カヴァコス(Vn)、タメスティ(Va)、カプソン(Vc)、ルガンスキー(Pf)による演奏会。
3曲目が目当てのチャイコフスキー「偉大な芸術家の想い出に」。ピアノの難曲。まるでピアノコンチェルトのように難しそう。ヴァイオリンやチェロが比較的単純な動きをするのに、ピアノは一人で必死に弾かなくてはならない。気の毒なことに、会場が悪いのか(多分これが一番ありそう-まるで多目的ホールのようなクイーンエリザベスホール)、ピアノが繊細なのか(Steinway-ロンドンなので、まず間違いなくハンブルク製)、ヴァイオリン、チェロがffになると埋没してしまう。
カヴァコスのヴァイオリンは、ところどころ走ったり、ffになると音が濁ったり金属音が混じったり。先生に言われない?ffでも音が汚くなってはいけない!!って?演奏するのに一杯一杯で、三重奏をしている気配がない。さらに、低音に深みがないのはガダニーニの限界か。
一方、今日一番楽しめたのはチェロ。出だしから「音が大きすぎる!」と思うくらい音が出ていたゴーティエ。思い起こせばSalle Pleyelのような大ホールの2階席でも音が明瞭に聴こえていた。この楽器、相当音が出るのだ。。。彼は演奏中も楽しそう。第七変奏曲とか、私もついつい楽しくなってしまうコーダの42小節目からとか、微笑みながら演奏。ま、たしかにこの曲、チェロが一番技術的に難しくはなさそうだけれど、それにしてもこういう風に余裕をもって演奏して欲しい。「新」百万ドルトリオをヴァイオリンは勿論ジョシュ、ピアノはキーシンにしようと思っているのだけれど、チェロにゴーティエを任命するのはまだちょっと早いかしら?
演奏途中、彼がチェロのボディの上でビブラートをかけるような仕草をした。ビブラート、なんだろうな?と思って、楽屋へ行き尋ねてみると、果たしてビブラートであった。でも、ヴァイオリン族のボディは共鳴体なのに、そこに指を当ててビブラートなんて、音が減衰するんじゃない?と思って聞いたら、「絶対ビブラートが掛かる、I promise」と言われてしまった。あー、今から思えば弾かせてもらえばよかった(ってチェロは弾いたことないけれど)。
楽屋へ伺うと開口一番、「あなたの顔、見覚えがある」。すごい、この間Parisで会っただけなのに、何という記憶力。せめてその記憶力だけでも譲って欲しい。チェロの才能まで欲しい、なんて欲張りは言わないから。