのだが。
結論:ルプーには静かなピアノ曲を弾いてもらいたい。
後半はブラームスの交響曲第1番。これは、ブラームス様に乾杯!であった。メロディーの美しいこと。第2楽章のヴァイオリンソロは曲想をもう少し工夫できたらよかったが、音はとても美しかった。ニコロ・ベルゴンツィの楽器を使っているのだそうだ。また、オーボエ、クラリネットも良かった。フルートは、大きな音を出そうとして息が管を通る音が聞こえるのが気になった。そんなに無理に大きな音を出そうとするより、もう少し音質に拘ったらよいのに-指揮者はそういうことを指摘できないのか知らん?
サラステは見た目なかなか渋いおじさんでよいのだが、指揮はテンポが摑み難いように思われた。また、曲の最初に全く「間」をとらないので、拍手の残響があるうちに演奏が始まってしまい、聞き手も十分な準備ができず、なんとなく騒がしい中で音楽が始まる印象があった。さらに今日は会場の照明が少し明るかったことも、ざわめきがすぐに引かない理由だったかもしれない。こんなちょっとしたことも、気になる今日この頃。